片腕の無い男
テーマ:ブログ知り合いに、右腕の無い男がいる。
正確には、麻痺した右腕を持つ男。
彼は、数年前にバイクの事故で自分の右腕の感覚をすべて失った。
事故を起こした直後、病院で意識を取り戻した彼は、ほぼ右半身すべてが麻痺している状態だった。
燃えるような激痛の中、首を動かすことも出来ず、始めは自分の腕がもはや切断されていると思い込んでいたという。
数ヶ月経って、右腕以外は回復した。
歩くことも、しゃべることも出来た。
ただ、今まで当たり前に使ってきた右腕が、まったく動かなくなった。
その変わりに、痛烈な痛みが昼夜問わず襲ってくる毎日がやってきた。
始めは、そんな日々がまるで夢のようだったと言う。
右腕の無い自分が夢で、本当は今までどおりの健康な自分がいる。
しかし、夜中に激痛で目が覚めると、だらりとチューブのように伸びきった、自分の右腕がそこにはあった。
事故と現実の自分を受け入れるのに、数ヶ月を費やした。
ようやく受け入れることが出来るようになって、彼はまったく人前に出ることが出来なくなった。
自分の靴ヒモすら結べない。
彼は絶望の中に閉じこもった。
毎日毎日、部屋で涙がボロボロこぼれた。
元来、明るくて面倒見の良かった彼には、地元に大勢の仲間がいた。
仲間たちは、彼のことをひどく心配した。
時間は掛かったものの、仲間たちは彼を外に連れ出し、何かにつけては励まし、勇気付けた。
彼はそんな仲間達に感謝しながらも、人の助けなしでは生きていけない自分に、自信を無くしていた。
そんなある日、彼にとって大きな事件がおきた。
彼を励まそうと、昔の仲間が飲み会を開いてくれた。
昔馴染みの顔。
懐かしさと、嬉しさと、悲しさと。
宴は複雑な彼の心を揺さぶりながら終わった。
会計は割り勘。
でも、その頭数に彼は数えられてはいなかった。
ショックだった。
片腕の彼には仕事が無かった。
自分には、割り勘の金さえ払うことが出来ない。
このままではいけない。
彼の中で、何かが大きく動き出す。
助けられること、勇気付けられること。
涙が出るほど嬉しかった。
でも、自分がこのままでは、この先ずっと仲間達に心配ばかり掛けてしまう。
片腕の自分を雇ってくれるところなんて、ただえさえ無い。
でも、自分はもっと大きな人間にならなくてはいけない。
片腕しかないからこそ、普通の人間より大きなことをしなくてはいけない。
仲間達に、余計な気を使わせたくない。
絶望の中にいたあの頃には、二度と帰りたくはない。
現在、都内某所でバーを経営している彼。
彼の店は、彼やスタッフの陽気なキャラクターに魅せられたお客でいつも満席だ。
動かなくなった右腕を抱えながら、太陽のように笑う彼。
すげえなって思う。
僕は自分自身で壁にぶつかったとき、何かに悩んだとき、
一人で彼の店に行く。
そして、彼の凄さを目の当たりにする。
生きるということ。
何も言わなくても、彼は人に何かを伝えている。
そして僕は、決まって3杯の酒を飲み、その店を後にする。
自分もいつかなりたい。
誰かに何かを伝えられるような人間に。
いつかなりたい。















