角田光代 「八日目の蝉」

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八日目の蝉/角田 光代
¥1,680
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不倫相手の妻が産んだ赤ちゃんを誘拐した女。

その女の子に自分が産んだかもしれない子供の存在を重ねて

心いっぱいの愛を注ぐ。

平穏な生活を送れるわけもなく、逃亡の毎日。

決して許されない犯罪であるけれど

1日でも長く、そのささやかな幸せがあるといいと思った。


物語中盤で視点が変わる。

事件解決後、大学生に成長した被害者である娘。

周囲を憎むことで自分自身を保っていた。

ここで事件の重さ、女の浅はかさを思い知る。

どんなに純粋な愛情でも、子供にこんな思いをさせるのは

やっぱり間違っていると思う。

かといって本当の家族ともうまくはいかないのだ。

母親業が苦手な母親。

優柔不断で事なかれ主義に見える父親。

特にこの男がすべての元凶なのだから

娘という立場はつらく、現実から逃げたくなるだろう。


つらくても、逃げても、それでも人生は続く。

加害者にも被害者にも、周囲の人々にも

多くの傷はついたけれど、それでも明日は来るのだ。

生き続ける強さ、明日に見えるささやかな望み、

心の奥に眠っていた確かな愛情を感じたラストシーンだった。

相手を思ってさしのべられる食べ物の何気ない描写に

急に涙腺がゆるんで、そんな自分にも驚いた。


人と人はつながって生きているんだな。

望むも望まぬもかかわらず。

今まで角田さんの小説は苦手だったけれど

この作品はとてもしっくりきて好きだ。




読後満足度    ★★★★






角田光代 「あしたはアルプスを歩こう」

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あしたはアルプスを歩こう (講談社文庫)/角田 光代
¥420
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Rutileさんのブログ で紹介されていたのを読んで

買うのを思い立った本。

角田さんの小説は苦手だけど、エッセイは好きだし。


トレッキングってなんだろ?という山初心者の角田さんが

イタリアのアルプスに誘われた。

ワインと美味しいものを堪能すべく、請け負った仕事は

思いとは裏腹に過酷なものだったのだ。


私は山も歩くのも好きではないので

朝から晩まで雪山を歩いた角田さんをひたすら尊敬する。

ガイドのマリオ・ルイージさんは日本で仏教を学んだ僧侶でもある。

大自然と対峙している状況でのふたりのやり取りは

シンプルでそれでいて奥深い。


角田さんの感想はリアルタイムな新鮮さを持っている。

身に沁みたことをまっすぐに言葉にしている感じがして

情報の入り方も出し方もきめこまやかで

感受性が強い人だなぁと思った。


自分の目で見て足で確かめて、そして信じる。

実感のこもった言葉は強い。




読後満足度    ★★★☆   3.5






角田光代 「対岸の彼女」

テーマ:
角田 光代
対岸の彼女

直木賞受賞作。


女が集まるといろいろややこしい。

噂や陰口が飛び交い、「ねー」と共感を求める。

その中で浮かないように気を遣い

心では自分は違うのだと思っている。


角田光代の書くごく普通の女たち。

悩み、笑い、泣き、毎日を暮らしている。

新しい人との出会い。

友情に変わる瞬間、破綻する瞬間。

心理描写を細やかに書いている。


しかしあまり共感して読めなかったのは

私が普段から集団に属さないからだろうか。


この話の中では葵の高校時代が一番輝いて見えた。

多感な青春時代には一瞬が永遠に思えることがある。

苦い思い出だとしても大切なのに違いはない。

その土台の上に今の自分がいる。


対岸に彼女が見えるのなら

彼女からもこちらが見えるのだろう。

川を隔てて存在していると思うのか、それとも

同じ川を見ていると思うのか。

心一つですっと楽になれるんじゃないのかな。



読後満足度   ★★★


角田光代「恋するように旅をして」

テーマ:
著者: 角田 光代
タイトル: 恋するように旅をして


以前、「ピンクバス」を読んだ時

読後の脱力感がすごくて

しばらくはこの人の小説は読めないと思った。


それでも本屋さんでこれを手に取ったのは

旅行(とくにアジア)のエッセイだということと

以前テレビの「情熱大陸」に出ていた角田さんが

なんだかとっても魅力的だったこと。


角田さんは旅先でよく迷子になる。

地図を持っていても、だ。

だけど現地の人の親切に助けられて

いつも乗り切れるんだ。


彼女はさばさばした性格で

実に気持ちがいい。

そしてよく飲む!

私はお酒は飲めないのだけど

こんなにぐびぐび飲めたら楽しいだろうなぁと思う。


旅行先の国は書いてあっても

具体的な観光地の描写はない。

だけど「アスファルトの両端は赤土がむき出しで」とか

「強い陽射しにさらされすぎて白っちゃけた外の風景」とか

そんな言葉で風景が浮かぶ。


日本国から一歩も出たことのない私は

見たことのない南の国の暑さを想像してみる。  


読後満足度   ★★★

     エッセイだと元気が出るよ。




そして今日の「ヨメナ語実力テスト」は60点だぁー。

5日間の平均点は64点

赤点は逃れたけれど・・・ってかんじだぁー。

角田光代 「ピンク・バス」

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著者: 角田 光代
タイトル: ピンク・バス

表題作と「昨夜はたくさん夢を見た」の2作。


角田光代は、チクチクする。

そしてそのチクチクしたところを思わず引っ掻いてしまって

皮膚が粉をふいたように白くなってヒリヒリする。

あー、なんだかとっても観念的になっちゃった。


「ピンク・バス」の主人公、サエコは妊娠したことがわかり

しあわせな妊婦になるために、記憶の大掃除をする。

今までの記憶を捨てて都合のいい幻想に置き換えるのだ。

そうやって今までいろいろな自分になってきた。

不良に、お嬢様に、エセインテリに。

完璧だと思ったのに、そこに夫の姉の実夏子が転がり込んできて

サエコの心が乱される。

封印していたはずの大学時代の記憶が蘇る。

「レゲ郎」と呼ばれていたホームレスと10ヵ月公園で暮らしたこと。

サエコは体調も気分も冴えない。

実夏子はピンクのバスが来たらここを出て行くと言う。

サエコはある日公園の向こうにそのピンクバスを見たのだ!


なにがチクチクするかって、記憶の大掃除だ。

サエコほど完璧じゃないけれど、嫌なことは心の奥にしまい込んで

何かの拍子にふっと浮かんでこないように重いフタをしめることがある。

表面は能天気でヘラヘラしているけれど

心の中はジリジリと熱を持っている。


読み終わってからもしばらくはチクチク、ヒリヒリ、ジリジリが続いて

参ったよ、ホント。

気づかなかった自分が本の中にいたみたいで

なんだか居心地が悪い・・。

もう、しばらく角田光代はやめておこう。

読み続けるのはムリムリだー。



読後満足度     ★★