2008年02月04日(月)

ブラームス ピアノコンチェルト第1番

テーマ:音楽の話

 ほんとうに大事にしているものについて語ったり、書こうとすると、いつも躊躇してしまいます。

「うまく書けるだろうか」とか、「まだまだ準備不足でダメだ」とかいう思いが強くなり、結局書けずじまいに終わることが多いです。


 ベートーヴェンやブラームスはそんな躊躇してしまう最たるものです。

 …しかし、今日はあえてブラームスについて書いてみます。

 なぜなら、たくさんの素晴らしい音楽のなかでも、ブラームスのピアノ協奏曲1番は、わたしにとって特別な意味を持っているからです。



 かつて、スキー人生の絶頂期に、わたしは大けがをし、その後遺症から大病を患ったことがあります。

 致命的ともいえるヒザの怪我で、もはやスキーができないと信じざるを得ないほどでした。結果的に、この怪我以降、つねにヒザが曲がりきらないというハンディキャップを背負うことになりました。


 当時、まだめずらしかったヒザの手術を受け、失意と絶望に打ちのめされ、ベッドに寝ていた日々。

 そんな時、ラジオから流れる音楽に心をつかまれたのです。

 情熱的でありながらも、苦しみに満ちた第一楽章。

 祈りのような第2楽章。

 第2楽章がはじまって間もなく、涙が止まらなくなってしまったことを、今もよく覚えています。あの時のことを想い出すだけで、胸が締め付けられるような…。


 ブラームスのピアノコンチェルト第1番。

 高校時代のわたしはブラームスが大嫌いだったので、ブラームスに目覚めた瞬間でもありました。


 …もしかしたら、ブラームスを理解するためには、大きな痛みを知る必要があるのかもしれませんね…。


 それ以来、たくさんのCDを聴いてきました。

 怪我をした当時、最初に買ったのはラドゥー・ルプーだったでしょうか?

 ルドルフ・ゼルキンの演奏も相前後して買った記憶があります。一時期は手に入るすべてのCDを揃えようとしたこともあります。


  Piano


 このピアノ協奏曲には、大きな二つの要素が入り交じっています。

 もしかしたら、それらの要素は「対立して存在している」と表現した方がいいかもしれません。

 一つの要素は青春の無尽蔵とも思えるエネルギーの奔流です。制御不能の燃えたぎった情熱。

 そして、もう一つは深く澄んだ叙情(リリシズム)です。

 パッションとリリシズムの対立が、曲のあらゆるところで巻き起こります。

 そして、とうぜんのように多くの演奏は、どちらかに片寄ります。


 わたしの大好きな演奏の一つ、ルービンシュタイン(ピアノ)とフリッツ・ライナー(指揮)はまさに「火」です。凄まじい緊張感と、情熱の嵐に襲われる演奏。鍵盤に火花が飛びます。

 熱い演奏という点で、この右に出るものにはまだ巡り会っていません。 


ブラームス:ピアノ協奏曲第1番/ルービンシュタイン(アルトゥール)
¥1,995 Amazon.co.jp



 反対に叙情的(リリカル)な演奏の極めつけはルプーでしょうか。

 あくまでも繊細に、ブラームスの心の震えをみごとに聴かせてくれます。

 近頃発売されたクリスティアン・ツィンマーマンとラトルの演奏も、総合的に優れているだけでなく、リリカルな表現に傑出したところが多いように感じました。リリカルと言えば、グレン・グールドの演奏も独特の叙情を感じさせてくれます。


 情熱と叙情の両者を対等に歌おうとした演奏に、新旧のブレンデル盤やバレンボイム&メータなどがあげられるでしょう。

 ポリーニの演奏はわたしにはどうもピンときません。彼のベートーヴェンとブラームスは、どういう訳か、わたしの心に届かないのです。

 現時点で自分がいちばん好んで聴く演奏はブレンデルの旧盤です。指揮はイッセルシュテット、オーケストラはアムステルダム・コンセルトヘボウ。

 オピッツとコリン・ディビスの演奏も、素晴らしいことを書き忘れてはいけません。オピッツというピアニストはどこか、わたしの心に訴えるところが多いです。


ブラームス:ピアノ協奏曲第1番/ツィマーマン(クリスティアン)

¥2,200 Amazon.co.jp



 叙情と熱情の対立という矛盾を、最初から抱えた曲。

 まさに若者という存在の迷いを訴えてくれます。

 この曲に感動できる間は、自分にも、まだまだ青年の気持ちがあると信じられます。


 これから、どんな演奏家たちがこの曲を録音してくれるのでしょう。

 新しいピアニストたちの演奏を、これから聴いていくのが楽しみです。

 そして、ぜひともゲルバー(Bruno-Leonard Gelber) には、この曲を再録音してもらいたいものです。素晴らしいオーケストラと指揮者で。きっといつかは録音してくれると考えますが…。



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コメント

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4 ■お邪魔しますm(_ _)m

寒くなると、ブラームスが心にしみますね。交響曲の1番を中学生の時に聴いた時には、1楽章が怖くて途中で止めた記憶があります。一方、ピアコンの一番は、溢れんばかりの(若さゆえの)情熱と、ブラームスらしいリリシズムが見事に融合していて、初めて聴いた時から虜になりました。実演で聴くと、オケとピアノのバランスが悪く、なかなか良い演奏に当たらないのが残念ですが、それでも自分の頭の中で理想の音楽が鳴っています。

3 ■初めまして

私もルービンシュタイン/ライナー/シカゴを聴いています。
ルービンシュタインのブラームス ピアノ曲全集などがあれば良かったと思います。

2 ■切ないですねー。

ブラームスピアノ協奏曲第1番・・・よくも情熱やせつなさ、そして狂おしさをここまで表現できるものだ、ブラームスよ。第一楽章最終部分、どん底から這い上がる人間の苦悩や欲望までが表現されているように聞こえる。多くのCDを聴きました。館野泉さんをおすすめします。ちなみに私はアルペン競技をやっていました。46歳会社員。

1 ■トナカイ 様

こんばんは。
ブラームスの第1番。素晴らしい曲ですね。私はゼルキン/セルの1953年頃のLPで聴いてをります。激情的部分と祈りにも似た部分の対比がよいと感じますが・・・良いのですが、いまひとつという感じもございます。バックハウス/ボールトの1932年演奏のものなど、SP期から絶賛を博したもの、ということらしいのですが、私は聴いたことがございません。復刻盤を探して聴かなければ、と思ってをります。

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