第二弾です!

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MAGIC REVOLT 1 ―始まり― 2/10

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   <(∂∨∂#)
 ガラガラガラと、扉を開ける。
「朝は寂しいねぇ…」
 教室全体を見渡す。早朝なので誰もいない。
 仕方なく自分の座席に座り、授業の用意をする。
 ここは「市立幸福高校」。 家から1番近く、俺の通う高校だ。時刻は7時10分。俺が起きてから、まだ40分しか経っていない。
 感情に流されるまま、何も考えずに来てしまったのでとてつもなく暇だ。
「あ~、暇だ。やることがないって案外辛いな…」
 家にいるとやることが沢山あるので辛いが、(料理、洗濯、片付け、宿題etc…)逆にやることがないというのも辛い。正直、自分勝手だと思う。
「しかし、学校もなんでこんな朝早くから校門開けるんだよ…」
 7時に校門開けるとか早過ぎるだろ…。
「それは学校側の都合じゃない?」
 ガラガラガラと、音をたてながら扉が開いた。
「おはよう、勇助」
「ああ、おはよう」
 こいつの名前は島影勇助。小学校からの付き合いで、俺の親友だ。
「ところで恭平、今朝のニュース見たか?」
「星座占い?」
「俺は「今日があなたにとって特別な日になるでしょう」だったぜ」
「あ~、俺なんて「じゃなくて」
 勇助が、俺の額にチョッブをいれてくる。軽いつっこみだ。
「今朝、商店街で起きたやつだよ!」
「あ~」
「お前…紀伊さん達心配じゃないの?」
 いや…と、首を振る。親友のこいつは、俺と紀伊さんの馴れ初めの話を知っているが、実際に会ったことはない。だから、あの「どんな困難でも跳ね退けてしまう温かさ」を知らない。
「あの人達なら…たぶん大丈夫」
「すごい自信だな」
 頷き、立ち上がる。退屈なので外に出ようと思ったからだ。 朝のホームルームが8時20分からだから、それまでに戻ってくれば大丈夫だ。時刻は7時15分。まだ1時間以上もある。よし、サッカーをしよう。
「暇だな…」
「ああ…」
 俺は親友をサッカーに誘うべく、質問を投げ掛けた。
「勇助って…好きなスポーツ何?」
「サッカー」
 ああ、「知ってる」よ!!小学生の頃からの付き合いだから、そんなの知ってて当然だ!
 心の中でほくそ笑む。
 流れは…完璧だ。後は、こいつをサッカーに誘うだけ。
 俺は至って自然に言う。不自然さなどかけらもない。
「じゃあ…サッカーでもしようか?」
「いや…商店街の方に行ってみないか?」
 おおぅ…。あの流れは普通、サッカーじゃない?
「………」
 沈黙のさなか、気付いた。
 そういやこいつ…「KY(空気読めない)」だったッ!!
 しかし、俺はなおも強く誘う!
「やろうぜぇ~」
「嫌だ」
「サッカー、やろうぜ!」
「どこのアニメのゴールキーパーだよそれ」
「俺の「魔神〇ハンド」を見せてやるよ」
「さてと…」
 立ち上がる勇助。
 諦めるもんか!
 頭の中で、リング内に倒れる自分を想像する。勇助の右ストレートに沈められた俺は、必死に起き上がろうとする。
「立って、立つのよ!」
 ふと横を見遣ると、そこには首からタオルを下げ、片手にメガホンを持った、俺のコーチらしき留美がいた。
「ぐっ…だ、駄目か…」
 起き上がろうとするも、腕が震えて力が入らない。
 横にいるコーチ…留美を、ちらっと見る。
[む、無念…]
「勝たなきゃ今夜のご飯抜きよ!!!」
 負けられねぇ!
「セブン、エイッ、ナァイ-」
「うおぉぉおぉお!!!」
 勢いよく立ち上がる。
 リングに穴が空いたが、無視。俺の周りが変なオーラで覆われるが、無視。上半身の服だけ破けるが、無視。突如、体が鋼鉄のような筋肉で固められるが、無視。髪が逆立って金色になってるけど、無視。気弾が出せるような気がするけど、無視。
「ほぁたー!」
 気の抜けたパンチが、繰り出される。
 しかし、それは掛け声とは裏腹に、勇助をリングの底に深く、沈めた。いや、めりこませた。
「ウィナー、キョウヘー!」
 審判が俺の手を取り、高々と上げた。
 そうだ、人間、諦めなければ何でも出来るんだ!
「勇助!サッカー「嫌だ」
 言い切ることすらままならなかった。
「ほら、行くぞ」
「はい…」
 こうして、俺達は商店街に向かうことになった。始めから俺に選択肢なんてなかったんだ。
   <(∂∨∂#)
 荷物を教室に残し、財布等の貴重品は持ったまま、校舎を後にした。
 無意味なほどに登校時間が早かったため、勇助以外の生徒とは会うこともなく、俺達は「幸福商店街」に着いた。時刻は7時30分。まだ時間には余裕がある。
「ゆ、勇助っ!あれ、鑑識!」
「落ち着けよ…」
 落ち着いてなんかいられるかよ!だって…鑑識だぞ。事件の臭いがぷんぷんするじゃん。やっぱり、事件は現場で起きてるんだな。(当たり前か…)
「鑑識ごときで取り乱すなよな」
「まるで、鑑識を見慣れてるような口調ですね」
「鑑識を見るために来たわけじゃない」
 俺のからかいは無視された。
「それに、まだ事件が起きてから2時間30分しか経ってないんだぜ。現場に鑑識がいて当然だろう」
 いや、知らないから。一般人は絶対知らないから。っていうかそういうものなの?初耳だよ。
「おい恭平、あれ」
「ん?」
 勇助が指差した場所には、2体の石像。それは、今朝のニュースに出てきていた事件に巻き込まれた一般人が、石像に変えられたものだった。そして、それらは俺がよく知っている顔で―
「紀伊さん!?」
 信じられなかった。いや、信じたくなかった。現実を直視できなかった。
「恭平は、これらの事件が「魔法」によるものだって言われたら信じられるか?」
「「魔法」…?信じられるわけないだろ。なんらかの種があるんだよ。こんなの…」
 苛立ち、俯く。「魔法」、か…。確かに、こんな不可思議な事件にはそういう表現が相応しいのかもしれない。だが、なんらかの種があるはずだ。
「種が…あればいいんだがな」
「勇助?」
 勇助が一歩進み、俺を振り返った。
「結局、最後まで思い出してくれなかったな…」
「え?」
「来たぞ」
 勇助の言葉と同時に、ドンと、大きな地響きが辺りを襲った。
「きゃああぁ」
「うわああぁ」
 人々が逃げ惑う。
 なんだなんだと、シャッターを閉じていた商店街の人達も、状況を一瞥すると、先に逃げた人達の後を追うように走っていった。
 残った鑑識の人達も必死に拳銃で対抗するが、震源の正体には全く歯がたたない様子だった。
 その震源の正体というのが…
「たった一人の人間…!?」
 成人の男性と見られる、たった一人の人間だった。身長はやや高いが、体重は至って普通そうに見える。それなのになんなんだ、あの地響きは?
 その男は深いフードのついた黒のロングコートに身を包んでていた。顔は良い方の部類に入るだろう。
「ギャーギャーうるせぇな…」
 男が頭をかき、こちらへ向かってゆっくりと歩いてきた。
 俺は足が震えて、その場から動けない。
 鑑識の人達は俺とは違い、全速力で逃げ出した。
 その場に、俺と勇助だけが取り残される。
 男が、勇助を正面から見据えて言った。
「よぅ、王子様。また会ったな」
 勇助が男に向かって、恐れることなく近づいていく。馬鹿か!死んじまうぞ!?
ん…?王子様?
「今回は逃がさねぇ…」
 勇助が鬼気迫る表情で、一歩ずつ近づいていく。
 そして、とうとう二人の距離が数メートルになった時、
「行くぞ」
 勇助が地を蹴った。
「クム ラピディフルミニス」
 妙な言葉を口づさみ、男に向かって突進していく。途端、勇助の動きが加速した。残像と思われるものだけが、その場に残った。
 っていうか…知らなかったぞ!?勇助がこんな芸当ができるだなんて。しかも王子様ってなんだよ?
 色んな疑問が俺の脳内を渦巻く。しかし、目の前の二人は、そんな俺に構うことなく戦闘を続ける。
「エゴ デ カエレオ!」
 突如として男の後ろに現れた勇助が、男の背に手を突き付けて叫んだ。その手から、荒れ狂う雷が放たれた。
「来たね~、王子様の十八番」
 男は瞬時に距離を取り、攻撃を向かい撃つのか、手の平を雷に向けた。
「カセインドゥラタ」
 言葉と同時に、雷が先端の部分から石化していく。そしてそれが、勇助の手に届いたと思われた瞬間―
「効くかッ―」
 片手を石化していく雷に添え、強烈な光を放った。
「う~ん、やっぱり無理か。流石は王家の血筋を引いていることだけはある」
 石化していた雷が、パリィィィンと、音をたてて崩れ落ちる。
 …と、見とれてる場合じゃないな。
 何が起きていて、何で勇助があんな力を持っているのかは知らないが、俺は今できることをしなきゃ。
 気付くと足の震えは止まっていて、恐怖心の代わりに、何かをしなければならないという、使命感が心を先行していた。紀伊さん達の石像に駆け寄る。こんな所にいたら戦闘に巻き込まれる。背後からは、未だに派手な音が聞こえてくる。
「よいしょっと…」
 紀伊さん達の石像を商店街の外へと運び出す。
 それにしても…何故男はあんなことをするのだろうか?そして、男や勇助が使っていた力は一体…?
 ふと、閃いた。まさかとは思うが、あれが勇助の言っていた「魔法」とやらではないだろうか。…まさか…な。有り得ないだろ。この現実に、そんなファンタジーじみたものが存在するなど。きっとなんらかの種があったり、俺へのどっきりなんだろう。
 紀井さん達の石像を置く。もう十分に勇助達から離れただろう。
 息をつく。
 一仕事終え、息をついたのではなく、溜め息をついたのだ。 分かっていた。あれがどっきりなんかじゃないこと。種などないことを。俺は現実逃避していた、自分の思考に溜め息をついたのだ。
 逃げる思考を止め、推測する。男の正体を。
 まず、魔法が実在するということを仮定して考えてみる。男は先程、勇助に向かって「石化」の魔法を使っていた。そして、服装が黒のフードとロングコート。身長も成人の男性の平均よりは高い。このことから、俺は、男は今朝のニュースの犯人「M」だと推測する。今まで気付けなかったのは、その圧倒的なまでの力と、一度犯行を行った現場には戻らないだろうという安心感があったからだ。
 だとしたら、あの男が紀井さん達を石化させたことになる。
 心底、怒りが湧いてくる。だが、同時に虚しさも感じた。紀井さん達を石化させたことへの怒りと、それに対して何もできない虚しさ。その両方が混ざり合い、複雑な感情を形成していく。
 思わずいても立ってもいられなくなり、紀井さん達の石像をその場に残し、勇助達の方へと駆け出した。
   <(∂∨∂#)
 商店街の中心部では、未だに勇助と男の戦闘が続いていた。
 二人の繰り広げる戦闘の被害は尋常じゃなかった。建物は崩壊、電柱は折れ、アスファルトにはひびが入っている。以前テレビ越しに見た、地震の起きた被災地を見ている気持ちになる。
 二人は一進一退を繰り返し、一向に勝負がつかない様子だった。
 もし…。もしもだ…。俺にも魔法が使えたなら、この状況を打破することはできるのだろうか?勇助と協力し、形勢を覆すことはできるのだろうか?
 力のない自分が情けない。劣等感が心を満たす。今まで対等だと思っていた親友が、手の届かないところに行ってしまった。そんな気持ち。
 拳をにぎりしめる。
「ちくしょう…」
 親友があれだけがんばっているのに、俺はどうすることもできない。
「俺は…何もできないのか…」
「できますよ」
「―なっ!?」
 突然、俺の背後から聞き覚えのない声が響いた。
 驚愕し、振り向く。
 先程まで誰もいなかった場所には、今、中折れ帽子をかぶり、スーツを纏っている男が立っていた。いや、男と言うにはまだ若い。青年…と、いったところだろうか。
 自然と身構える。
「まあ、そう警戒しないでください」
 青年が両手を虚空に上げた。敵意はない…という意味なのだろう。
「私なら、あなたの願いを叶えられます。」
「…え?」
 突拍子もない発言に驚愕し、口をぱくつかせる。この青年が…俺の願いを叶える?まさか、願いは三つまでとか、神の力を越える願いは叶えられないとか…アレ?7つの玉を集めると出て来るアレですか?
 とにかく、俺の願いを叶えるってことは…魔法を使えるようにしてください。の一択に尽きる。
「要は、あなたに魔法の力を授ければ良いのでしょう?」
「あ、ああ…」
「それなら簡単ですよ」
 簡単…だと?この青年、一体何者なんだ?だが、力を得られるのならなりふり構ってなどいられない。怪しいが、とことん付き合ってやろうじゃないか。まぁ、願いを叶えてもらうのはこちら側だけどね。
 しかし、この決意も次の言葉に揺らぐことになる。
「元々、あなたには魔法の素質があるのですよ。私はそれを引き出してあげればいいだけです」
「…え?」
 まさか…なんかやばい感じの薬とか飲まされちゃうの、俺?飲んだら幻惑みたりとか、異常なほど筋肉が膨らむとか…。嫌だよ。俺それ嫌だよ。断固拒否する。それだけは、全力で阻止する。
「記憶をなくされていたとは耳にしていましたが、まさかこれほどとは…」
 青年がうずくまり、頭をかかえた。青年の美形さのあまり、ひとつひとつの行動が様になってるのが釈に触る。
「では、自己紹介をさせていただきます」
 そして青年は立ち上がり、手を胸にあて、手足を棒のようにまっすぐ伸ばし、まるで騎士が敬礼するような仕草をして言った。
「私の名は、ウレア・アムク。魔世界から参りました。ファセルス・グランド王子、あなた様の執事でございます」
「………は?」
 俺はただ、口をあんぐりと開けるしかなかった。
 俺はこの時、確かに、日常が崩れ去る音を聞いた。

MAGIC REVOLT 1 ―始まり― 2/10
        FIN



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以前書いていたものです。

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MAGIC REVOLT 1 始まり― 110


俺、風野恭平は、環境さえ除けばいたって普通な人間だ。特にこれというものもなく、勉強も人並にしかできない。
 つまり、俺はいたって平凡な人間ということだ。
 毎日同じことを繰り返し、ただ、退屈な日々を送るのみ。
 朝早く起き、朝食を食べ、学校に登校する。そして課程を終え、帰路につく。
 そんな生活になんの意味がある?
 俺はもう、この退屈な生活に嫌気がさしていた。
 日常に飽きていた。
だから、どこか心の片隅で願っていたのかもしれない。
 非日常を。
 しかし、あんなことになるとは思ってもいなかった。
魔法なんて、空想の物語にしかないものだと思っていた。
だが、信じざるをえなかった。それを、目の前で見せつけられたのだから。
 俺の日常が崩れ、非日常が始まった日。
 あれは、昨日のことだった。
   ――昨日――
「兄さん、朝だよー」
「う、ううん
 俺は、妹の風野留美の声によって目覚めた。
 時刻は6時30分。いつも俺が起きる(起こされる)時間ちょうどだ。
 俺はベッドから這い出て、部屋のカーテンを開け、窓も開けた。
「朝だな
 朝の日差しを浴びて、改めて朝だということを実感する。
俺は部屋から出て、階段を下り、キッチンへと向かった。
「今日の朝ご飯は兄さんの番だよ」
 キッチンの向かい側にあるテーブルに座る留美が、頬杖をついて言った。
「はいはい」
「「はい」は一回で結構」
 単純にこの会話を聞いていると、どうにも俺が妹に尻を敷かれる兄に見えるが、そうではない。
 我が家の家事は当番制なのだ。
 ちなみに、今日は朝、昼、夜の飯を俺が作り、留美が洗濯など、他の家事をやることになっている。
 まあ、我が家とは言っても、風野家は、今や俺達しかいない。
 両親は、十年前、俺が六歳の頃に病でなくなったからだ。当時四歳の留美はこのことを全く覚えていない。だが、知らないから幸せということはない。むしろ逆だ。物心がついた時にはもうすでに両親がいないのだ。これは、両親を覚えている俺よりも辛いと思う。それ以降、俺は誰よりも留美のことを思いやって生きてきた。留美が泣いたら必死であやし、楽しい時には一緒に笑う。それが、俺が唯一留美にしてやれることだった。
 昨日の晩のうちに仕込んであったものをレンジでチンして、二つの弁当箱に詰める。そして、冷蔵庫から卵2つと牛乳を取り出して、ガスコンロに火を付ける。さらに、フライパンをガスコンロの上に置いて卵を割り、中身を焼く。その間に、コップを2つ取り出し牛乳を注ぐ。卵が焼ける音を聞きながら、冷蔵庫から、新たにレタスとトマトを取り出す。同時に、まな板と包丁を、キッチンに取り付けられた引き出しから出す。卵の焼き具合を確認しながら、レタスとトマトを均等に切り分けていく。それが終わると同時に、皿を2つ、近くの食器棚から取り出す。そして、切り分けたレタスとトマトを等しく2つの皿に分けて、盛りつけていく。ここでようやく卵が焼き終わり、さいばし(長い箸)を使って焼けた卵もとい、目玉焼きを1つずつ皿にのせていく。これで、朝の定番、サラダと目玉焼きの完成だ。食パンは籠から、バターは冷蔵庫から取り出して、テーブルの上に放った。
「パンはそこにあるから自分で焼けよ」
 俺はそういうなり、テーブルの上に放った食パンを一つつまみ、トースターに入れた。バターはつけない。
「サービスわるぅ~」
「当店はセルフサービスでございます」
 留美の小言を軽くあしらい、食パンが焼けるのを待つ。その間に、留美も食パンを取り、稼動中にも関わらず、トースターの中に入れた。ちなみに、彼女はバターをつけた。
 やがて、「チーン」と、音が鳴り、香ばしい香りが鼻孔をくすぐると同時に、俺と留美の二つの食パンをトースターから取り出す。そして、それを目玉焼きとサラダと同じ皿に移す。
「お、何だかんだ言ってもやってくれるんだぁ~」
俺は、返事の代わりに、嘆息した。
やっぱり、俺って甘いのかな
そんな思考が脳裏をかすめるが、頭をぶんぶんと振って、「そんなことはない」と否定する。
「兄さんどうしたの?」と、いう留美の言葉で我に返る。
「い、いや少し睡眠不足だったかな。そうだ、テレビでも見ようか」
適当にはぐらかす。
 そして、テーブルの上に置いてあったリモコンを手繰り寄せ、電源のボタンを押さずに立ち上がり、テレビの近くまで行って、片膝をつく。そして、「抜いてあったテレビのプラグをコンセントに差し込んだ」
「兄さんケチだもんねぇ
「うっさい!これも節約のためだ!」
怒鳴り、直接手動でテレビを起動させる。
 大半の家庭はテレビの電源は切っても、大元のプラグまでは抜かないだろう。だが、風野家は違う。少しでも家計を楽にしようと、日々節約に取り組んでいる少なくとも俺は。そのため、待機電力の掛かる電子機器は、使う時以外は電源を入れない。ただし、冷蔵庫は例外だ。中の食材が腐るからな。
 だが、必死で節約する俺を嘲笑うかのように、留美は毎晩がんがんドライヤーを使い、部屋の電気を消し忘れ、揚げ句の果てには、使った電子機器の電源も抜かない。つまり、プラスマイナスゼロで節約の効果が出ない。ああ、虚しい。
 虚空を仰ぐ俺を尻目に、留美が今朝の占いの結果にはしゃぎ回る。
「やった!「今日があなたにとって特別な日になるでしょう」だって。兄さん、今日何か私に特別なことが起きるかも!」
「そりゃよかったな
占いなんて当たらないだろという思考は口には出さずに心に留めておく。
「ちなみに、兄さんは、「見掛けがよさそうな男の人の事情に巻き込まれて大変でしょう」だって」
「俺のだけ細かい!?」
と、そこに、ニュースキャスターの険しい声音が響いた。
「速報です。昨日の午後5時に〇〇県〇〇市〇〇区〇〇町の商店街の付近でまたもや人が石像に変えられました。監視カメラにも写っておらず、証言者によると、黒いフードを被った背の高い男だったそうです。なお、警察はこの事件の犯人をMと名付け、事件に全力で
プツンと電源を切る。もちろん、切ったのは俺だ。
「兄さん商店街って
「ああ近くだな」
「幸福商店街」、それが、ニュースで言われていた商店街の正式名称だ。そこには、親戚すらいなかった俺達に、家事や生計の立て方を教えてくれた紀伊さんご夫妻がいる。初老の彼らと初めて会ったのは、今から十年ほど前、凍てつく雪の日のことだった。
 当時まだ六歳だった俺は、妹の留美のために、毎日必死に家をきりもりしようと奮闘していた。だが、六歳の子供が一人で家事などできるはずもなく。遺された家は、二人の子供には広すぎた。六歳と四歳の子供が生活していくには知識が足りなさすぎた。現実を突き付けられ、しまいには泣き出す留美を必死であやす始末。毎日疑問と憎しみだけが募った。何故、俺達はこんな目にあわなければならないのか。そして何故、誰も助けてくれないのか。世界に対する劣情だけが日々、心の片隅で蓄積していった。そんなある日、久しぶりに外が一面雪に覆われたので、留美を連れて近くの公園まで行った。辺り一面の銀世界。それは美しくもあり、同時に冷たくもあった。雪をすくうと、手の平に冷たさを感じた。当たり前のこと。だが、その時俺が思ったことは、到底子供とは思えない、悲しすぎる台詞だった。
「この世界は冷たい」
まるで、俺達を拒絶するかのように。
離れた所ではしゃぐ留美をみやる。
「せめて、留美だけは
顔を臥せる。
雪を踏み締める音が近づいてくるのに気付き、留美かと思い、顔を上げた。
「ボク、どこの子?」
「え?」
そこにいたのは、俺の知る妹ではなく、見知らぬ初老の女性だった。
「親はもういない」
冷たく言い放つ。興味がなかった。この時、俺にとって重要だったのは、今日一日をどう生き延びるかだった。
「親戚は?」
「いない」
即答。そんなのがいたら苦労はしない。何故俺に親戚がいなかったのかは、未だに謎だ。
「辛いでしょうに
ああまたこの視線か。まるで俺を哀れむかのような視線。同情心からくるこの視線が、俺は大嫌いだった。だから、嘘をついた。
「そうでもねぇよ」
ぶっきらぼうに。だけど、心のどこかでは助けを求めていたんだ。
………
沈黙が辺りを覆った。
俺は、楽しそうに雪だるまを作っている留美に視線をあてた。すると、俺の視線に気付いたのか、留美がこちらに向かってパタパタと走ってきた。
「お兄ちゃん、何してるの?」
上目遣いで見上げてくる。
「家のことについて」
なるべく、笑顔を意識して言った。
「妹さん?」
「そうだよ!留美っていうんだ!」
初老の女性に、笑顔で答える留美。
「辛くない?」
いい加減にしてくれ、しつこい。そう思ったが、口にはしなかった。留美は「うーん」と、唸り、直後、無邪気な笑みと共に口を開いた。
「お兄ちゃんがいるから辛くないもん!」
瞬間、俺の心の中で、何かが砕け散った。崩壊したダムのように、涙腺から、とどまることなく涙が溢れ出てくる。先程女性が言った言葉が脳裏をかすめる。「辛いでしょうに」ああ、辛いさ。たまらないほどに。だけど、立ち止まってなんかいられないんだ。少しでも前に進まなければ、留美を幸せにしてやれることなんてできやしない。でも、俺にはそれを成す力がなかった。だから、留美を不幸にしかしてやれなかった。そう思っていたのに、留美が、俺といられることが幸せだと言った。それは、俺にとって何より嬉しいことだった。
「だ、大丈夫!?」
突如泣き出した俺に罪悪感でも感じたのか、女性が懐からハンカチを取り出し、ゴシゴシと俺の顔を拭き始めた。
「なんでもねぇって
その手を押しのけ、留美の手を握った。
「さ、帰るぞ」
「え~、まだ雪だるま完成してないのに~」
名残惜しそうに後ろを振り返る留美。その手を引いて歩き始める。
「ちょっと」
しかたないので、振り返る。俺は今夜の献立を考えるのに精一杯なんだが。まあ、俺に出来るのはインスタント食品、おにぎりぐらいだけどね。
女性を正面から見据え、しょうもない台詞を待つ。しかし、それは
「よかったら、家でご飯食べていかない?」
このうえなく有り難いお誘いだった。

 この初老の女性こそが紀伊さん。この時、俺は自分の家事能力を見抜かれていた。そして、これを機に、俺達は紀伊さんご夫妻との接点をもち、家事を教わることになる。当時は随分と嫌がっていたが、今となると、感謝してもしきれないくらいだ。
「兄さん?」
妹の声でハッと、我に返る。
そして気付いた。あまりにも時が流れすぎていてわからなかったが、俺の呼び名が変わっていたことを。昔は、『お兄ちゃん』とか言って慕ってくれてたのになー。今は『兄さん』かー。お兄ちゃん寂しいなぁ~。
「兄さん、何にやついてるの?キモいよ」
「さらっと酷いこと言うな。昔の留美はかわいかったのになー」
「えロリコン?」
「いや、ちが
「ロリータコンプレックスって、幼子性愛って意味だから」
「ロリコンぐらい知っとるわ」
「兄さんってへんた
「いってらっしゃい」
無理矢理妹を、玄関まで押して行く。
「何よ、今の私じゃ不満なわけ(ボソッ)」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、なんでもない」
 玄関からバタンと、音がしたのを確認して、安堵の息をつく。
 留美はまだ中学生なので、高校生の俺とは登校時間が違う。ま、その分俺は楽できるんだけどね。
 箸を手にとる。
[留美食うの早いな]なんて思いながら、箸を進める。
 相変わらず俺の飯は美味かった。(日々ぎりぎりで食いつないでるんだ。なめるなよ)だが、頭の片隅には、さっきのニュースの内容がちらついていて、箸があまり進まなかった。
 そして、気掛かりなことがもう一つ。
「ピンポーン」
ほら来た。
溜め息をつき、玄関を開ける。
「お届け物でーす」
配達員から荷物を受け取り、ハンコを押す。
「ありがとうございました」
配達員が去っていく。
荷物を食卓の上に置き、空けてみる。
「またか
そこにはいつも通り、差出人不明の「大金」が入っていた。
………
俺はそれを、無言でクローゼットの中にしまい、腰をおろす。
「何がどうなってんだよ」
一度警察を呼んでみたが、差出人が誰だかわからなかった。
毎日バイトで食いつないでいる俺達には、大変魅力的なのだが、怖いので一度も手をつけてない。
「ったく差出人不明の郵便物なんて、よく郵便局も送ってくれるよな」
溜め息をついていてもしょうがないので、俺は壁に立て掛けてあった鞄を引っつかみ、学校へ向かうべく、家をあとにした。

MAGIC REVOLT 1 始まり― 110
       FIN

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久しぶりに書きます

テーマ:

約1年ぶりにブログを書きます。これからもこういうことがあるかもしれません。自分勝手ですいません。

読んでくれる方が0人なので、ほとんど自己満足です。なので、もし読んでくれた方がいたら、何かコメントをくれると嬉しいです。

高校生になってしまったので(しまったって(゚Д゚)ノ毎日書こうとは心がけますが、不定期になると思います。できるだけ良くするので、読者になってくれるとほんっとに嬉しいです。


話が変わりますが、実は私、高校では文芸部に所属しておりまして。今は小説書いてます。中2の頃くらいから書いているのですが、ラノベ好きなもので、かる~いものばっかりです。自己満足ですが、自分が書いていたものを気まぐれに載せるかもしれません。なんなんだよコレ!?とか、わ~、ないわ~とか思うかもしれませんが、読んでいただければ幸いです。(できればコメントくださいm(_ _ )m


日記とかもつけていきたいと思います。不定期ですが(;^_^A


というわけで、よろしくお願いします。



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