アルバイトで身についたこと

水道や下水の配管工はさんざやった。
学校の工事現場もあれば養鶏場もあった。
公共住宅の新築なのに侘しい作りも蛇口を取りつけるのに緊張するような金ピカの大邸宅もあった。
夏は熱中症に倒れ、冬は寒さにかじかむ手から離れたドリルにおでこを急襲された。
本屋の棚卸は得意だった。
棚に並んでいる本はどれも諳んじていたから、どこからどこまでを数えるのかさえ店主と同等に仕切ることができた。
呉服屋の展示会もたくさんやった。
偽物の畳に緋色の毛氈がどれほどの効果を及ぼすのかを思い知った。
婦人服の商品倉庫では店別の傾向をド派手な松戸いなたい浦和気取った藤沢サイズの小さな下北沢とすべて把握して、発注伝票が遅れてきても出荷に後れを出さなかった。
そうやって稼いだおかげで、本屋で好きなだけ本が買えた。
バーゲンに行くとずっしりと持ち切れないほどレコードを買った。
米より本、おかずより音楽。
それでも幸せだった。
どの仕事も、熟練した。
熟練して楽しかった。
熟練までの道のりを考えることも楽しかった。
いまもアルバイトした経験が何らかの形で生きている。
生きている。
活かしてこそ自分が生きるから、アルバイトに精を出す時代は大切なんだと思う。






