上橋菜穂子 「夢の守り人」

テーマ:
夢の守り人 (新潮文庫 う 18-4)/上橋 菜穂子
¥580
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今年の読み始めは守り人シリーズです。

年末に手に入れ、年越しを待っての読書。


やられた、と思ったのは

<花守り=鬼>となってしまうのがタンダだったこと。

これが見ず知らずの人であったなら、バルサは

普段の用心棒や魔物退治と同じスタンスで淡々と

鬼をやっつけてしまっていたのだろうな。

一番大切な人と戦わせるとは、酷だ・・・。

鬼となったタンダを振り切って走ったバルサが

追いついてほしくないが、生きている姿を見たいと思うところに

愛情の深さをみるようで涙が出た。


今回の異世界である夢は魅力的でしたたかだった。

人を心地良い気分に誘い込み、夢の花を受粉させる。

その甘い世界から苦い現実へと戻すのは

夢の外からの<生きようとする意志>。

夢に囚われたチャグムに語りかけるタンダの

力強い言葉たちにとても感動した。


トロガイの娘時代の夢の世界の話もロマンチックで

おばばは生まれた時からおばばではないのだ、という事実が

当たり前なのだが、結構衝撃的。

離れて会えない人に向ける思いの深さを

それぞれのキャラクターが持っていた。


世界はこの世と見えないいくつもの世界で出来ている。

作品が増えるたびに膨らんでいく「守り人ワールド」が

上橋さんの心ひとつから生まれたというのが素晴らしい。





読後満足度    ★★★★








上橋菜穂子 「闇の守り人」

テーマ:
闇の守り人 (新潮文庫 う 18-3)/上橋 菜穂子
¥620
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守り人シリーズ第2弾。

女用心棒バルサが亡き養父ジグロの汚名を晴らそうと

25年ぶりに故郷カンバル王国に帰る。

終わっていたと思われていたジグロを巡る陰謀は

未だ続いていたことを知る。


「精霊の守り人」が幼い皇子を守りながら点々とする

RPGのような冒険を思わせるのに対し、

この「闇の守り人」はバルサの過去を蘇らせ

心の区切りをつけるという精神的な意味合いが強い。

それぞれの郷(さと)を治める氏族長の後継問題や

王の槍であるユグロの政治的な嘘など

カンバルの世界観はよく現実を映している。


でてくるキャラクターも様々で面白い。

この物語の鍵でもある、ヒョウルという存在。

謎が解かれるまでは、不気味な印象の音を持つ彼らのことが

ひたひたと本当に怖かった。


山でヤギを飼う牧童は子供よりも背丈が小さく、

鳥の巣のようなぼさぼさの髪で短袴をはき

身軽に裸足で岩山を駆ける。

おやおや、こんなところにホビットが!!・・・と

本気で笑ってしまった。


「精霊の守り人」の中では新ヨゴ皇国では

生きている世界(サグ)と目に見えない世界(ナユグ)があると

言われていた。

カンバルでは人が暮らす山の上と山の王が住む地下の洞窟が

存在する。

地下の山の王の宮殿は目に見えないノユークという世界にあるという。

前作から続いて「ここではないどこか」の存在が

世界の果てしなさを感じさせる。


文庫で出ているのはここまで。

こうやって待っているオトナの守り人ファンにも

次を早く読ませてほしい!!




読後満足度   ★★★★☆   4.5




上橋菜穂子 「精霊の守り人」

テーマ:
精霊の守り人/上橋 菜穂子
¥580
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文庫化、待ってましたっ!

面白いとは聞いていたものの、

児童書のあのでかいハードカバーを持つ気になれず・・。

なにっNHKBSでアニメ化してるとな?今が読み時っ。


巻頭に地図。

こういうの好きだ~。眺めるだけでわくわくする。

主人公が30歳の女用心棒ってのもいい♪

自分の年代に近いから

なんだか自分自身が強くなったように思える。


精霊の卵が宿った皇子チャグムを守る命をうけたバルサ。

その卵が無事にかえらないと都は大変な干ばつになってしまうという。

帝、星読み、呪術師とどきどきするような人たちが出てきて

バルサたちに関わってくる。

皇子として生まれ、ひとりでは何も出来なかったチャグムが

バルサに鍛えられ成長していく。

そしてバルサもまたチャグムによって若かった頃を思い起こし

乗り越え、成長していくのだ。


私が気になったのは星読博士のシュガ。

今まで理想を追ってきた彼が聖導師の右腕となり

物事の表と裏を肌で知っていく。

シュガは敵対していた呪術師トロガイの意見を聞き入れる柔軟性があり

冷静で頭の切れる男だ。


対照的に熱いイメージなのがバルサの幼馴染でもあるタンダ。

重傷のバルサを救い、トロガイの弟子としても有望だ。

いざという時、頼りになる奴。


世界観がしっかりしていて知る楽しみも沢山あるし

アクションシーンが鮮やかでスピード感もある。

登場人物もただ筋に必要だから出てくるというだけでない

性格や人生の深みも感じられた。

この骨太ファンタジー、

子供たちにだけ読ませておくのは勿体無いぞ!!




巻末には恩田陸さんの解説つき♪

恩田ファンとしてはひとつぶで二度おいしい仕掛けだわ。

さ、これを2女に次に読ませて私は「闇の守り人」を買ってこねばっ!





読後満足度    ★★★★☆   4.5