氷室京介の代表作として、ファーストシングルでありライブの定番曲として知られる「ANGEL」がある。
この曲、氷室が一番大事にしている曲であり、キャリアを通じて様々な変遷をたどっている。
この記事では、ANGELという曲を通じて氷室京介のキャリアをあぶりだす事を目的としている。
ま、堅く考えないでいろんなANGELを比べてみましょうかね。
1.ファーストシングル「ANGEL」
BOφWY最後のアルバムとなったPSYCHOPATHを発表した前後または解散宣言を行った1987年12月24日以降に作られたと思われる。
この曲に掛ける思いはひしひしと感じる。
BOφWY時代には考えられなかった詞の世界。
「臆病なオレを見つめなよANGEL 今飾りを捨てるから
裸のオレを見つめなよANGEL・・・」
BOφWYでは自らのスタイルを確立することに懸命で、いわば「カッコつける」ことに命を懸けていた氷室。
しかし自身のキャリアをスタートするに当たり、虚像であるBOφWYの氷室京介像を壊すことに力を傾けていたことがわかる。
ボーカルも、BOφWY時代にはほぼ1発録りで済ませていたという驚愕の事実があるのだが、この曲のボーカル入れではかなりの時間を掛けたと思われる。
しかし今聴いても凄まじいボーカルだ。
氷室の伝説に、レコーディング時にブースのガラスを通じて外まで生声が聴こえていたというものがあるが、この音源を聴くにそれが真実ではないかと思わせる。
後にANGEL2003レコーディング時に氷室はこの音源を聴いて「すげえな、昔のオレ」と思ったとの事だが、まさに若さ溢れる(当時27歳)氷室の魂の叫びを感じられる。
レコーディングにはベースかつプロデューサーの吉田健を中心に、ドラムにセッションドラマーとして知らない人はいない村上ポンタ秀一、そしてギターにはゲストとして当時彗星のごとくロック界に現れた新進気鋭のギタリスト、チャーリー・セクストンを迎えている。
今聴くと多少の古さを感じないでもないが、それ以上にフレッシュな音作りが氷室の生まれたてのスターとしての輝きを真空パックのように記録することに成功している。
ところで上記のサビの後、なにやら不明瞭の英語を氷室が歌っている。
恐らく仮歌入れの時に入れていた偽英語のフレーズが残ったものだろうが、ネット上でいろいろな解釈がされている。
有力なのは 「Well... Darling is Cool」。
なるほど、と言えなくもない。
しかし私には「Too Duty, Too Cool」に聴こえて仕方がない。
ちょっと小悪魔で下世話なんだけどカッコいい、という氷室のBOφWY時代によく描かれていた女性像を連想させるのだ。
そんな女性像を「ANGEL」というイコンになぞらえ、自らのソロアーティストとしてのアイデンティティーを声高に歌う氷室が想像できる。
(つづく)