瀬尾まいこ 「図書館の神様」

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図書館の神様/瀬尾 まいこ
¥1,260
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主人公の清はその名のとおり「清く正しい」人生を送っていた。

高校3年でバレー部の仲間だった山本さんが自殺するまでは。

それからの清はぷつりと糸が切れたように

懸命さを忘れ、なんとなく生きている。

高校の講師になったのだってそうだ。

バレー部の顧問になれるかと思っていたのに、

よりによって文芸部なんて。それも部員1名の。


この物語は「0」から始まっている。原点の意味だろうか。

それが高校時代の清だ。

この頃の清はバレーボールが人生の中心で

他人にも自分にも厳しい態度がすこし息苦しい。

「1」からは先生になった清で、不倫や心の傷を抱えて

肩の力は抜けているものの、覇気が感じられなくなっている。

根がいい加減な私としては、今の清の生き方もアリだと思うけれど

もうちょっと頑張れよ、と言いたくなる。


瀬尾さんが書く男の人はひょうひょうと、さりげなく優しくて

ちょっとずるい。

不倫相手の浅見さんが正にそう。

確かに未来に責任のない気軽な関係なのかもしれないけれど

清のことを1番に考えてくれないのだから寂しい。


文芸部の垣内くんは清よりも大人びたクールな男の子。

「僕は相手の内面を読み取る能力が低い」と自己分析しつつ

詩で「雑草の弱い心を見つけたい」と優しい気持ちを持っている。

彼との交流が、清を健やかにしてくれる。


放課後の、ほかには誰もいない高校の図書室で

静かに流れていく時間たち。

一心に本を読む垣内くんと、暇をもてあましている清とを

図書館の神様はにこにこと微笑んで見ているのかな。






読後満足度    ★★★★







瀬尾まいこ 「卵の緒」

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卵の緒/瀬尾 まいこ
¥1,470
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↑文庫の画像がないので単行本のほうを。


瀬尾さんが書く「おかあさん」はマイペースをくずさない。

「卵の緒」の君子さんも「7’s blood」のお母さんも。

どんと構えていて世間の嵐が吹き荒れたって

けろっと受け流す。

子供との距離もつかず離れずでちょうどいい。

ユーモアがあって、押し付けない愛情があって

あぁこんなお母さんになれたらいいなぁと思うのだ。


それに比べ、先生は頼りない描かれ方をしている。

瀬尾さん自身が先生だというから

見る目が厳しいのかな。


いろいろな事情があって「すくすく育った」とはいえない

子供たち。

だけどひねてうずくまってばかりいないところが

瀬尾さんのお話の嬉しいところ。

確かな絆を感じ取って前へと歩き出す、

その健気さに心が温かくなるんだ。


「7’s blood」はドラマになったんだって?蒼井優ちゃんだって?

うあぁぁ見たいなぁぁぁ。


これからも瀬尾さんを読むだろう、ということで

テーマに入れたよ。





読後満足度    ★★★☆ 3.5







瀬尾まいこ 「幸福な食卓」

テーマ:
瀬尾 まいこ
幸福な食卓


ずっと読みたかったので文庫化を待ってたのだー。

映画のDVDの発売とリンクしているのかな。

佐和子の家族を中心に1年ずつ年を追って書かれた短編集。



「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」


・・・こんな冒頭の台詞にまず驚いた。

父親をやめるって・・・なんだその無責任発言はっ!

淡々とその発言を受け入れる兄、直ちゃん。

梅雨になると体調が悪くなる佐和子には理由がある。

5年前のある事件から、中原家は歪みが現れた。

母は家を出て一人で暮らしている。


なんだかバラバラな家族だなぁ、とはじめは思ったのだけど

何のかんの言ったってみんな食卓に集まってくる。

揃って食べるのは、直ちゃんが作った新鮮なおいしい野菜たち。

別に住んでいる母も食事の支度をしに度々帰ってくる。

同じごはんを分け合うという、何気ないことが

人と人をつなげているんだな。


佐和子と大浦くんとのやりとりが微笑ましい。

大浦くんの単純で直球な振る舞いが

佐和子には嬉しかったんだろうと思う。

だから終盤の突然の展開には佐和子と同じくらい戸惑った。

こんな仕打ちってないぞ、と怒った。

物語の中の運命に、そして作者に!

一生懸命がんばっていた佐和子が不憫でならなかった。

だけど不運ってこんな風に転がってくるのかもしれない。

自分のところに来るまでは何も見えないのにね。


直ちゃんの彼女の小林ヨシコは

初めからイヤな感じのする女だと思っていたんだけど

シュークリームの件から印象が変わってきた。

そしてこいつに泣かされるとは思わなかった!

くそぉフェイントだぞー。


普通の家族の形とはちょっとずれている中原家だけど、

お互いを思う心は何も変わらない。

また前を向いた佐和子を応援する気持ちいっぱいになって

そっと読み終えた。






読後満足度    ★★★★☆      久々の4.5!