2007-03-03 01:08:30

レビュー「日本人を元気にするホンモノの日本語」

テーマ:本が好き!プロジェクト(書評)

日本人を元気にするホンモノの日本語
  • 著:大岡信、金田一秀穂
  • 出版社:KKベストセラーズ
  • 定価:819円

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書誌データ /




 京菓子の、妙な花みたいなのが中心にあり、周りを水のような、寒天のようなものがクルンと包んでいて、中の花がきれいに見えるようなキラキラしたのが……。この中身だけだとあまり面白くないけれども、周りの寒天の涼しげな透明感というか、光というか、そういうものがあるからきれいに見える。大岡先生は、そういう水みたいな方。


 詩人大岡信氏をそう評す金田一秀穂氏は、詩人だと思った。


 本書は、日本語の達人であられるお二人の対談集。よって、「上品」という名のお皿の上に盛られた言葉の宴だ。


 そのせいか、大人の目線、学者の目線は、下げられてはいない。


 古今東西、一国の言語を先導されるのは文学者の先生方だと思われるが、現代日本の実態は、ストリート文化を花開かす若者たちの話し言葉ではないだろうか?


 よって、元気な言葉も若者会話が先導しているだろう。

 無論、金田一氏の方は、若者の目線からも言葉を投げかけられていて、ブログ文化にも言及されていた。(決して否定的な言及ではなく)


 しかし、やはりおしゃべり文化は、詰まるところは、根無し草ということなのだろうか?


 金田一氏は言われる。
「テレビにしろ何にしろ、言葉がとても簡単に消費されているというか、薄っぺらな言葉だけが流通していって、価値を持たずにそのまま捨て去られるような状況だと思いますが、どうしたらちゃんとした言葉が取り戻せるのか?」


 それに対して大岡氏は「これは大問題。やはり一番好きなものを見つけることが大切。が、物量の威力がすごくて、好きなものを見つけるのは難しい。非常に貧困な時代だと思います」


 さて、言葉とは何か?

 その問答がお手柔らかに繰り返されるが、やはり、それはわからないのだ。


 言葉は、物質の影なのだから、影の方をどうこうしても、やはり実体を掴むことは難しいのではないかと?

 私は、最終頁を閉じたところでそう思ってしまった。


 無論、人は言葉によって育てられ、学習していく。ゆえに、知恵を含む言葉は我々の教師という一面もある。

 しかし、それは詰まるところ、記号でもあるのだから、ある程度、その記号を把握した、しかも学者が言葉の新しい活用を考えた際、言葉の新配合というアプローチ以外に、新しい摸索は難しいのではないだろうか?


 よって、本書には解答まで用意されてはいない。

 日本語とは何か。それを論理的に探ってはいるものの、どこか物足りない一冊として終わっている。

 何故、物足りないのか?
 それは、ブレーンストーミング式の対談であるからであろう。

 ある一本の筋に沿って応答しあってはいる。しかし、それが感覚的な応答であるばかりに、やはり解答に向かう気力、エネルギーが高まらない。


 そう、(具体的な)販売目標を定めないままに商品を販売している営業マンのように、必ず解答に達しようとする強い意志が存在しないのだ。

 ゆえに、ゆったりと流れる水の如くに問題を口にされては、意見を返し、そして、それはいつしか、川(水路)へと流れていき……。

 つまり、お二人は、一つの問題へとさほど固執することなく、よって、スピーディーかつ何が何でも解答を弾き出そうとまでは、お考えにはなられてはいないようだ。


 流れ……そう、言葉が、双方の主張が、流れてはいつしか消えていく……。

 よって、「流れる対談集」と、定義付けられるのではないだろうか!?


 言葉は流れに流れ……いつしか、本書の題名ともかけ離れたテーマの岸へまで流れ着き、いつの間にか対談は終了する。


 「日本人を元気にするホンモノの日本語」


 もしも再度、お二人が本題にて対談なされるならば。


 一、元気とは何か?(そして、その反対は)


 二、日本語に、本物と偽物があるのか?

   または、あるのであれば、その境い目とは?


 など、各項目ごとに「小題」を挙げて、追求していくスタイルとした方が、テーマの帰結する「大河」が見えてくるのではないだろうか!?(構成的にも)


 しかし、金田一秀穂氏のいうように「大岡先生は、朝日新聞の『折々のうた』にて、紀貫之の役をなさっている」


 そういう言葉を目の当たりにすると、頭を下げたまま、上げることができないのも事実……。


 そう、薫葉豊輝ごときが、本書を評すること自体、(背伸びどころか)大背伸びするような行為であり、もしかすると、身長までもが伸びてしまうような愚鈍ぽんちの骨頂?


 あぁ、日本語よ、お前の正体は、記号なのか?


 それとも、記号を超え、言霊と化した魔物なのか?


 どっちだ!?(2007/3)

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