耳をすませばDVD


本離れと言われている昨今、学校の図書室に通っている生徒はどれだけいるんでしょうか?
当の私も小学校までは休み時間のたびに通っていましたが、中学校に入ると部活動に入ったため、図書室から足が遠のいたものです(苦笑)。


今回は中学生になっても学校の図書室だけでなく、市立図書館に熱心に通う本好きの女の子の物語『耳をすませば』('95)についてです。



◆ロマンチックな出会い

中学三年生の月島雫は、夏休みで学校の図書館が休室のため、父親が務める市立図書館へ。そこで自分が借りようとする本の貸出カードに「天沢聖司」という名前が連ねられているのを見て、彼に興味を抱きます。


耳をすませば1


確かに毎回自分が借りる本を見知らぬ誰かが借りていると、なんだか運命を感じてしまいますよね。とてもロマンチックな出会いだと思います。
こんなロマンチックな出会いを思い描いたり、また似たような経験を持つ方も大勢いるかと思います。
もちろん、私もそんな運命の出会いを思い描き、図書室に通った経験ありです(笑)。


◆貸出カードって何?

このロマンチックな出会い、30代以上の方は懐かしさを感じると思いますが、若い方のなかには「?」と思う方もいるのでは?
最近は公共図書館だけでなく、学校の図書室もPCで貸出処理していますからね。

耳をすませば2


以前は本の後ろに貸出カードと呼ばれるカードがついていました。
本を借りる場合、貸出カードに利用者の名前と返却日が記載されます。
このカードを使った貸出方式はブックカード方式と呼ばれるものです。


◆プライバシーに気をつけて

このブックカード方式は資料管理のためのものですが、誰がいつどんな本を借りたかがわかる(貸出履歴が残る)ため、当時の図書館界でも問題になっていました。


図書館には「図書館は、基本的人権のひとつとして知る自由をもつ国民に、資料と施設を提供することをもっとも重要な任務とする。」ことをモットーに「図書館の自由に関する宣言」を掲げています。
その中の一つに「図書館は利用者の秘密を守る」というのがあります。


図書館は利用者のプライバシーを守るため、ブックカード方式からPCでの貸出処理に移行していきました。
その真っ直中、本作で重要なポイントとなるこの”ブックカードでの出会い”の場面について、日本図書館協会は製作段階でスタジオジブリに対し、公開質問状を送っています。結果は…やっぱりこのブックカードはストーリーの進行上、外せないですよね(笑)。

劇中にはこの流れを読み取れる市立図書館職員の父と雫の会話があります。



 
 父「わが図書館もついにバーコード化するんだよ。準備に大騒ぎさ」
  雫「やっぱり変えちゃうの?私カード(ブックカード)の方が好き」
  父「僕もそうだけどね」

人とのつながりという点からは体温を感じるカード方式ですが、プライバシーの観点からみるとやっぱり変わらざるを得ないのかも…。これも小道具から見える時代の一つですね。


◆図書館は出会いの宝庫?

本作以外にも『Love Letter』('95)で貸出カードが、『君は僕をスキになる 』('89)では貸出カードを入れるブックポケットが思いを寄せる二人を近づける小道具として登場します。

他にも書架ばしごや目録カードなどがキーポイントになったり、図書館自体が出会いの場となる映画もたくさんあります。

ロマンチックな出会いの場として図書館は打って付けの場所なのかも知れませんね。
貸出カードによる運命の出会いはもう出来ませんが、図書館に行けばもしかすると素敵な出会いがあるかもしれませんよ(笑)。


私の場合、中学生の頃、手に取った本の貸出カードに4つ上の兄の名前を見つけ「やっぱり兄弟だなぁ!」と全然”ロマンチック”でも”運命的”でもない、単なる”血”の繋がりを実感したものです(笑)。
ちなみにその本は『ツッパリ生徒会長奮戦記』(石田誠/著 民衆社/発行 1984)という本でした。
そりゃ 運命の人とは出会えませんよね(苦笑)。



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『耳をすませば」

監督:近藤喜文
製作:東海林隆、氏家斎一郎
原作:柊あおい(『耳をすませば』)
脚本:宮崎駿
作画監督:高坂希太郎
声の出演:本名陽子、高橋一生、小林桂樹、露口茂、立花隆...他

配給:東宝  日本/1995年/111分

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