ガソリンスタンドのお兄さん
ボス(Yipeeさん)のブログ(→ココ )を読んで、コメントしていたら
「私の大好きな男たちが、この世からいなくなるのでは」という不安にかられました。
私が好きな男たち・・・
それは、ガソリンスタンドのお兄さんです。
私の家の近所にも、セルフサービスのガソリンスタンドが増えました。
新しく建つ所はすべてそうではないか、と言うぐらいの勢いです。
逆に今までの「いらっしゃいませ」と、体育会系のノリで威勢のいいかけ声をかけるスタンドは減る一方。
私は日頃から、「高速道路をハマショーをガンガンにかけて(法定速度で)とばすのが大好きだ」と公言しています。
そう聞くと、なんだかドライブテクニックも抜群の、車好きに聞こえませんか
実は、車の運転は基本的にあまり好きではありません。
乗り物好きですが、それは自分が運転するのではなく、本を片手にまったりと乗っておくのが好きなだけです。
ただ、運転歴が長いお陰で、車の流れは読めます。
特に高速など運転手の性格がでるので
「あの車はこういう風に追い越しをかけて、こう進んでいこうとしているな」とわかります。
他の車どうしの駆け引きをながめるのも、結構好きです。
でも、車本体のことになると、さっぱりわかりません。
メンテナンスは整備工場や、ガソリンスタンドにすべてお任せです。
実は、高速をはしるのに大切なタイヤの空気圧さえ、自分ではチェックできません。
自慢じゃないけど、タイヤの交換はおろか、チェーンを付けた事すらないんです。
そんな私ですから、心から頼りにしているのが、ガソリンスタンドのお兄さん。
「ちょっと○○が気になるんですけど・・・」
「わかりました。見てみましょう」
そして、お兄さんが「大丈夫」だと言えば、世界の終わりが来ても「大丈夫」だし
「△△がちょっと問題あったので、交換しましょう」
もしくは、「直しておきましょう」と言われれば、やはり一挙に世界平和がもたらされるのです。
そしてそのたびに「ああ、なんて男らしいんでしょ」と目がハートになってしまいます。
「何かあったら、いつでも僕に言ってください」と言われて、夢見ごこちです。
そうそう、ガソリンスタンドのお兄さん達ってどのお店の人でも、この「何かあったら、いつでも僕に言ってください」のセリフが多いんですよね。
若い頃ならいざ知らず、こんな私(←写真をアップできると、説得力が増すと思うのですが)に
「困ったことがあったら、何でも相談してくれよ。
オレを頼りにしていいぜっ」と言ってくれるのは、ガソリンスタンドのお兄さんだけです。
ホストクラブのホストに貢ぐ人の気持ちはわかりませんが、ガソリンスタンドのお兄さんなら貢いでもいいです
そう言えば、ずっと昔こんなこともありました。
会社に入りたての頃、私が運転していたのはマニュアル車。
でも会社の車のほとんどが、オートマ車でした。
オートマの運転など一度もしたことがないうえに、天神や博多駅周辺で運転する自信もなかったので、会社には
「実は、私の免許証は田舎限定で、田んぼのあぜ道に限られているんです。
なにしろ、田舎の自動車学校に行きましたから」と言って『運転はしない宣言』をしておりました。
会社の方も、下手にやらせて事故っても困ると思ったのか、私に運転させようという暴挙にはでませんでした。
ただ、「助手席にのっておくだけ」というお仕事は頻繁にありました。
「駐車禁止の所にちょっと停めなきゃいけないから、一緒に乗ってきて」
編集部員とは名ばかりで、私の仕事はこんなものです。
お使いにいったり、社長の娘のおもりだったり。。。
まあ、実力相応といえば、相応の仕事だったのですが
ある日、営業の人が
「ちょっと横に乗っていってくれない?
あのデパートの裏口は、直ぐにミニパトがくるから」
「いいですよ」と気楽に引き受けて、車に乗りました。
デパートの裏口にくるとその営業マンは
「ここ特に厳しいから、運転席に乗っててよ。
そして、すぐに動かしますとでも言って」
「え~っ、でも私オートマ車なんか、一度も運転したことないですよ」
「大丈夫、大丈夫」
何がどう大丈夫なのかはっきりさせないまま、その人はデパートの裏口へ入っていきました。
すると、いくらもしないうちに、車のクラクション。
バックミラーを覗き込むと、どうやらデパートに商品を搬入するトラックのようです。
ちょっと前に進めと、手で合図しています。
仕方がないので、車のエンジンをかけましたが、どうやって進んでいいかわかりません。
とりあえず、クラッチを「D」にしてアクセルを踏みました。
おっと、進みだします。
あわてて、クラッチを「1」に切り換えました。
完全にマニュアルの感覚です。
それに前に進んだのはいいものの、車を停止できそうな所はありせん。
しかも、「止まる時はどうしたらいいんだろう?
マニュアルなら速度を落としながらクラッチも「5」→「4」→「3」→「2」→「1」と落としていくんだけど、これは「1」と「2」しかない。
じゃ、今は「2」に入れるべき
この「P」ってもしかしてパーキングの意味で、ニュートラルの「N」みたいなものかしら」
疑問が次々にわいてきます。
でも、いつまでも思索にふけっている場合ではありませんでした。
デパートの裏口から500mぐらいしか進んでいないのに、もう突き当たり。
右か左に曲がらなければいけません。
「ど、どうしよう」
その頃は天神の道にもそこまで詳しくなく、ましてや天神で運転したこともなかったので、一方通行だの進入禁止だののトラップにはまって、身動きがとれなくなりそうです。
ただ闇雲に車を走らせ、ガソリンが尽きた所で、私も息絶えるのでしょうか。
そんな暗い妄想が頭にうかび、パニックになりそうでした。
当時は携帯電話も持っていなければ、ちょっと横に乗っておくだけのつもりだったので、財布も持ってきていませんでした。
もうダメだ。。。
絶望に打ちのめされようとした時、T字路の左手にガソリンスタンドがありました。
とりあえず車を乗り入れ、ちょっと気の弱そうなお兄さんに
「実は、オートマ車など運転できないのに、成り行きでデパートの所から動かしてしまいました。
運転手がすぐに戻ってくるので、ほんのちょっとの間ここに置かせてもらえませんか?
ほんとうに、困っているんです」
「困っているんです」のあたりは涙目になっていたと思います。
そのせいかどうか、そのお兄さんは
「わかりました。いいですよ」と快く車を置かせてくれました。
ダッシュで元の所に戻ると、営業の人もデパートから出てきました。
「これこれしかじかで、動かさなきゃいけなかったけど、オートマなんか運転したこともなかったから困りました。
それで、この先のガソリンスタンドに入れさせてもらいました」
その人はとっても驚いた様子でしたが、すぐに事態をのみこんで、ガソリンスタンドに取りに行ってくれました。
私がその場にしばらく待っていると、車に乗って戻ってきました。
「・・・洗車してくれてた。
・・・女の子がまた取りに来て、お礼を言ってくれると思ったのかな。
・・・洗車料を払おうとしたけど、サービスだからいいって。
・・・ちょっと気まずかったよ」
あらら。。。