京極夏彦 「邪魅の雫」

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京極 夏彦
邪魅の雫

京極堂シリーズ、追いついた~。

しっかし相変わらずぶっとい本だわ。手首痛いわ。

世界観を楽しみつつ、ゆるゆる読み終わったよ。


今回は京極堂や榎木津の出番が少なくて

派手さに欠ける仕上がりだったなぁ。

事件を起こす人々も内向的でタガが外れたような人が多く

なんだか混乱することが多かった。

特に江藤と大鷹の性格がかぶっていた気がするんだけど・・・。


ロイヤルバカオロカデリシャスこと益田と犯人面した関口くんが

現場に二人してやってきて、名コンビぶりを発揮している。

書評を気にして凹んでいた関くんが段々と復活して

榎さんと堂々と向き合うまでになれたなんて感動したよ。

益田の上っ面が軽いのも内面からの反動だったと分かったし。


神じゃなかった榎さん。

誰もぶっ飛ばさなかったし、高笑いもしなかった。

変な格好してズカズカ歩いてくれなきゃ、調子狂うなぁ。

榎さんがニンゲンらしく静かだと、こっちも辛いよー。


邪魅という妖怪の薀蓄、なかったなぁ・・・。

それにその名が関くんの口から出たというのにも驚いた。

どうしちゃったんだ、こりゃあ。

妖しが見えなきゃ、憑き物落としの出番がこないわ。

京極堂は最後に物語の整理に来たようだ。本屋さんだ。

ラストの落としは榎さんだったものね。


読後感はただただ辛かったし、切なかった。

だけどしばらく経ってみるとね、遣りきれない怒りが湧いてきた。

ひとつの毒が多くの人の人生を台無しにした。

人間はなんて弱い、なんて儚い。

・・・ヨコシマな心は次々に連鎖する。

その毒に妖がとり憑いているごとく。



読後満足度   ★★★★

おとーふこぞー




ヒマなのでかいてみた。豆腐小僧だよ~ん。

江戸時代に本に描かれた妖怪だそうな。


この本は形がもう豆腐そのもの!

カバーをはずすとモミジの飾りのついたおとーふになるよ。

両手で掲げ持ってぴょんと跳ねれば、

ほぉれあなたも豆腐小僧♪

(しまった!うちにはお嬢はいるが小僧がいない!)


「妖怪とは概念である。」

誰かが心で思ったとたんに概念としてそこに発生するモノ。

うん、確かにそうだなぁー。

でもこの本で面白いのは妖怪が妖怪自身を解説しちゃうこと。

豆腐小僧の着物の柄だった滑稽達磨が登場して

次々に出会う妖怪たちの薀蓄を述べちゃうのだ。


京極=薀蓄、なのだけど

京極堂シリーズよりもこっちのほうが断然分かりやすい。

なんてったってだるまさんが自分のことをしゃべってるんだから。


豆腐小僧はなにもしない。

たまに舌をペロリと出して持っている豆腐を舐めてみたりするだけ。

なんともまぁ害のない、イミのない奴!

うらみつらみが絡まない分、平和なボケキャラですなぁ。


どんどん出てくる妖怪テンコ盛り!

後半、キツネもわんさか出てきてちょっと説明が長くて飽きたけど

クライマックスで人間をやり込めるところがやっぱりおもしろかったなぁ。

「ふりだし」とあるけれど、続きもいつかあるのかなぁ~。

また会いたいなぁ、豆腐小僧。




読後満足度    ★★★☆   3.5


京極 夏彦
豆腐小僧双六道中ふりだし


京極夏彦 「続巷説百物語」

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京極 夏彦
続巷説百物語

巷説百物語 」の仕掛けを引き継いでいるものの、

こちらの方が仕掛けのメンバーたちの過去にまつわる

事件のため、興味深く読めた。


だけどここに出てくる事件は本当に悲惨だ。

理由もなく続く殺人。

訳があればいいというものじゃないけれど

やり切れなさがどんどん心に溜まってくる。


又市もおぎんもつらい過去を持っているのに

(たとえお金を貰っているからとはいえ)他人の為に仕掛けをして

命までかけて世を渡っていく。


読むのが辛くて、でも先が知りたくて

少しずつ這うように読んだ。

「死神 或は七人みさき」の仕掛けはまさに命がけだった。

大きな悪を消滅させるのには大きな力が要る。


最後の「老人火」になると雰囲気が変わる。

又市の姿が百介の前からぱたりと消えるのだ。

戯作者として世に出た百介は表の人間として生きろ、と

見えない又市が言っているようだ。

でも百介はさびしい。読んでいる私もさびしい。

小悪党でも人情深い一味にまた会いたい。

そう思いつつ捲った最後のページにあった百介の涙は

そのまま読み手の涙だと思った。



読後満足度    ★★★★

京極夏彦 「嗤う伊右衛門」

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京極 夏彦
嗤う伊右衛門

四谷怪談、お岩さん・・・・

お化けの話は怖いので読むまいと思っていたのだけど

京極作品なのでがんばって読んでみたら。

最後までお化けは出てこないじゃないかー。


これは何ともおどろおどろしく切ない物語だろう。


疱瘡を患い顔半分が醜く崩れた武家の娘、岩。

しかし彼女はいつも心正しく凛としていた。

縁あって婿になった伊右衛門と惹かれあいながらも

お互いの不器用さが壁となって諍いが耐えない。


実に恐ろしいのは欲望を持て余す人間。

権力、情欲、物への執着。

周囲の悪意に翻弄された岩と伊右衛門は

引き離され、悲劇の結末へと向かってゆく。


狂女となった岩の祟りと人々に恐れられる事件が続く。

その締めくくりともいえる伊右衛門宅での惨劇は

あまりに凄惨で読み進められなくなるほどだった。

終ぞ笑ったことのない男、伊右衛門の初めての「嗤い」に背筋が凍り

そして心から悲しくなった。


唐沢寿明、小雪で映画化されたのも見てみたいな。

でもスプラッタは怖いな。




読後満足度    ★★★★☆   4.5




京極夏彦 「巷説百物語」

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京極 夏彦
巷説百物語

時代物だというので初めは気乗りがしなかった。

だけど2、3ページ進むうちにスムーズに

その世界に入ることができた。

妖怪の名をタイトルにした短編で

諸国に起きた摩訶不思議な話が連なる。

いつの世でも怖いのは妖ではなく人なのだね。オバケ

自分の欲に囚われているとヒトでなくなる。


事件を収める御行一味の素性はよく分からないんだけど

小股潜りの又市らにうまく丸め込まれるところが

「必殺仕事人」風で面白い。

粋で艶っぽいおぎんなんてのは、

京極堂シリーズにはいないタイプで嬉しい。

それに善人じゃないところがまたいい。

小悪党。(悪党はダメだよー。)


この本で一番好きだったのは「芝右衛門狸」。

ヒトに化けた狸、に化ける治平が面白かった。

一番怖かったのは「帷子辻」。

常人の感覚とずれると愛情もこれほど恐ろしいのかと思った。


京極堂シリーズよりさくさく読めるところがいいね。

いや、あれはあれで楽しいのだけどね。

この巷説シリーズ(・・・っていうの?)も次が楽しみ。音譜




読後満足度   ★★★★