夜明け前の出来事
テーマ:ヨーロッパ(NIS諸国を含む)扉を激しくノックする音で目を覚まし、時計をみると05時半だった。宿のファミリーが何か話をしているけれど、何なのかは当然僕には分からない。
もう一度目が覚めた時には08時半を回っていた。身体の奥に疲れが残っている感じがして、スッキリした目覚めじゃない。
ドミトリーの部屋から出ると、外は雨が降っている。
昨日の残りのジュースを飲みながら「雨か…。今日移動日なのになぁ。」とバルコニーで空を見上げた時、宿の娘さんが僕に「お母さんが……。」と目に薄っすら涙を浮かべて呟いた。
右側目元と口元を突っ張らせる娘さんの仕草から、お母さんは何らかの脳疾患を患ってしまったのかもしれない。
それがあの夜明け前の出来事だったんだな…。
ベッドメイキングやバスルームの掃除、部屋の整頓。お母さんと娘さんによって清潔に保たれているこのホステル。短期間の滞在だけれど、暖かく接してくれるファミリー。居心地はいい感じ。娘さんの呟きを聞いた時、お母さんが干してくれた僕の洗濯物を、昨日話をしながら一緒に取り込んだ光景が頭をよぎり、僕の心にも悲しさが広がって目の前が滲んだ。
軽い症状であってくれることを願わずにはいられない。
そしてチェックアウトの準備をしていたお昼前。お母さんが歩いてドミトリーに入ってきた。軽く右側の表情が強張っている感じだけれど、歩く様子はいつもと変わらず、言葉も発していた。その姿から、重い症状ではなかった様に見えて少し、ホッとした。
雨は雪混じりになり、風に煽られ吹雪いている…。
今晩首都バクーを離れます。
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