21世紀に最後の年、
ロボット製造メーカー大手の私の会社は、
育児教育型のネコ型ロボットの製造に着手した。
ネコ型ロボットは、22世紀に入った年の1月1日に販売開始の予定だ。
しかし、2099年12月、問題が発生した。
人工知能を組み込まれたネコ型ロボットを、
実験のため一般家庭に放すと、
いつの間にか、『どら焼き』を口にくわえているのだ。
どの製品も決まって同じ行動を繰り返した。
「このままでは20世紀に作られた、
偉大なSFのパクリだと思われてしまう。」
と開発の責任者であるアリア部長は言った。
そして急遽、
すでに年末の休暇に入っていたプログラマーたちが呼び集められ、
人工知能のプログラムチェックを繰り返した。
プログラムのどこにも『どら焼き』に関するプログラムなど、
組み込まれたはいなかった。
もちろん『ドラ〇もん』に関するプログラムも、
組み込まれてはいなかった。
「どういうこと?」
と言ったアリア部長の表情は困惑していた。
ドラ〇もんやどら焼きの情報など、
知るはずが無いネコ型ロボットの人工知能が、
勝手に『どら焼き』に反応する。
勝手に進化する人工知能とは言え、
実験機体全てがどら焼きに反応するなんて事は、
理論上はありえない。
プログラマーたちの徹夜の働きにも関わらず、
原因を突き止める事は出来なかった。
すでにネコ型ロボットの予約が殺到しており、
今更販売日を変える事など社運に関わる。
世の中がクリスマスを終え、正月の準備に追われ始めた頃。
徹夜続きで全員がぼんやりとし始めた会議室で、
私の同僚のプログラマーが言った。
「もしかすると、ネコ型ロボットに組み込まれた人工知能が、
偉大なるSF漫画家に対して敬意を表したいのかも知れない。」
と言った。
時間的に諦め気味のアリア部長は
「そうかもね・・・。」
と言って真夜中のコーヒーを口に運んだ。
結局、原因を掴むことは出来ず、
22世紀最初の年、ネコ型ロボットは出荷された。
出荷後、ネコ型ロボットはパクリだと騒がれる事も無く、
逆に好感を持たれて世の中に迎えられた。
おしまい
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