2007-10-03 01:28:34

本が好き!プロジェクト第二十五弾レビュー!

テーマ:本が好き!プロジェクト(書評)

聖灰の暗号 (上・下))

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書評 /国内純文学




 作家の掌の上に、世界史が踊っている。そのありさまは、史実どおりではない。ゆえに踊っているのだ。
 ゆらゆらとゆらめき、歴史は、蜃気楼のようにその掌の上で浮遊している。


 本書は、十三世紀に起きたカタリ派への弾圧。それをドミニコ会の修道士が、詩、図等によって遺したものを日本人の須貝が発見し、その謎を追い求めていく物語だ。


 まさに現代において、ブームに火の点いた感のあるキリスト教の謎。
 それを題材とした、キャッチーな物語!


 さて、作家帚木蓬生の掌の上では、どんな野心と作意の炎が燃えているのだろうか?


 イエスの末裔の謎という(一部の歴史ファンにとって関心の高い)題材ではなく、カタリ派という切り口から筆を取った作家の狙い。


 小説という舞台の上で、新たなる仮説が膨らんでいく。


 殺人まで起こるサスペンス・パートは、ややフィクションの臭いが浮き立つが、その他はリアルな筆遣いで、読者を、キリスト教の背負う闇の世界へと、引きずり込んでくれる。


 弾圧によって、火炙りにされたカタリ派の信者たち。
 宗教者もしょせんは人間だということだろうか?


 事実、人間の欲望は果てしが無く、自身が窮地に立たされれば、人を責める。
 本書で描かれる弾圧は、思想の違いに原因があるとされるが、人を裁く際、裁く者(たち)はどこか、殺害欲を奮い立たせて、その欲を満たしているとも考えられるのではないか?


 人は、自身を制されるか否か。そして、他人を許せるか否か。
 そこに人として生きていく上で重要とされる聖域が在る!


 この秋の夜長に、そう物思ってしまう私であった……。(2007/10)

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