奥平綾子@ハルヤンネ:著 (有) おめめどう 自閉症サポート企画 定価: 600円+税 (2005年4月)
私のお薦め度:★★☆☆☆
これまでのハルヤンネさん(ダダ母さん)の「レイルマン」や「レイルマン 2」とは少し違った切り口の本です。前の2作が、ダダくんとの関わりを通して、自閉症について書かれていたのに対し、本書は地域の小学校や中学校で、子どもたちに向けて話したり、先生に向けてアドバイスしたり・・・という話が中心です。
小学校では「人権学習会」で「差別からの立ち上がり」について話をしてほしい・・・ということだったそうですから、内容も自閉症について、というよりは障害一般の話や「子どもの権利条約」についての解釈などになっています。
中学校でのアドバイスも、障害支援をされている大西俊介氏による指摘が中心なので、視覚障害や車椅子の方にとって、街のバリアフリーがいかに中途半端で使えないものか、という話になっています。
題名の「杖の役割」も、体の片方がマヒした人が杖を持つとしたら、マヒしていない側の手に持つように、支援する人も「動く方」の側を支えなければうまくいかない・・・私たちが障害を持つ人の杖になるなら、不自由な側ではなく「動く方を確実に」支援することを心がけていなければならない、という小学校での話の中からの言葉です。
確かに、自閉症や他の障害にとっても、弱いところを強くするよりは、強みの部分を生かして生きていくというのは大切だと思います。ただ、小学生相手に正しく理解してもらえたのかな、という不安は残ります。
片マヒの方を支援するには、確かに動く方について支えるのが基本だそうですが、障害支援はその障害の特性に配慮して、やはり不自由なところを補っていくのがスタートだと思います。
特に支援するのが小学生や中学生だとしたら、具体的にはやはり目に見える苦手なところをわかってあげることから始めるべきではないでしょうか。
視覚障害の人に補聴器を用意したり、聴覚障害の人に車椅子を渡すような支援では意味がないように、自閉症の人に過剰なまでの声かけや、スキンシップに精を出されても逆効果になることも多いです。しかし、そんなふうに知的障害と同様の支援しかされていない小学校もあるようにも思います。子どもたち以前に、先生方にも障害に対する正しい理解をもっていただきたいケースもあると思います。
また、「ボトムアップではなく、トップダウンね」
これも生涯を見通したときには大切なのですが、特に小学校・中学校時代には教育や訓練により、出来ることを増やしていくことも大事なような気がします。ボトムアップもトップダウンもともに大切にしていただきたいと思います。
そのあたりのことが、小・中学生の子どもたち相手だと、二者択一的に「どちらが正しいか」という風に受け取られはしなかったのかな、とちょっと心配になりました。
大人向けの講演会とは違った意味で参考になる話も多いのですが、自閉症に対するアドバイスを期待されて本書を広げられた方には、少しとまどわれるかもしれないという印象でした。
(2005.12)
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目次
杖の役割 - 障害支援の素 -
二つの中学校を訪ねる
ある山間の小学校人権学習会