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「友愛」って何?

鳩山由紀夫が民主党の代表に選ばれました。現在(2009・5・18)の世論の反応を見ると、鳩山由紀夫が次の日本国総理になる確率は、相当高いと思われます。

そ の鳩山由紀夫が標榜する「友愛社会の実現」という言葉に、違和感を感じる人は多いのではないでしょうか。友愛という言葉自体、それほど使われる日本語では ありませんし、一般的に何か良さそうなこと、正しそうなことを意味しているようではありますが、それだけに余計、政治家の使う言葉としては、警戒感を持た せるところもあります。

鳩山由紀夫のHP を 見ると、友愛社会の実現とは、無駄をなくして官僚から政治を取り戻す、信頼できる医療・年金を作り上げる、国民の可処分所得を増やす、ということのような のですが、それが「友愛社会」と言われると、そんなものかなという気にもなります。友愛などという言葉を持ち出さずに、似たようなことを言う政治家はいく らでもいるからです。

日本で友愛という言葉が政治に登場したのは、1912年の鈴木文治らが設立した友愛会に遡ります。鈴木文治がクリス チャンであったため、友愛会はキリスト教的な相互扶助を目的とした共済組合として発足したのですが、次第に労働組合としての色合いを強め、1919年には 大日本労働総同盟友愛会に、1921年には日本労働総同盟に改称されます。

しかし、鳩山由紀夫の友愛社会は、この日本での社会主義運動の 原点とも言える、団体活動に由来するのではなく、祖父で内閣総理大臣も務めた、鳩山一郎が掲げていた「友愛主義」に通じるもの、と言うよりそのまま引き継 いだものです。鳩山一郎は友愛主義の実現を目的として、1955年に財団法人の友愛青年協会 を設立しますが、この団体の現在の理事長は鳩山由紀夫です。

そ れでは、鳩山一郎はなぜ友愛などと言い出したのでしょうか。鳩山一郎は父親が弁護士で衆院議長、自身は東大帝国大学法学部を首席で卒業したと言われる秀才 で、父親と同じ弁護士からキャリアを始めました。エリートであることは確かですが、立場的には政敵の吉田茂が官僚出身なのに対し、政党人の代表とみなされ ていました。

鳩山一郎も友愛会の設立者の鈴木文治と同じクリスチャンで、友愛という言葉を使うのも、それが基礎になっていることは確かで しょう(鳩山由紀夫は夫婦ともクリスチャンでないと明言しています)。しかし、鳩山一郎が友愛という言葉に思い入れをしたのは、それだけではありません。

鳩山一郎のフリーメイソンへの傾斜

鳩山一郎は、クーデンホーフ・カレルギーの「自由と人生」に感銘を受け、その中で友愛思想、友愛革命に触れたと述べています。鳩山一郎は、その後同書の共訳者にも名を連ねています。

クーデンホーフ・カレルギーは、オーストリア・ハンガリー帝国の伯爵で外交官でした。彼は1894年に同じ外交官の父と、日本人の青山光子との間に東京で生まれ、1972年まで生きます。ちなみにゲランの香水Mitsukoは、この母親の名前に由来しています。

クー デンホーフ・カレルギーの母国のオーストリア・ハンガリー帝国は多民族国家ですし、父親は16ヶ国語をしゃべったと言われています。外交官としての職業 や、自分がヨーロッパ人とアジア人の混血であったということもあったのでしょう、クーデンホーフ・カレルギーは、国境を超えた、人々の友好関係を作る必要 性を強く意識します。そして、クーデンホーフ・カレルギーは、現在のEUの思想的原型となる汎ヨーロッパ主義を唱えます。

つまり、クーデ ンホーフ・カレルギーにとっては、友愛とは一般的に「みんな仲良くしよう」というレベルの話ではなく、二度の大戦で徹底的な破壊と数千万の犠牲者を出した ヨーロッパに恒久的な平和をもたらすために、是非必要なものだったのです。そのクーデンホーフ・カレルギーは、1920年にウィーンのフリーメイソンの ロッジに入会し、フリーメイソン の会員になります。そして、友愛こそフリーメイソンの土台となる信条なのです。

鳩 山一郎は1955年、占領軍の後押しを得て日本で活動を開始した、フリーメイソンに入会します。鳩山一郎がクーデンホーフ・カレルギーを尊敬していたこと は、大きな影響があったと想像されますが、戦後日本を占領したアメリカ軍には総司令官のマッカーサー元帥をはじめ、多数のフリーメイソンの会員がいまし た。鳩山一郎は、特に抵抗感もなくフリーメイソンの会員になったのでしょう。

フリーメイソン陰謀論

ところが日本でのフリーメイソンの印象は、あまり芳しいものではありません。大部分の人は「よく分からない。よく知らない」というレベルでしょうが、わからなさ自身が得体の知れない、不気味さにつながるものがあります。

さ らに、日本でフリーメイソンが語られる時に典型的なものは、フリーメイソンが世界征服を企む、世界規模の大陰謀組織だというものです。フリーメイソンの世 界征服の野望は、ユダヤ人の陰謀論と組み合わされることも多いのですが、これらはほとんど、ナチスドイツが、英米はユダヤ人、フリーメイソンに支配されて いると主張したときの、資料に大なり小なり基づいています。

実際のフリーメイソンは、当ブログ「フリーメイソン 」で書いたように、今ではロータリークラブやライオンズクラブ的な親睦団体になっています。このような認識は、イギリスやアメリカの知識人は常識として持っていることです。

ところが、ややこしいことに、フリーメイソン陰謀論や、カルト集団扱いの論調も、日本ではなくアメリカやヨーロッパに元を発しています。フリーメイソン陰謀組織論を、海外資料を多数引用しながら行うことも、簡単にできるわけです。

フ リーメイソンは、本来は知的エリートや新興の資本家たちが体制派の貴族や教会に対抗して、自由や博愛といった、当時の先進思想を語るために作ったもので す。組織が半ば子供じみた秘密主義を持っていたため、世間から不審感を持たれたり、特定のグループが本当に陰謀、革命の道具に使うことはあったでしょう が、本質ではありません。

今の日本ではフリーメイソンに対する見方は、鳩山一郎が会員になった時より、カルト集団的な印象はむしろ強く なっているでしょう。ネットの世界では色々憶測が流れるものの、鳩山一郎以来、有名人で公然とフリーメイソンの会になっている人はいません。もちろん鳩山 由紀生もフリーメイソンの会員ではありません(こっそり会員になっているという人はでてくるかもしれませんが)。

鳩山由紀生のアキレス腱?

い くら、公式には鳩山由紀生がフリーメイソンではなくても、標榜している友愛という言葉が、フリーメイソンと密接に結び付けられている以上、政治的にフリー メイソンの悪名を、鳩山由紀生の攻撃に利用することは、今後いくらでも考えられます。これは友愛という言葉を、もともとクーデンホーフ・カレルギーやフ リーメイソンが使ったのとは、ほとんど無関係な文脈で使った鳩山由紀生自身に責任の一端があるとも言えます。

もっとも、鳩山由紀生が外国 人の参政権に容認の態度を取っている(これは保守派から猛烈な反発を受けていますが)のは、クーデンホーフ・カレルギーのEUにつながる汎ヨーロッパ主義 の影響を受けていることはあるかもしれません。ただ、これも表立って主張することは大きな論争を引き起こすものです。

日本の保守派は櫻井良子をはじめとして(櫻井良子反中論の論理と非論理 )として陰謀論の大好きな人たちがたくさんいますから、フリーメイソンとの関係は控えめに考えてもプラスに働くことはないでしょう。いずれにせよ、友愛とフリーメイソンの結びつきは鳩山由紀生のアキレス腱になる可能性は否定できません。

しかし、鳩山由紀生が総理になって、どのような政治を行うにしろ、それがフリーメイソンとの関係で、「アメリカの操り人形」とか「ユダヤ陰謀の手先」として語られるとしたら、これほどバカげたことはありません。日本人がそれほど愚かではないとは思うのですが。

こういうテレビキャプチャーが・・

鳩山由紀夫

民主党といえば有名なこれで

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