本が好き!プロジェクト第三十六弾レビュー
テーマ:本が好き!プロジェクト(書評)
愛と感謝の美容室 バグジー 2―『心を育てる』感動コミック VOL.2
- 田原 実、山上 幸二
- インフィニティ
- 1050円

先月(08年1月)「松下電器産業」は、10月1日付で「パナソニック」に社名変更するというニュースが流れた。
「松下電器は人を作る会社です。あわせて家電を作っています」
と言った松下幸之助の名言が風化しようとしている時代。
その芽はまだまだ小さいが、人を作っている会社が現れた。
それが北九州市にて、愛と感謝の美容室を展開する有限会社バグジー。
時代は効率主義を優先させることで、土着的、人間臭い経営者が減少している傾向にあるが、この会社の久保華図八社長は、失いかけた人間の大切な部分を熱く持っている大器。
そう、私には強く感じられた。
久保華図八社長は迷った時、阿蘇郡に住まわれる北川八郎氏に会いにいき、新しい店を出店すべきかと相談したところ。
「お店を増やして喜ぶのは久保さんだけじゃやろ?」
「いや、お客さんも喜ぶと思うんですけど」
「それは勘違いよ。お店を拡大して喜ぶのは経営者だけ。もし君が饅頭屋さんだったらお店が繁盛してくると、きっと、あんこを少なくして饅頭をたくさん作ろうとするだろう。でも、そんな時こそ、饅頭の数よりもあんこを増やした方がいいんだよ。お客様が多いからといって調子に乗らないように……。好調な時こそ、お客様にしっかりと貢献できる企業が成功するんだよ。拡大より充実が大切なことを、しっかり心に留めておいて」と諭され、それを聞き入れ出店をやめ一店舗のあんこ、つまり従業員を増やしたという。
利益拡大、効率優先と考える経営者なら、経営コンサルタントに相談に行き、そこでいかに儲かるかというベクトルで今後の選択を決められたことだろう。
しかし、久保社長は、田舎に隠居される老子のような人物に教えを乞い、その師の理念である、企業家よりも、人間を、客人こそを大切にすべきという思想に触れ、さらにそれを素直に受け入れた点。
そこに私は、冒頭で触れた、(経営優先で)大いなる境地を目指す「パナソニック」の経営方針とは対象的な、久保社長の姿勢、考え方。
そこに深く感じ入ってしまった。
また立地条件の良い話が舞い込んだ時。「やめとき。そういう話が危ないんよー。立地の良い条件は家賃が高いやろ。順調な時はいいけれど、少し調子が悪くなると、家賃が負担になってお金のことばかり気にするようになるし、場所がよいと美容師さんがヘタでもお客さんが来るからスタッフの心におごりが出てくるんよ。不便な山の中で繁盛しているお蕎麦屋さんを想像してごらん。街のお蕎麦屋さんよりも美味しいのは何でだと思う?遠くからわざわざ来てもらった人のためにまた来て欲しいから本当に美味しい蕎麦を作るのに余念が無いし、一人のお客さんを歓迎するんよ。結局、条件が悪い分、懸命さが違うんよ。だから実力が付くまでは、好条件のところにお店を出さん方がいいよ」と諭され、その教えも受け入れた。
そして、バグジーは成長していくが、その時も「順調な時ほど、気をつけなさい。順調っていうピンチがあなたにやってきたと思うから。山登りでも怪我をしたり遭難するのは、九合目が多いから絶対に慢心したらいけん」
とも説かれ、久保社長は、北川八郎氏を軍師の如く慕って、人間を育て、謙虚さを心がけ、人への感謝を忘れない経営者となっていたという。(北川八郎氏の意見は、ややマイナス思考とも取られるかもしれないが、その哲学性には打たれるものがある!)
元々は、ワンマンな社長で、人使いも荒く、態度も横柄だったという久保社長ではあるが、彼が改心し、成長した記録が、しかも、全身を使って自己改革してきた姿が、熱く描かれる「バグジーⅠ」そして、各美容室のリーダー達の姿にスポットを当てた本書「バグジーⅡ」は、感動を味わうことの少ないサラリーマン達の胸を揺さぶる熱き一冊に必ずやなると、私は、強くオススメしたい。
有限会社バグジー。
平成の世にあって、久保社長には是非「有限会社バグジーは人を作る会社です。あわせてお客さまの美容のお手伝いをさせていただいております」
そんな風な名言を残していただきたく思い、筆を置かせていただくことに致します。
本書は、出版社インフィニティ さまから、指名献本を受けながら、書評の掲載が遅れてしまったこと、お詫びいたします。




