宮部 みゆき
クロスファイア(上)  クロスファイア(下)

念力放火能力(パイロキネシス)を使って

法で裁けない犯罪者を処刑する青木淳子。

悪を討つ正義の味方、だけのお話ならば

アメリカンコミックなんかでスカッと爽快になるだろう。

でも処刑は結局、殺人なのだ。

犯罪者が被害者になる時、正義のヒロインは加害者となり

どこまでが正義なのかが分からなくなる。


上巻は初めから淳子の派手な能力が描かれていて衝撃的。

下巻は淳子に接触してきた組織「ガーディアン」ともからんで

淳子の苦悩が描かれる。


それと対称的な位置にいるのが石津ちか子刑事。

人間を短時間で焼き尽くす強力な武器を考えてみるものの

超能力などはなから頭にない。

現実的な立場は読者と同じだ。

読み手の私といえば

現実とSFの世界を行ったり来たりして深みにはまる。


様々なタイプの女性の描きわけがとても上手くて面白かった。

やっぱり主人公の心理描写が巧みで

強力な武器であると同時に悲哀が感じられた。

宮部みゆきって面白いかも。



読後満足度    ★★★★☆   4.5