The Way of the Dragon | Thousand Days

Thousand Days

さうざん-でいず【千日手】
1. 同一局面の繰り返し4回。先後入れ換えてやり直し。
2. 今時珍しく将棋に凝っている大学生の将棋系ブログ。
主に居飛車党過激派向けの序盤作戦を網羅している他、
雑学医学数学物理自転車チェス等とりとめのない話題も…

※前回の記事『チェスについて語るときに将棋指しの語ること』


楽しようとしたり欲張りになる優勢側より
若干不利な側の方がより注意深く創造的で
より大胆なプレイができることはよくある
こうして僅かな不利はしばしばそれ自体が
しっかりとした利点になり得る

Emanuel Lasker ラスカーのチェス手引書




白番初手e4に対して位負けせずフィアンケットしたければ、
黒番初手c5の Sicilian Defense でd4地点を守るのが急務。



【Modern, Averbakh Variation】
→【King's Indian Defense】

1. e4 g6 2. d4 Bg7
3. c4 d6 4. Nc3 Nf6 ∞

g6~Bg7を優先すると、c4で King's Indian に合流される。
(Nf6のところe5やNc6で変化はできるが、大体白不満なし)

KID は破壊力が高く格上に一発入れるには優れた戦法だが、
一局一局が重く事前準備も重く、安定した運用は望み難い。



【Pirc, Austrian Attack】
1. e4 d6 2. d4 Nf6
3. Nc3 g6 4. f4 Bg7
5. Nf3 0-0 6. Bd3 Nc6 ∞

d6~Nf6が先ならNc3を強要できるがこれもまた白の理想形。
中央が手厚く、角行Bishopの利きが弱まる。d5も突き難い。

~~~~~~~~~~~~

一方 Sicilian なら中央の風通しが良く、Bg7が常に好形だ。
Sicilian 対策は下記の三群あるが、現実にはAnti-が多い。

Open Sicilian: Nf3~d4で手順に白駒を捌いて、定跡で勝負
Bb5 Sicilian: 黒のPawnを乱しながら早く囲う。大局観重視
Anti-Sicilians: その他。己の得意分野で戦う。コスパ重視

本稿ではBb5を封じてAnti-対策もしやすく名前も恰好良い、
(Hyper)Accelerated Dragon の採用を想定して調べていく。
(※定跡のより強固な Najdorf / Pelikán はBg7型にならない)




【Nxd4~c4: Maróczy Bind】
1. e4 c5 2. Nf3 g6
3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nc6
5. c4 Nf6 6. Nc3 d6


対Bg7型最強の対策は Open Sicilian でd筋を換えc4を突く
Maróczy Bind という恰好良い名前の超難しい戦法である。

黒はd5突きを封じられるため高度な大局観を要求されるが、
ちゃんと勉強すれば対抗できる。(本稿では深くは調べない)

4. Nxd4 Nf6 5. Nc3 Nc6の順だと 6. Nxc6 bxc6 7. e5...
或いはdxc6と取ってもQ交換から不利な終盤になって困る。




【Dragon, Yugoslav Attack】
1. e4 c5 2. Nf3 d6
3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nf6
5. Nc3 g6 6. Be3 Bg7
7. f3 0-0 8. Qd2 Nc6 ∞

d6~Nf6が優先の Dragon(無印)なら Maróczy を防げる。
(正確には 3. Bb5† Bd7...から類形になり得るが条件は良い)

だが今度は玉頭速攻、Yugoslav Attack の対策を要する。
大体すぐ詰むや詰まざるやの攻め合いになってまるで将棋。

なので将棋勢はこちらも覚えるとより楽しいかもしれない。
(本稿では、先に簡明な超加速龍から習得することを勧める)


目次
❶Nc3系統
【Nc3~d4: Accelerated Dragon】
【Nc3~Bb5: Bb5 Sicilian】
【Nc3~f4: Grand Prix Attack 1】
【Nc3~Bg2: Closed Sicilian 1,2】

❷他のPawnを突く系 Anti-Sicilians
【g3/d3: Closed Sicilian 3】
【f4: Grand Prix Attack 2】
【d4: Morra Gambit】
【c3: Alapin Variation】
【c4~g3: Botvinnik System】
【b3: Queen's Fianchetto】
【b4: Wing Gambit】

❸Nf6系統(含 Maróczy Bind)
【Bc4~c3: Pseudo-Alapin】
【Qxd4】
【Nxd4~c4: Maróczy Bind】



・駒がぶつかるまでの手順前後:
※損せず取れるPawnは基本取る
d4には Nf6
c4/Nf3には g6~Bg7
(d4の後の)Nc3には d5
e4/(d4前の)Nc3には c5~Nc6


~~~~~~~~~~~~


❶Nc3にはNc6(〜Bg7〜Nf6)が美しい
1. e4 c5 2. Nc3 Nc6


※白Bb5型を徹底的に避ける意味でNc3にもg6はあるが、
以下 d4 cxd4 Qxd4 Nf6 Be3 Nc6 Qd2...の対策が必要。



【Nc3~d4: Accelerated Dragon】
3. Nf3 g6 4. d4 cxd4
5. Nxd4 Bg7 6. Be3 Nf6
…●

Nc3が入っていればc4突きを恐れることなく囲っていける。
d6を省いて組み合えるのが Dragon(無印)との最大の違い。

7. Nxc6 bxc6 8. e5 Ng8 9. f4 f6 10. e6 d5...は黒問題ない。
(5. Nxd4 Nf6 6. Nxc6 bxc6 7. e5 Nh5 8. Bc4...は黒だめ)


●…
7. Be2 0-0 8. 0-0 d5
9. exd5 Nb4 10. d6 Qxd6
11. Ncb5 Qd7 12. c4 e5
13. Nb3 a6 14. Nd6 Qc7
=

白が普通に囲う所謂 Classical Dragon でもこの差が活き、
黒d5から即捌けば(単にNxd5でも本譜でも)互角となる。

※ 8. 0-0 d6 9. f4 Qb6 10. Qd3 Ng4...さえ憶えておけば、
d6突きで Dragon(無印)に戻しても実は全く問題ない。


●…
7. Qd2 0-0 8. f3 d5
9. 0-0-0 Nxd4 10. e5 Nf5
11. exf6 exf6 12. Nxd5 Be6
=

Dragon(無印)同様、白は玉頭から攻めたくなるのだが…
本来の Yugoslav Attack と違ってQd2やf3が緩手になる。

白f3を省けばNg4だし、指せば黒d5が一手早くかつ厳しい。
Nxd4にBxd4はdxe4~Qa5, Qxd4もNxe4〜Nd6で良い。


●…
7. Bc4 0-0 8. f3 Qb6
9. Bb3 Nxe4 10. Nd5 Qa5†
11. c3 Nf6 12. Nxc6 dxc6
13. Nxe7† Kh8 14. Nxc8 Rxc8
=

Bc4〜Bb3以外なら派手に立ち回り、互角以上の岐れになる。
f3のところ0-0でも、Nxe5 Nxe5 d5で先手の利は消え去る。

8. Bb3には d6 f3 Qa5 Qd2 Nxd4 Bxd4 Be6 0-0-0 b5...
と変化を絞って Dragon(無印)にも戻せるが…(10. 0-0 Bd7)



【Nc3~d4~Bb3: Yugoslav Formation】
●…
7. Bc4 0-0 8. Bb3 a5 …◯

本譜はa5突き。a4 Nxa4 Nxe4の捌きを用意し待ってみる。
(Na5はe5~Bxf7~Ne6で崩壊。8...Re8や 7...Qa5は有力)

a3やa4なら Ng4 Qxg4 Nxd4 Qd1 Nxb3で白陣を乱せる。
白としてはf3と防ぐか、0-0で前者の筋を受けて立つか。


◯…
9. f3 d5 10. exd5 Nb4
11. Nde2 a4 12. Nxa4 Nfxd5 =

f3で薄くなるのを待ってd5と突くのが、a5の真意だった。
a5とf3の交換をフルに活かした本譜は形勢互角といえる。

d5にNxd5なら Nxd5 exd5 a4 Bc4 Nb4で白は収拾困難。
d5にBxd5はあるが、Nxd5 Nxd5 f5で黒がよく捌けそう。


◯…
9. 0-0 a4 10. Nxa4 Nxe4
11. Nb5 Ra6 12. Qe2 d6
13. c4 +/=

0-0にa4からの決戦は、薄いb筋をNb5~Qe2で狙われる。
0-0にd6と収めようにもNdb5で、a4以上の手は難しい。

本譜も指せば難しいのだが、抑え込まれて黒自信なし。
Nb5にd5も、Bb6 Qd7 Qe2で、本譜と同じくやや白持ち。


◯…
9. 0-0 Nxd4 10. Bxd4 d6
11. a4 Bd7 12. f4 Bc6 ∞

よってそろそろkNight交換でNb5を消してからd6が相場。
以降はNd7~Nc5の活用を見て、これなら一局の将棋か。



【Nc3~Bb5: Bb5 Sicilian】
3. Bb5 Nd4 4. Bc4 e6
5. Nf3 Nf6 6. 0-0 a6
=

Bb5 Sicilian は手強いが、白Nc3型ならNd4で対抗できる。
(e5~d6と中央を厚くする受け方もあるが、Nge2~f4が厭)

Bc4の躱しにはe6が手堅く、4. Nf3 a6...も本譜に合流する。
Nge7型はNxd4~Ne2が厭。Nf6にe5ならd5と反撥する。

d5からの総交換はNxd4~Qh5の筋があり(Nf4にはQb5†)、
a6とa4を入れてから。d3やRe1なら、b5~Bb7と組む。



【Nc3~f4: Grand Prix / Closed】
3. f4 g6 4. Nf3 Bg7
…▲


【Nc3~f4: Grand Prix Attack 1】
▲…
5. Bb5 Nd4 6. Nxd4 cxd4
7. Ne2 Nh6 8. 0-0 0-0
=/+

Pawn形を乱しにくるBb5は脅威だが、ここでもNd4が強い。
(cxd4がkNight取りの逆先手)以下d5時々b5がこの形の常道。


▲…
5. Bb5 Nd4 6. 0-0 Nxb5
7. Nxb5 d5 8. e5 d4
9. c3 a6 10. Na3 Nh6
=

白の玉頭攻め狙いには、先に中央で戦いを起こすのが上策。
Nc3を消してからa6が本線で、exd4なら即a6~Nf6で良い。


▲…
5. Bc4 e6 6. f5 gxf5
7. exf5 d5 8. Bb3 Nge7
9. fxe6 Bxe6 10. 0-0 c4
-/+

f筋を攻めるBc4には、e6〜Nge2~d5で遮断を狙うのが形。
f5のところe5でも d5 exd6 Qxd6で良い。(Qxf4は我慢する)


【Nc3~Bg2: Closed Sicilian 1】
▲…
5. g3 d6 6. Bg2 e5
7. d3 Nge7 8. 0-0 0-0
9. f5 gxf5 10. Nh4 Nd4
11. Qh5 +/=

Closed Sicilian はf5からの玉頭戦が最大の持ち味であり、
最速で組まれると黒e5の受けでは本譜の如き猛攻を喰らう。

故に上記の順になる可能性があるうちはd6・e6型で受ける。
(白がBe3などで一手寄り道してくれれば、e5型でも受かる)


▲…
5. g3 d6 6. Bg2 e6
7. 0-0 Nge7 8. d3 0-0
9. Be3 Nd4 10. Qd2 Rb8
=/+

e6~Nge7でf5突きを封じ、g4ならその瞬間逆にf5と突く。
白はd4から中央に転進したいが、Nd4の馬柱で封じられる…

本譜に限らず、Rb8〜b5が素直に通れば黒に不満はない。



【Nc3~Bg2: Closed Sicilian 2】
3. g3 g6 4. Bg2 Bg7
5. d3 d6 6. Be3 e5
…△

Be3はf4やNf3を決めず柔軟な手だが遅く、e5が間に合う。
(Nf3の瞬間 exf4 Bxf4を入れればBishopの動きで手得する)


△…
7. f4 Nge7 8. Nf3 exf4
9. Bxf4 0-0 10. Qd2 Bg4
11. 0-0 Qd7 12. Bh6 Rae8
=

早いBe3はQd2~Bh6を含みにしているが、換えさせて良い。
Bg4かNd4でkNightさえ消してしまえば、案外攻めは細い。


△…
7. Nge2 Nge7 8. Qd2 Nd4
9. 0-0 0-0 10. f4 Be6
=/+

Nge2型なら黒に狙われ難い代わりに、白の玉頭攻めも遅い。
Be6(~Qd7~Rae8)と構えて、f5やb5時々d5から打開できる。


△…
7. Qd2 Nge7 8. Bh6 0-0
9. h4 Bxh6 10. Qxh6 f6
=/+

Bh6の前のh4はh5で問題ない。本譜はQueenが迫り怖いが、
h5にg5~Kh8~Ng8で女王様を食べる狙いがあって受かる。


~~~~~~~~~~~~

❷他のPawnを突く系


【g3/d3: Closed Sicilian 3】
1. e4 c5 2. d3 Nc6
3. g3 g6 4. Bg2 Bg7
5. f4 e6 6. Nf3 Nge7
7. 0-0 0-0 8. c3 b6
9. Be3 +/=

Nc3を省くとBe3は指せないが、c3型に変える余地がある。
d6~e5はf5突きを狙われ、d5突きもe5と躱され自信なし。

よって黒は通常形と同じe6~Nge7型に組むのが自然だが、
c3~Be3~Na3~Nc2...と陣形を整える順が黒にとって強敵。



1. e4 c5 2. g3 d5
3. exd5 Qxd5 4. Nf3 Nc6
5. d3 Nd4 6. Bg2 Bh3
7. Bxh3 Nf3† 8. Kf1 Nd2†
=

黒はg3の瞬間d5突きでNc3省略を咎めたい。(d3にはNc6)
Nc6にNc3やBg2ならQe6†で充分。本譜も引き分け模様。

d5にNd2から白黒逆の King's Indian を狙う余地はあり、
その場合黒も互角以上だが調子に乗り過ぎないよう注意。


【f4: Grand Prix Attack 2】
1. e4 c5 2. f4 Nc6
3. Nf3 g6 4. Bb5 Nd4
5. Nxd4 cxd4 6. 0-0 a6
7. Ba4 b5 8. Bb3 Bb7
9. d3 +/=

Nc3が入った形と同様に指すと、Bb5にNd4と躱し難くなる。
(cxd4がkNight当たりにならず、白も堂々とNxd4と取れる)

a6~b5で手得はできるが、スムーズに組めて白不満なし。
f4の瞬間やはりd5突きが、この形の筋のような気がする。



1. e4 c5 2. f4 d5…◆


◆…
3. e5 Nc6 4. Nf3 Bg4 =/+

Caro-Kann の定跡より丸々一手得で悪かろうはずはない。


◆…
3. exd5 Nf6 4. c4 e6
5. dxe6 Bxe6 6. Nf3 Nc6
7. Be2 Bd6 8. d3 Qc7
=/+

c4で支えられるとPawn損にはなるが、e6で手順に捌ける。
白は陣形が乱れBishopも使い難く、Pawn得でも指し難い。


◆…
3. exd5 Nf6 4. Bb5† Bd7
5. Bxd7† Qxd7 6. c4 e6
7. dxe6 Qxe6† 8. Qe2 Qxe2†
9. Nxe2 Nc6 10. 0-0 0-0-0
=/+

白としてはc4の前にBishopを外へ避難させた方が良いが、
それでもe6からQueenを換えた後、d3やc2の弱点が残る。



【d4: Morra Gambit】
1. e4 c5 2. d4 cxd4
3. c3 dxc3 4. Nxc3 Nc6
5. Nf3 g6 6. Bc4 Bg7


Nf3とg6の交換が入れば結局、Gambitを受ける羽目になる。
(2. Nf3 g6 3. d4 cxd4 4. c3 d5 5. Qa4† Bd7 6. Qxd4...)

Nc6は 7. Qb3 Na5 8. Bxf7† Kf8 9. Qd5 Nf6...のため必要。
※g6がなければNc6〜e6〜Bb4〜Nge7〜Ng6がおすすめ。


7. e5 Nh6 8. Bf4 0-0
9. 0-0 d6 10. exd6 exd6
11. Bxd6 Re8 12. h3 Nf5
=

7. 0-0 d6 8. Qe2 Nf6 9. Rd1 Bg4...はe5を突かせず黒良し。
黒はNf5〜Ne5が無理なら、h6〜Bd7〜Rc8などで待つ。

早いe5突きを取るとBf7†〜Qd5†の筋があり命懸けだが、
取らずにNh6から囲ってPawnも返してしまえば問題ない。



【c3: Alapin Variation】
1. e4 c5 2. c3 d5
…◇

c3と先に力を溜めると、Qxd5にNc3で先手を取れなくなる。
Nf6も普通だが、本稿では元気のよいd5を本線としておく。


◇…
3. exd5 Qxd5 4. Nf3 g6
5. d4 Bg7 6. Nbd2 cxd4
7. Bc4 Qc5 8. Nxd4 Nf6
9. 0-0 0-0 10. Re1 a6
=

黒は角を構えて待ち、kNightが動いてからcxd4を決める。
以下Bf1ならゆっくり指し、Bb3ならBg4で決戦も辞さない。


◇…
3. exd5 Qxd5 4. d4 g6
5. Na3 cxd4 6. Nf3 Bg7
7. Bc4 Qe4† 8. Be3 Nh6
=

Nc3が消えればcxd4とでき、Bxf7~Ng5の筋はNh6で防ぐ。
以下、Nb5〜Nc7にはRookを見捨てて大捌きに出る。


◇…
3. e5 Nc6 4. d4 Bf5
5. Bd3 Bxd3 6. Qxd3 e6
=

e5突き越しには、非角Bishop排出済のc5/d5/e6型に組む。
この好形に組めればフィアンケットするまでもなく満足だ。



【c4~g3: Botvinnik System】
1. e4 c5 2. c4 Nc6
3. Nc3 g6 4. g3 Bg7
5. Bg2 d6 6. d3 e5
=

恐らく白は Maróczy の専門家なので、Nc6~e5で全力妨害。
以下、Nge7~0-0~Be6と組めば容易に潰れることはない。

黒が主張を作りにいくなら途中a6〜Rb8でb5突きを見せ、
a4と受けてくればb4地点が薄くなって将来の弱点になる。



【b3: Queen's Fianchetto】
1. e4 c5 2. b3 g6
3. Bb2 Nf6 4. Qf3 d6
5. Bb5† Nbd7 6. Bxf6 exf6
=/+

Bb2先着にはNf6~d6(e5突きの防ぎ)で、0-0まで耐える。
Bb5†にNc6はe5~Bxc6†〜Qxc6†で困る。本譜が正解。



【b4: Wing Gambit】
1. e4 c5 2. b4 cxb4
3. a3 d5 4. exd5 Qxd5
5. Nf3 e5 6. axb4 Bxb4
=/+

駒を捌くための連続Pawn捨てだが、a3を取らずにd5が強い。
Qxd5がNc3で追われずに済む上に、次のQe5†を見て幸便だ。


~~~~~~~~~~~~


❸Nf3系統(含 Maróczy Bind)
1. e4 c5 2. Nf3 g6




【Bc4~c3: Pseudo-Alapin】
3. Bc4 Bg7 4. c3 e6
5. d4 d5 6. exd5 exd5
7. Bb5† Bd7 8. Qe2† Qe7
=

g6と形を決めたのを見てからの Alapin には注意を要する。
ただBc4型には例によって、e6~d5を狙う方針で問題ない。



【c3〜e5: Alapin Advanced】
3. c3 d5 4. e5 Bg4
5. Bb5† Nc6 6. 0-0 Nh6


最も手強いのは、単に白e5と突き越してBg7を弱める形。
d4が先だとQb6~Qb5で0-0を邪魔されるため本譜が自然。


7. d4 Bxf3 8. Qxf3 cxd4
9. cxd4 Nf5 10. Qd3 e6
11. Nd2 h5 12. Nb3 Be7


狭いので非角Bishopは即廃棄し、Nf5で弱いd4を狙う。
以下、Bd2にa6やKf8からc筋でよくわからない戦いが続く。



【Qxd4】
3. d4 cxd4 4. Qxd4 Nf6
…★

Nc6を後回しにしたので Bb5(Rossolimo)を回避できるが、
代わりにQxd4対策は必要。とにかくNc6でQueenを追う。

Nc6を防ぐ 5. Bb5 は a6 e5 axb5 exf6 Nc6で黒問題ない。


★…
5. e5 Nc6 6. Qa4 Nd5
7. Qe4 Nb6 8. Nc3 Bg7
9. Bf4 d5 10. exd6e.p. Bf5
11. dxe7 Qd7 12. Qe3 Nb4
13. Rc1 Nxc2† 14. Rxc2 Bxc2
=

Qe4に対する逃げ方は色々あるが、基本Nb6が安定した好形。
次は(8. Nc3以外なら即座に)d5突きを通して抑え込みを破る。

dxe7省略には0-0〜exd6だし、本譜の決戦も互角だろう。
(進行例は Bb5 Bxc3† Qxc3 Qxb5 Qxh8† Kxe7 Qc3 Be4...)


★…
5. Nc3 Nc6 6. Qa4 d6
7. e5 dxe5 8. Nxe5 Bd7
9. Nxd7 Nxd7 10. Bb5 Bg7
11. 0-0 0-0 12. Rd1 Qc8
=

先にNc3と構えてNd5を封じられる方が、黒にとって手強い。
Bd7にNxc6は取らずにQb6が良く、白は何を指しても手損。

途中Bxc6からのPawn損も、Rc8から手順に捌けて問題ない。



【Nxd4~c4: Maróczy Bind】
3. d4 cxd4 4. Nxd4 Nc6
5. c4 Nf6 6. Nc3 d6
…☆

Maróczy Bind の黒陣は狭く、NかBを約2組換えたい。
黒の強いkNightと白のダサいBishopを残すのが理想である。

Bg7よりNf6を急ぐのは、Ng4を見せてBe3を牽制する意味。
これでBe3の前に白Be2かf3かh3を指させる。(多いのはBe2)

※Nxd4に Nf6 Nc3 Nc6は即同桂が厭。bxc6はe5で逐われ、
dxc6もQxd8†から損な終盤になる(が指せないことはない)。


☆…
7. Nc2 Bg7 8. Be2 Nd7 =

黒はNd7~Nc5と角道を通し、黒枡を支配して戦うのが基本。
Nc2はkNight交換を避けた控え目な変化で、後のb4が狙い。

以下はBe3と自然に展開しようとした瞬間Bxc3と切り崩す。
Bd2で備えられたら、0-0 0-0 Nc5でBxc3~Nxe4を見せる。


☆…
7. Be2 Bg7 8. Be3 0-0
9. 0-0 Nxd4 10. Bxd4 Bd7
11. Qd2 Bc6 12. f3 a5
=/+

白としてはNc2と引かず、Be3で前線を支えにいく方が自然。
黒はBd7と組むならまず、Nxd4でNc2と引く順を消したい。

shin先生推奨のBc6型に組む予定ならBe3は上がらせて良く、
Bxd4にNd7で角交換を見せて、再びBe3と引かせれば良い。

Nd7~Nc5~e6(Nd5の防ぎ)~Be5(d-Pawnの守り)以降は、
Qe7~Rfd8と組むかQh4やf5で仕掛けて一局の将棋となる。


☆…
7. f3 Nxd4 8. Qxd4 Bg7
9. Be3 0-0 10. Qd2 Be6
11. Rc1 Qa5 12. Nd5 Qxa2
13. Nxe7† Kh8 14. Be2 Ng8
=

Be2かf3の直後、Be3の寸前にNd4で好形のBxd4を防ぎ、
Qd2と戻らせて一手得するのが Gurgenidze System だ。

黒はBe6〜Qa5〜Rfc3〜a6〜b5を通せば大体互角なので、
白はNd5やNa4とブツケるが、Qxd2(時々Qxa2)で難しい。

Qd3型にはNc5を当て、Qe3型にもQb6とブツケて戦える。
(Qd2にa5は b3! a4 b4 Be6 Rc1 Nd7 Be2...の評価次第)


☆…
7. f3 Nxd4 8. Qxd4 Bg7
9. Be3 0-0 10. Qd2 Be6
11. Rc1 Qa5 12. b3 Rfc8
13. Be2 a6 14. Na4 Qxd2†
15. Kxd2 Nd7 16. g4 f5
…〆

7. f3で黒a5に備え、本譜やRfc1/Rab1型が白の最強手段。
(1/2-1/2 Nisipeanu L - Khalifman A, Las Vegas 1999)

Be3をBg5に代えても、f6〜f5の二段突きで本譜に戻る。
(途中 16. Bxe7 b5 17. Nc3 bxc4...はBh6†が強く良し)

以下 exf5 gxf5 h3 Rf8 f4に b5 cxb5 axb5 Bxb5 Nf6...
や gxf5 gxf5(Rhg8 Kh8)Nc3 fxe4 fxe4 Nf6...で難解。



※参考資料
『Play the Accelerated Dragon』2014 Peter Lalić
『Starting Out: The Accelerated Dragon』2008 Andrew Greet
『Anti-Sicilians: A Guide for Black』2003 Dorian Rogozenko
『Shin Uesugi's Page』
『Chess.com』(解析)
『Pigeon Log』(図面作成)


※※次回『King's i-Fianchetto d4 d5』