2005年08月24日(水) 22時36分28秒

気付かない人「春にして君を離れ」を読む

テーマ:読書のススメ(人間)
これは、推理小説じゃないです。
サスペンスでもないし・・・不思議なお話です。
アガサ・クリスティー, 中村 妙子
春にして君を離れ
主人公ジョーンは、今までの人生に満足していた。
弁護士である夫に尽くし、子供たち3人は立派に成人している。
多少の心配事はあるけれど、夫と2人これからも理想の生活を送るだろう。
完璧なはずの今までの生活が、学生時代の友人奔放なフランチに会った後から、少しずつ崩れていく。
夫や子供達との愛情は本物だったの?
疑問が追い討ちをかけるようにジョーンを襲い、家族の真の姿を現し始めた。

怖い話だ。
今まで気付かなかった色々な事を思い返すうちに、全てが自分の都合のいいように脚色されたものだったとしたら?
今までの人生全てが、自分の思い込みの中に成立していたなんて、考えたくもない。
ずっと一緒に暮らしてきた家族の中で、一人だけ蚊帳の外にいたなんて。
ゾッとする。
そのことに気がついたジョーンは、今までの自分勝手な言動を反省する。
気が付く瞬間って神がかり的だ。
頭にぱっと光が射し、自分の思いついた考えがキラキラと煌くように感じる。
ジョーンもそんなひらめきに出会い、夫に謝ることを決意する。
私が、この本が怖いなぁと思うのは、結末なのだ。
流石、クリスティー女史。
厳しいというか、冷淡というか。
人間の性分というものを、冷静に見つめた結果なのだろう。
読み終わった後、「うわぁ!」って言っちゃったけど、後味はそんなに悪くないな。
優しい夫が諦めつつもジョーンを受け入れているから?
いや、多分、私はこうはならないという自信があるからだろう。
と思いながらも、自分がジョーンのようにならないという確証はないのである。
時を重ねて、日々を過ごして、いつか私もジョーンのように気付かない人になってしまうかも知れない。
そう考えると、また本書は一層味わい深いものとなる。
出会えてよかった・・・・「気付き、自分の非を認める人」になりたい。
そう、決意させてくれたこの本に出会えてよかった。

コメント

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1 ■そうなのかぁ

私はアガサ・クリスティーは好きで結構昔読んでいたのですが、これはタイトルは知っていたのですが、読んだことありませんでした。サスペンスじゃなかったのですね、これ。ほかのポピュラーなクリスティー作品とはずいぶん趣が違う感じですね。うーん、読みたくなってきた。ホラーの怖さは苦手なのですが、こういう人の本性とかそういうものの恐さを描いた話って、けっこう好きなんですよね。

2 ■Re:まんぷくガール様

どなたかブログのコメントで知りまして、読んでみたのです。
クリスティー女史は、やっぱり凄いなぁと思いますよ。描写が的確で、心情がすごくダイレクトに伝わってくるのです。それゆえに怖いなぁと感じるのですね~。
私も、人の本性を掘り下げている小説好きです。暗くて救い様の無い作品も結構好きだったりします・・・。

3 ■読みましたー

記事中にリンクを貼らせていただいたので、トラバさせて頂きました。
いい本をご紹介くださって、ありがとうです。
いやー、怖かったです。さすが、クリスティ女史ですね。結末がまた、怖いこと!恐ろしかったです、ブルブル。

4 ■Re:つなさん

TBありがとうございます。
読まれましたか!怖いっすよね~ブルブル・・・。これを書いちゃうクリスティ女史の心理は一体どうなっているんでしょう!この人とは会いたくないなぁ、って会えませんけどね。
円満に終わると思っていただけに、私の衝撃は大きかったのです。
つなさんの記事を読んで、本を選ぶ時の参考にさせて頂いています。私からも好みにあった本を紹介できて嬉しく思います!

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