親と教師のための個別教育プログラム | 私のお薦め本コーナー 自閉症関連書籍

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自閉症・アスペルガー症候群および関連障害や福祉関係の書籍紹介です by:トチタロ

E.ショプラー・ R.J.ライヒラー ・M.ランシング:著    

江草安彦:監訳、末光 茂:訳 星和書店: 定価 2900円 + 税(1984年8月)


    私のお薦め度:★★★★☆


今では、自閉症児たちにとってその有効性は自明のこととなっているTEACCHプログラムです。
その日本への初期の段階で紹介された頃の本です(1984年初版)。


その意味で、ここで紹介されている事例や課題などは、今からみれば古典的な事例であったり、どちらかというと基礎的な課題が多いようにも思います。
でも、いつの時代においても、それぞれの自閉症児やその家族にとっては、全くの初めての体験、初めての療育ですね。したがってこのような基礎的な課題から地道に取り組みたいと思います。

そしてその課題は具体的に、絵なども交えて詳しく書かれています。また、理論的な説明より、目標をどのように設定し、実際にどう取り組めばよいかという手順や、またその際に考慮すべきことなどが、それぞれの課題ごとに書かれています。


もちろん、それはTEACCHのプログラムにのっとって設定されているのですが、もう一つの視点はIEP(個別教育プログラム)の立場から、一人ひとりの評価をしっかりとって、その子に必要なプログラムをどの様に組み上げていくか・・その大切さを、実際の事例(ディック.B、ウェンディ、スコット君 など)にそくして述べられています。

それが本書の題名ともなっています。


その意味で我が子へのIEPのプログラムを書くにあたりとても参考になる本です。課題にはそれぞれ目標とすべきゴールが呈示されていて、将来の自立にむけて、系統的に取り組むべき我が子のためのIEP作成のための虎の巻になると思います。


ちなみに、この本の「訳者まえがき」で触れらている「旭川荘 バンビの家」、哲平が就学前にお世話になった施設です。

訳者の末光先生にはそのバンビの家の父子キャンプで、ランプの光の下でお話しを伺いましたし、監訳の旭川荘理事長の江草先生(前 自閉症協会会長)は言うまでもありませんね。
その意味でも、個人的にとっても親近感を感じる本です・・(^_^;)


       (2002.02)


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親と教師のための個別教育プログラム/エリック・ショプラー




自閉症児の発達単元267―個別指導のアイデアと方法
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目次


Ⅰ 教育方法の創意・工夫


  第1章 序説


    背景
    自閉症と発達障害児
    相互作用のモデル
    発達的見地
    行動学上の相対主義
    指導体系
    教育目標と期待
    個人別の教育法
    両親と専門家の協力
    症例の呈示


  第2章 評価


    概念
    発達評価
    自閉症の言語発達
    行動観察
    両親との対話
    結論


  第3章 将来予測と教育目的・目標


    長期的な予測
    教育目標
    目標を選ぶ際に考慮すること
    目標の順序と相互作用
    特定の目標
    トミーの目標選択の理論的根拠


  第4章 低い発達段階での教育目標


    模倣
    知覚
    粗大運動
    微細運動


  第5章 高い発達段階での教育目標


    目と手の協応
    認知行動
    高度な概念
    機能領域の間での相互関係


  第6章 問題行動の取り扱い方


    行動療法
    治療すべき問題行動の選択
    治療計画の選択
    例1.望ましい行動を増やす
    目標:パンツを濡らさないでいられるように教える
    例2.軽度の問題行動を減らす
    目標:手づかみで食べるのを減らす
    例3.重度の問題行動を減らす
    目標:紙を破ることを減らす


  第7章 教育構造と教育方法


    教育構造
    教材の選択
    教材の提示
    教育方法


  第8章 家庭と学校での実践


    学校教育と家庭教育の比較
    子どもと学校という社会
    意思の伝達と記憶
    1ページ目:家庭教育
    2ページ目:身辺自立面(食事、着脱、用便など)
    3ページ目:全般的な行動(かんしゃく、睡眠、しつけ、薬、気分)
    教師の報告 ― 9月20日
    母親の報告 ― 9月24日
    教育プログラムの修正
    公的な同意


Ⅱ 教育プログラムの実例


  第9章 家庭教育プログラム


    氏名:ディック,B.
    ディックの最初の家庭プログラム
    目標:名詞の理解力、そして説明文の理解力を伸ばす
    目標:連想したり仕分けする技能を伸ばす
    目標:理解力と説明文の使用を増やし、協力的な遊び技能を伸ばす
    目標:協応、バランス,体力を強化し、身体運動の中で社会的相互作用を増す


  第10章 長期的な教育課題の展開


    ケース1 ― ウェンディ

      1番目のプログラム ― 2月17日 ― (1つの課題)
      2番目のプログラム ― 3月30日 ― (2つの課題)
      3番目のプログラム ― 5月10日 ― (2つの課題)
      4番目のプログラム ― 8月 1日 ― (2つの課題)


    ケース2 ― スコット

      1番目のプログラム ― 9月21日 ― (2つの課題)
      2番目のプログラム ― 10月14日 ― (3つの課題)
      3番目のプログラム ― 10月29日 ― (2つの課題)
      4番目のプログラム ― 12月30日 ― (3つの課題)
      5番目のプログラム ― 2月16日 ― (6つの課題)


  第11章 問題行動に対応した教育構造


    ケース1 課題のレベル:3才の多動な男児
    ケース2 課題のレベル:寡動な子ども
    ケース3 視覚的な注意と注意散漫:非常に注意散漫な子ども
    ケース4 視覚的な注意と注意散漫:注意力の乏しい子ども
    ケース5 特別な興味:消極的な女の子
    ケース6 特別な興味:ぶりき缶をくりかえしくりかえし積み重ねる子ども


  第12章 9つの機能領域に分けた教育目標


    発達レベル
    教育活動の複雑さ
    模倣
    粗大運動
    微細運動
    目と手の協応
    認知行動
    理解言語
    表出言語
    身辺自立
    社会性


  付録A 行動発達の道筋

    模倣
    知覚
    粗大運動
    微細運動
    目と手の協応
    認知行動
    理解言語
    表出言語
    身辺自立
    社会性


  付録B 教材・教具

    教育教具のリスト
    両親 - 教師に役立つ教材
    ワークブック、手引き書、参考書


  文献
  索引