本が好き!プロジェクト第二十五弾レビュー!
テーマ:本が好き!プロジェクト(書評)
聖灰の暗号 (上・下))
- 帚木 蓬生
- 新潮社
- 1575円
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livedoor BOOKS
書評
/国内純文学


作家の掌の上に、世界史が踊っている。そのありさまは、史実どおりではない。ゆえに踊っているのだ。
ゆらゆらとゆらめき、歴史は、蜃気楼のようにその掌の上で浮遊している。
本書は、十三世紀に起きたカタリ派への弾圧。それをドミニコ会の修道士が、詩、図等によって遺したものを日本人の須貝が発見し、その謎を追い求めていく物語だ。
まさに現代において、ブームに火の点いた感のあるキリスト教の謎。
それを題材とした、キャッチーな物語!
さて、作家帚木蓬生の掌の上では、どんな野心と作意の炎が燃えているのだろうか?
イエスの末裔の謎という(一部の歴史ファンにとって関心の高い)題材ではなく、カタリ派という切り口から筆を取った作家の狙い。
小説という舞台の上で、新たなる仮説が膨らんでいく。
殺人まで起こるサスペンス・パートは、ややフィクションの臭いが浮き立つが、その他はリアルな筆遣いで、読者を、キリスト教の背負う闇の世界へと、引きずり込んでくれる。
弾圧によって、火炙りにされたカタリ派の信者たち。
宗教者もしょせんは人間だということだろうか?
事実、人間の欲望は果てしが無く、自身が窮地に立たされれば、人を責める。
本書で描かれる弾圧は、思想の違いに原因があるとされるが、人を裁く際、裁く者(たち)はどこか、殺害欲を奮い立たせて、その欲を満たしているとも考えられるのではないか?
人は、自身を制されるか否か。そして、他人を許せるか否か。
そこに人として生きていく上で重要とされる聖域が在る!
この秋の夜長に、そう物思ってしまう私であった……。(2007/10)




