1/25(金)、再びチェンマイで乱入を敢行した。
場所はパブ・レストラン「LOVE ACTUALLY」。
名前が何ともいえない違和感をかもし出しているが、一応ちゃんとしたところであった。
しかしながら客が少ない。場所がピン川というチェンマイ中心街を流れる川沿いにあるのだが、
若干中心より離れているため、他の店に客を取られているようだ。他の店が閉まる深夜0時ぐらいから
やっと客が増えてくるとのこと。で、自分たちが行ったのは夜10時頃。いわゆる箱バンといわれる
専属バンドが演奏していた。そのバンドのギタリストが、今回紹介してくれたRyuの店の客である。
そいつらがやっていたのは、タイ人が好むゆったりとしたリズムとほんわかとしたメロディの「スローロック
であった。タイ人をはじめとする東南アジアの人々は、主にこうした気の抜けたようなロックを好む。

かつて自分がフィリピンやマレーシアに行った時にも同様であった。そしてそれらの国で一部の若者は
スローロックに対するカウンターカルチャーとしてヘビーメタルを信奉する傾向にある。
タイで練習スタジオに入ると、隣でデスメタルやスラッシュメタルをやっていることが多い。
そして多くのスタジオではドラムにツインペダルが備え付けてある。ツインペダルを買えないドラマーが
多いからだ。こういう所にも経済格差が表れている。ついでに書くと、楽器類はやはり日本が一番
品揃えもいいし、良く売れる。それだけお金を持っているということだ。

客わずか10人程度の中、演奏を始める。前回と違って場所自体が大きいからか、リバーブがかかった
音をしている。ただモニターの返しが無く、ドラムの場所では自分の声が聞こえにくく歌いづらかった。


最近ではシンガーはイヤーモニターを使うケースが多い。ワイヤレスでバンドの演奏および自分の声を
直接耳に返してもらうことで、正確に歌うことが可能となる。またステージ上にモニター音を返すことで
ハウリングが起きやすくなる。なぜならモニターの音をマイクが拾ってしまうからである。
先日行われたレッド・ツェッペリンの再結成ライブ音源でも、最初はモニターのレベルおよびPAの
バランス調整がうまくできていなかったため、ハウリングも多く楽器類の音の分離が悪かった。

演奏自体はまずまずの出来。ギターのチューニングが甘くPooもミスも少し目立ったが、全体的には
サウンドもまとまっているしリズムも悪くない。しかしやはり客が少なすぎる。しかも自分たちの
やっているようなテンポの早いロックはタイ人には受けが悪い。そんな彼らに気を遣ってスローな
ジミヘンの曲「Hey Joe」やBBAのバラード「Sweet Sweet Surrender」を入れてみた。
後者はRyuがボーカルを取り、自分は裏声でコーラス。Ryuはボーカルとしてステージに立った経験が
ほとんど無いため、まだ発声が足りず声の通りが悪い。今後いろいろな場所で演奏するときに
選択肢が増えたということで。また自分も少し喉を休ませることもできる。Ryuにはもっと歌って欲しい。


結局前回の乱入で演奏した2曲にこれらを加えた4曲、17分の演奏時間となった。

音源は下記の通り。(演奏順)


08-1-25_All_Along_The_Watchtower.mp3
08-1-25_Hey_Joe.mp3
08-1-25_Sweet_Sweet_Surrender.mp3
08-1-25_Freedom.mp3


まだまだ不完全燃焼である。もっとできる。もっと凄いプレイもできる。この2回でわかったこと。
それは自分がサウンド全体をちきんと把握できていること。そして冷静に自分のプレイをコントロール
できること。いくら熱くなっても、逆に冷めてしまっても、それなりのレベルを保ったプレイができる。
今のメンバーの良い点、悪い点もよくわかる。

Pooは熱のこもった凄まじいギターを弾くが、冷静に状況を判断しプレイをコントロールする力は
弱い。曲構成もしっかり覚えることができず、ついつい弾き過ぎてしまう。これはドラマーとギタリスト
のキャラクターの違いも関係しているだろう。つまりギタリストはリズムの上に漂ってソロを弾いたり
カッティングをかましたりする一方、ドラマーは曲を成り立たせるために曲構成を覚えなければ
仕事にならない。また、自分はボーカルも取っているので必然的に曲構成はしっかり体に
入れておかねばならないし、ドラムも歌もどちらにも気持ちを入れなければならない。
もちろん肉体的には大変ではあるが、得るものも大きい。

Liamはテクニカルなベーシストではない。特に派手なプレイをしたりハッとするようないいフレーズを
弾くわけでもない。しかし堅実なプレイが出来る。何より弾き過ぎない。自分のドラムとの相性も
良い。自分は感情を結構ストレートに出すドラムだと思うが、彼のベースはシンプルなので
たとえ自分のドラムが感情にあわせて前のめりに突っ込んだり逆にタメを作ったりしても一定のリズムを
キープしてくれる。その結果、サウンドのバランスが保たれ、リズムが安定する。その上で弾きまくる
ギターも映えるというわけだ。

ともかく乱入には成功。Pooがオーナーと話した結果、また演奏しに来ても良いとのこと。
まぁ他にいい場所があればそこを優先するけど、とりあえず場所を確保できたので良しとしよう。

終了後、ライブに一緒に来ていたLiamの彼女とみんなで外国人がよく集まるレゲエパブに行った。
そこではドラム・ベース・ギター兼ボーカルのトリオバンドが演奏していた。ドラムはタイ人、あとは
外国人だ。彼らの演奏はまずまずだったが、客たちのノリが凄い。狭い店内で踊りまくり。
日本人の女性たちいたが、彼女らも大騒ぎ。ただPooいわく「チェンマイにくる日本人女性に
キレイなやつはいない。キレイなやつはヨーロッパに行くもんだ。アジアに一人で来るようなのは
変わったやつが多い」だそうだ。自分はノーコメントにしておくw

やはり演奏力を高めるだけでなく、自分たちの音楽をちゃんと受け入れられる人たちがいる場所を
見つけるのもすごく大事なことだ。今回の乱入でいい勉強になった。
次回はどこに乱入しようかな?


<追記>

ギタリストがこの記事を読んで「おまえオレの名前を使って持論を書くな卑怯だ」とのたまったw

また、やはり実名だと営業にさしつかえる危険もあるので(ホンマか?)一応名前を変えて

Poo(プー)にしといた。クレームは受け付けません。

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乱入計画

テーマ:

今晩、チェンマイのとあるパブに飛び入りライブを計画中。

ギターのRyuはギター屋を開いているのだが、客にそこでいつも演奏している人がいた。

彼曰く、たぶん行けば飛び入りさせてもらえるとのこと。

現在ギター屋で待機中。あと約1時間半後に乱入に出発する予定。

乞うご期待!

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記事下書き時刻 1/23 午前1:50

たった今飛び入りライブに成功しゲストハウスに戻ってまいりました。
場所は「THE NORTH GATE」というパブ。

THE NORTH GATE

午後9:50分頃到着した頃には、すでにジャズのジャムセッションが始まっていた。
サックスやトランペットが鳴り響き、ドラムは4ビートを刻む。
狭い店で、客は30人くらいだが満席。店の外にも少し人があふれている。
ほとんどが欧米人だ。タカアンドトシがいたら「ここは欧米か!」と突っ込んだだろう。

プレイしているのも欧米人がほとんどだが、キーボードは日本人ぽい。白髪の中年だ。
そして奥の方ではみすぼらしい浮浪者風の格好をしたおっちゃんがパーカッションを叩いている。
よく見るとこいつも日本人ぽい。しかし怖いので話しかけることはしなかった。
ドラムを見ると何と女性が叩いている。タイ人ぽい。さほど上手くないが、ジャズは叩き
慣れているようで、落ち着いた印象だった。さほど美人でもないが、カンケーネー。
長いセッションの間にベースのリアムが店の人に交渉し、2曲だけ演奏できることとなった。
タイのSINGHAビール(小瓶)を2本ラッパ飲みして出番を待った。

するとプチハプニング。ジャムの途中で観客の一人がギターを弾きたいとのことで、
ギタリストのPooがギターを貸した。そして店のアンプに繋いだらずっとハウリング音がする。
どうやらアンプの故障のようだ。この店では恐らくほとんどギターは使わないので誰も
気づかず直していなかったのだろう。出番の前に気づいてよかった。
急いで車でPooの店に戻り、アンプを持ってくる。近くてよかった。

そしてついに出番。
ロックをやるにはちと場違いではあるが、当たって砕けろだ。
店の人は「お願いだからあんまりうるさくしないでね」と注意する。
わかってる、わかってる」と応えながら「ちっ」と心の中で舌打ちする。
わかったよ。音量をコントロールするぐらいのテクはある。やってやろうじゃないか。

ドラムセットはジャズらしくシンバルはクラッシュとライドの2枚のみ。
タムもバスドラも口径が小さく、響きはそれほど深くない。
大学時代から使っているスネアをセッティングすると、どうもタムと共鳴してスナッピーが
ジャラジャラ鳴ってしまう。あわててその場でチューニングを変える。
ヘッドを少し強く張って、ピッチを高くするといいバランスになった。
ペダルも昔から使っているやつだ。普段は裸足になるけど今回はその暇が無かったので
運動靴でやる。自分のポリシーとは違うが、仕方が無い。
ステージが狭く楽器を置き換えるだけでも大変なのだ。それにマイクスタンドがなかなか
遠くて、ギリギリ首を左に曲げきって届く距離にセッティングするしかなかった。
悪条件ではあるが、それは場数をこなしてきたから大丈夫。比較的落ち着いていた。

2曲ということなので、大したことはできない。しかもミスしたら終わり。
だから1曲目は3コードの「All Along The Watch Tower」にした。

08-1-22 All Along The Watch Tower.mp3
ダウンロード用リンク

ギターのPooはテンパって勝手にリフを弾き始める。無理についていかずに「やんの?」
と聞き返すと、少し気持ちに余裕ができた。
気を取り直してスタート。テンポはいい感じだ。
ハイハットをあまりラウドにせずに、ショットはあくまでもスティックを打面に落とすような
感覚でやる。シンバルが少ないので派手なプレイはそんなにできない。
バスドラも足をペダルに落とす感覚でやれば問題ない。
途中やはり昔からのクセで、ライドを叩き出すと少しハシッた。
しかしイントロから観客の歓声が上がったのにはちょっと驚いた。みんな結構ノッてくれたようだ。
これだよ、これ。自分が求めていたものは

気持ちよく1曲目を終え、2曲目は「Freedom」。

08-1-22 Freedom.mp3
ダウンロード用リンク

事前にちゃんと打ち合わせはしていなかったため、心配があったが、それなりにこなせた。
アウトロのキメはちょっとアヤシイが、なんとか完奏できた。
歌詞もほとんど間違えずに歌えた。声は事前に何も発声練習していなかったにもかかわらず
声量も安定して、マイクとの距離感も問題なかった。
スティックを回したり腕を振り上げるなどの視覚的要素で客を煽ったりもした。
たった2曲、正味7分強だったが、今のメンバーでの初めてのライブは無事終了した。
願わくばもっと長い時間やりたかったが、それは次回に持ち越しだ。
何でも最後店の人に聞いたのでは、サックスやトランペットなども入ってきてジャムれるような
曲にすれば、長い時間できるとのこと。
ちっ。知ってたらジミヘンの「Who Knows(『Band of Gypsys』収録)」をやったのに。
まあいい経験になった。

自分たちの出番が終わった後もジャムセッションが続いたので、何とか参加できないかと
機会をうかがっていた。しかしドラムはすでに埋まっている。ラテンジャズみたいな曲になり、
ギターのRyuが途中で勝手にギターをアンプにつないで参加しやがった。
自分も音楽に乗せられて、うずうずしてきた。ドラムが無理ならパーカッションで、という訳で
前日に実家から届いたばかりのカウベルで乱入。ボンゴを叩いている欧米人に絡んで
ファンキーなビートを叩く。するとその前にドラムをやっていたスイス人のおっちゃんも
カウベルを出してきて乱入。トランペットもサックスもスキャットもそれぞれにソロを取り、
ついにPooの番が来た。

しかしPoo、目をつぶってカッティングをしながらトランス状態
MC兼サックスが苦笑しながらアナウンスをし、やっとこさソロを弾きだしたRyu。
なかなかよいソロだ。奴は曲の構成とかを覚えるのは苦手だが、本能のままに弾かせると最高だ。
何だか音が1つのうねりを生み出し、ハイになっていく。やってて気持ちよかったし、
聴いてるほうもトランスがかっていた。録音しなかったのが残念。
そしてついに終了。エンディングはサックス類が伸ばしに伸ばしてこれでもかと言わんばかりだった。

ジャムに参加していたみんなと挨拶を交わす。これだね。音楽があればすぐに通じ合える。
キーボードの日本人は自ら声をかけてきた。バンコクに住んでてチェンマイによく来ているそうだ。
パーカッションの日本人浮浪者とは言葉を交わさなかった。何か危ないので。
でも結構まともなプレイをしてたぞ。音楽はわかっている様子だ。見た目60歳以上で
Pooに「10年後あんたああなるよ」と冗談で言ったらまんざらでもなさそうだった。アブね。

お次は金曜日。チェンマイのナラワット橋近くの教会の隣にあるライブハウス?だ。
夜9:00ぐらいから深夜1:00までやっていて、Pooの友人の話によると乱入できそうだとのこと。
ああ、乱入がクセになりそう。ではこれにて報告終わり!



バンド紹介


左 LIAM(ベース)
右 Poo(ギター)
中 タイマイ(ドラム兼ボーカル)
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ライブ!

テーマ:

こんばんは。

あと約1時間後にチェンマイのとあるジャズパブにて行われる「ジャムナイト」に飛び入り参加してきます。

普段はジャズをやっているところなんですが、毎週火曜日はロックやブルースも演奏しているとのこと。

さっき店に行って確認したら誰でも来ていいよ、とのことなので、メンバーみんなで乱入してきます!


あ、バンド名ないや。

BOφWY『GIGS BOX』

テーマ:
“GIGS”BOX


アメブロで音楽記事を書くようになって久しいが、氷室京介のソロ活動について書くことはあっても
自分がバンドを始めるきっかけになったBOφWYについては意外と書いていない。
そして今回アメブロがスクラップブックを終了させるということで、どうしても終わる前にこのスクラップ
ブック「BOφWY」に記事を書いておきたいと思う。その理由の1つは、このブックを立ち上げた
hiderock さんの存在である。彼はいつも自分の書く氷室記事に「Good!」を下さる。
それがどれだけ励みになっていることか。
自分もスクラップブックのBOφWY記事をよく拝見している。
でもなぜか遠慮してコメントを書いたりGood!したりということからは遠ざかっていた。
その自分の心の壁を破って今回は思いっきり書いてみたい。
ネタバレが相当あるので、読む方はそのつもりで。


まずはこの『GIGS BOX』に対するファンの反応について。
以前からBOφWYの未発表映像についてはネットに流出していたり、海賊盤が出回っていたりして
ファンの間では正式なリリースを求める気持ちが強かった。
そして元BOφWYのマネージャー土屋浩氏らスタッフの力もあり、今回のBOXセットの発売が
決定した。ファンは当然のごとく上記のような映像の多くが収められると思い、期待は高まった。
しかし詳細が明らかになるにつれ、既存の映像も多く含まれ、貴重な映像の多くは含まれない
ことがわかると、ファンからの厳しい意見が多く聞かれるようになった。そしてそれは、過剰だった。
土屋氏のブログにはBOφWYとは関係ない記事にも荒らしのように抗議や誹謗中傷のコメントが
連日寄せられたのである。そして土屋氏は、ブログを閉じた。

確かにこのBOXセットについては、自分も不満はある。内容の割りに値段も高い。
豪華なパッケージングを削ってでも値段を下げて多くの人が手に入れやすいようにするべきだったと
思う。また貴重なライブの多くが完全収録されていないことも不満の1つである。
噂によると、BOφWYとして最後に行われたライブ『LAST GIGS』の完全版がこの4月に発売される
可能性があるという。この『LAST GIGS』は2001年に初めてDVD化され、国内の解散したバンド
としては異例の大ヒットを飛ばした。しかしそれは1988年にリリースされたCDの曲順、つまり
完全版ではなくダイジェストだったのだ。自分は『LAST GIGS』を大学時代に後輩から借りて
見ていたし、ネットでも手に入れていた。最終日の全曲が収録された完全版だ。
アンコールで氷室が涙声でMCするところも、メンバー一人ひとりに花束を捧げるところも、
全部知っている。日本のロック史上に残る名ライブ。ただ単純にBOφWYの映像としてだけではなく
後世まで伝えるべき歴史としてこのライブは完全版として正式にリリースされるべきものである。
解散宣言の『1224』と同様に。

8枚組BOXの8枚目に、BOφWYのブレイク前の貴重なライブ映像が収録されている。
新宿ロフトでのパンキッシュな時代のライブ。ジミ・ヘンドリックスらが出演したあのロンドン
マーキークラブでのライブ。それらがダイジェストで収められている。
この8枚目は非常に出来が悪い。というのは、スタッフ側の思い入れが大きすぎて、過剰な演出・
編集がされているからである。BOφWYの本当の姿を伝えたければ、余計な虚飾をはずして
生のライブを見せるのが一番である。彼らがかつてステージでそうしてきたように。
そしてエンディングロールの最後に、1986年の武道館公演など今回収録されていない貴重映像が
ほんの少し出てくる。いかにも「まだまだネタはありますよ」と言わんばかりに。
いずれそれらの映像もDVD化、またはブルーレイ化して(東芝の流れがあるからHD DVD化?)
リリースされることであろう。
そうした切り売り商法が、ファンの批判の対象になっている。

しかし自分から言わせてもらうと、ずいぶん贅沢な批判である。
なぜなら海外ではLED ZEPPELINといういい(悪い?)例を知っているからである。
ハードロック史上最強のバンドである彼らの活動は1968~80年の12年間。
メンバーの死により解散を余儀なくされたのだが、解散後のリリースは徹底的に残ったメンバー
によりコントロールされた。彼らの残した音源・映像は無数の海賊盤として出回っているが、
公式にリリースされたのはBBCラジオのライブ音源、初期のアメリカツアーの音源、そして
2枚組のDVD。それも1枚目はフルレングスのライブだが2枚目は貴重なライブのダイジェスト。
それでも世界中のファンを狂喜させた。これまで待ちに待っていた映像だからだ。
しかもその内容は期待を裏切るどころか、伝説を裏打ちする凄まじい演奏であった。
こうしたリリース・コントロールによって彼らの神話は今も保たれているのである。
そして昨年12月には再結成ライブを行い、素晴らしいパフォーマンスで神話を守った。
まあZEPの場合ベスト盤は多く出すぎだけど、その時代時代で新たなファンを生み出すためには
必要なのかもしれない。

同じく海外の例になるが、ジミ・ヘンドリックスは全く逆である。
生前残した音源が多くオフィシャルとしてリリースされているが、質が悪く手に入れるだけ金の無駄、
マニア向けの海賊盤まがいのものばかりである。それは彼が黒人だったことも関係している。
生前彼にむらがる白人たちが彼をドラッグ漬けにし、不利な契約を次々と結んでいったのである。
その結果、遺族がコントロールできないまでに彼の作品は溢れ、かえって本当の彼の姿を伝える
のを難しくしているのだ。質のいいライブ作品もあるが、彼の残した音楽界への貢献に比べれば
その評価はむしろ小さすぎると言っても過言ではない。

BOφWYについても、いろいろな批判はあれど、一応のリリースコントロールがされているのは
評価されるべきだろう。BOφWYから影響を受けた日本のミュージシャンは数知れず、その存在
自体が伝説あるいは神話となっている。それはメンバー自身の想像以上のものだ。
そして昨今のレコード業界の不況。デジタルコンテンツへの移行もまだまだ時間のかかる現状で
既存の販売形態の範ちゅうでいかにレコード会社ならびに著作者の権利および利益を守りつつ
伝説を伝えていくかという難しい瀬戸際で、このBOXはとにかく日の目を見ることができた。
それだけでもありがたいというものである。

ぶっちゃけ、ソロ活動が順調な氷室と布袋はともかく、インディーズに下った松井常松とDe+Lax
を再結成したりしてドラムを叩き続けている高橋まことは、BOφWYの印税がかなりの助けに
なっていることだろう。ベスト盤や『LAST GIGS』に「Dramatic? Drastic!」が収録されているのが
象徴的である。なぜならこの曲は高橋まことが唯一作詞を手がけた作品で、正直この曲以上に
BOφWYにとって重要かつ人気のある曲があるにもかかわらず収録されている。
彼に印税を落とすためだと考えざるを得ないだろう。BOXに先駆けてリリースされた2枚組のベスト
のタイトルもこの曲から取られていた。このベスト盤は、自分にとっては全く意味の無いものだった。
BOφWYの音の変遷を全く無視した選曲、リマスターで少しばかり音を良くしただけのもの。
しかもBOXの発売を直後に控えながらもそれを公表する前のリリース。BOXの存在を知ったら
買い控えたであろうファンは大勢いるだろう。これに関しては全く弁護の余地が無い。
これを許可したメンバーはカッコ悪い。まぁ契約に入っているのであれば仕方ないが、
このリリースがBOXに対するファンの過剰な反応の遠因になったのではないか。
それぐらい納得のいかないベスト盤である。「THIS BOφWY」だけでベストは十分だ。

では、BOXの内容に移ろう。
1~3枚目は1987年夏に行われた「CASE of BOφWY」というスペシャルライブの完全版である。
正確に言うと、このライブは2箇所で2回にわたって行われているので、「完全」ではない。
しかしとにもかくにも未発表であった曲が収録され、このライブの全貌が明らかになった。
特に「16」「Oh My Jully Part 2」など初期の隠れた名曲が発表されたことは大きい。
1987年は彼らが解散を既に決めていた時期で、このライブも記録的な意味合いが強かった。
メンバーも当初はなぜ昔の曲をやるのかと異論があったという。それを説得したのも土屋氏である。
このライブが当時4本組のビデオでリリースされ、それぞれが安価であったことがファンの手に
BOφWYの姿を届きやすくしたのは言うまでもない。この販売戦略は非常に効果的で、自分も
このビデオでファンになった一人である。彼らの生の魅力がパッケージングされた素晴らしい内容
である。
上記の初期作品を、すでにバンドサウンドが熟成した87年に演奏したのも大きい。
タイトで、洗練されていて、今聴いてもフレッシュな印象を与える。この作品がきっと後々にも
新たなファンを生むことになるだろう。
しかしそれならBOXじゃなくて別リリースでもいいのではと思う。まあ以前に中途半端に2枚出した
からしょうがないけど。この「完全版」はCDでもリリースされ、3枚組である。DVDもそのCDに
合わせてなのか、3枚目。しかしこれはちょっとどうか。なぜなら2枚目以外片面1層で、しかも
3枚目などはアンコール分、約20分しか収録されていない。このスペースに未発表の映像など
入れられるはずである。これでは単なる枚数かせぎと批判されても仕方が無い。
またMCのほとんどがカットされているのは納得できない。時間は余ってるだろうが!!
おまえらライブでMCを楽しみにしたことはないのか!?
いかんいかん、結局批判してしまってるw

4枚目は同じく87年に行われた「BEAT CHILD」というイベントへの出演時の映像である。
このライブこそ、伝説のライブと言える代物。自分は雑誌でこのライブのレビューを読んでいたが、
今回初めてそのライブの全貌がクリアな映像で明らかになり、その凄まじさに息を飲んだ。
8月の終わり、熊本の阿蘇で行われたこのイベントは台風の接近による雨にたたられた。
BOφWYが出演時にそれは豪雨と化した。1曲目のイメージ・ダウンでまず氷室がいきなり
マイクスタンドからマイクを奪い去ろうとしてマイクがすっぽ抜ける。
立てた髪の毛は3分でへたんとなり、氷室はそれなりに見れるが布袋はただの落ち武者と化す。
布袋がギターソロで足を滑らせステージ上で転倒する。それでもギターは弾いたまま。
雨の影響でワイアレス電波が届かずギターの音が途切れ途切れになる。
ベースの松井は雨の中微動だにせずダウンを刻み続ける。
ドラムのまこっちゃんはPAの不調かスネアの音がキンキン鳴りながらもパワフルに叩き続ける。
氷室は雨の中息が苦しそうになりながらも、完璧な音程を維持する。
それどころか、雨を利用してマイクをスライディングしながら取ったり、MCでは「大丈夫か?」
「足元はぐちょぐちょだろうけど・・・」「(機材の不調に)悪いな」と、全く悪条件を言い訳にしない
すさまじいパフォーマンスを繰り広げる。布袋らメンバーも触発されたのか、キレにキレた演奏。

途中、さすがの氷室もこの悪条件で肉体的に弱ったか、思わず本心を明らかにする場面がある。
それは「Dreamin'」のMCの際。「4人それぞれも成長して考えることもあって、何が夢なのか
正直わからない」という、解散を意識しているとしか考えられない発言をしている。
そう、すでに87年はBOφWYは解散を決めていた時期で、氷室はツアーを続けながらも
オーディエンスに「また来るぜ」とウソをつかなければならないことを悩んでいたという。
自分の心に正直であるためにバンドを結成し、そして解散させる。つかんだはずの夢が
崩れ落ちていく刹那。そのギリギリの中で歌い、演奏し続けたBOφWY。
彼らの美学がこのディスクにつまっている。このライブが見られただけでも、BOXを手に入れた
価値がある。そしてこのライブ単体でのパッケージングではリリースは難しいということも容易に
想像できる。このライブの発掘についてはスタッフに大いに拍手を贈りたい。

5枚目はロックステージ新宿。現在の東京都庁のある土地で行われたライブイベント。
これも雨にたたられながらの素晴らしいパフォーマンスである。逆境に強いバンド、BOφWYの
面目躍如である。しかしながらこれも完全収録ではない。
吉川晃司を迎えた「1994-Label of Complex」も無いし、山下久美子らのバックをBOφWYが
務めた映像も収録されていない。まあ、高橋まことの著書「スネア」によればBOφWYの解散の
真相は布袋が山下久美子のツアーバンドに松井とまこっちゃんと迎え、氷室抜きのBOφWYに
しようとしていたためだったことを考えれば、収録されるわけは無いか。

6枚目は2001年にNHK BSで放送された「BOφWY PERFECT LIVE~FINAL伝説」そのまんま。
この番組には貴重なライブ映像が収められており、これが全て完全版で見られることをファンは
期待していたのだ。しかしそれがこういう結果になったことを嘆く気持ちはわからないでもない。
日比谷野音でのライブで氷室が歌詞を間違え自分の頭をポコポコ叩くシーンとか、
初めての渋谷公会堂でのライブで花火とともにヤンキーくずれの氷室がジャンプして登場する
シーンとか、いわばダサい場面が多く、そのためメンバーが公開を許可しなかったのかもしれない。
しかし、そうだとしたら自分は中指を彼らに立てたい。
もともとパンクなんだろ?と小一時間問い詰めたい。守るものなんて何もないじゃん。
もしかしてLAの豪邸かい?今のイメージかい?自分の誤解であることを祈る。

7枚目はこれまた87年の北海道と86年と87年の仙台のイベント出演時の映像。
北海道の方は、正直あまり大したパフォーマンスではない。氷室は必要以上にテンションを
上げようとしてから回りしている。すでに解散に向けてひた走っていたバンドの状態を表すように
なにやらギクシャクしたような印象を画面から受ける。
最後、氷室は「また来るぜ!」ではなく「また来たいと思います」と発言してステージを終わる。
解散と言う言葉が現実を帯びてきたことに、気持ちの面が整理できていなかったのではないか。

仙台の方はまず86年。客が寿司詰めになっているのが印象的。
上半身裸で汗だくになって拳を振り上げる男性ファンが濃い。女性ファンも相当気合が入っている。
しばしば客席が大写しになるのだが、誰もかれも皆ロック好きのちょっとイカレた奴らに見える。
87年はナレーターによる紹介からステージに登場するまで舞台裏で待機するメンバーの貴重な
姿が納められている。それにしてもこのナレーターのつるっぱげぶりには驚く。
BOφWYを「ビー、オー、オー、ダブリュー、ワイ BOφWY~!!」と気合たっぷりに紹介するが、
おっさん間違い。「φ=ファイ」と読むんでっせ。
INTRODUCTION~IMAGE DOWNの黄金パターンでの登場。猛獣のような氷室が登場するシーン
には震えが来る。しかしその後黄色い声で合唱する観客に、86年との大きな質の違いを感じる。
すなわち、全国的にブレイクした後のBOφWYには、新たなオーディエンス層の開拓に成功した
ものの、いわばアイドルを見るような目で彼らを見ていたファンが多く出てきたのではないか。
そう感じさせるシーンである。しかしながらBOφWY自身のパフォーマンスはキレている。
ステージから客席に伸びた花道で氷室と布袋が交差するように絡むパフォーマンスは、燃える。

ただこれらも完全収録ではない。またもともとの映像を編集し無理にアップにしている箇所が多く、
画像のアラが目立つ。もっと生っぽくても誰も怒らないぞ。

8枚目は前述の通り。スタッフによる「BOφWYの思ひで物語」と化していて、ウザい。
感動の無理強いは白ける。「そして彼らは、生きながら伝説となった」なんてテロップ出されても…。
宗教じゃないんだからw
BOφWYってそんなに神様みたいな存在?たしかに彼らの業績は凄い。彼らの成功が日本に
ロックを根付かせたのは間違いない。しかしそれまでの土台を築き上げたのはそれ以前のバンド
CAROLやRCサクセションなどであり、BOφWYは一種のブレイクスルーであったに過ぎない。
またビジュアル系と言われる、ファッション性のみを強調した亜流を生んでしまったことは彼らの
功罪の罪とも言える。もっとも彼ら自身にはそういう自覚は全く無かったわけだが。
補足するが、ビジュアル系と括られるバンドの中にも素晴らしいものはたくさんある。
しかし消えていった多くのビジュアル系バンドの多くが中身が乏しく見た目重視だったのも事実だ。
AURAとかクスクスとか・・・。
8枚目の目玉は何と言ってもロンドン・マーキークラブでのライブである。BOφWYを全く知らない
聴衆が徐々に彼らの演奏に飲まれていく様は快感である。まだノリの悪い観客に向かって
You Are Young?」と皮肉っぽく控えめに煽るヤンキー氷室が最高におかしいw

さあ、書き残したことは無いか自分?w
最後に、BOφWYの残した財産はやはり多くの人に親しんで欲しいし、ポップでありながらロックの
真髄を確かに持っていたバンドの姿を、後世にちゃんとした姿で伝えてもらいたいものである。
87年の洗練された姿ばかりじゃ、ブレイク前および直後のBOφWYの姿はわからない。
ダサダサなところも、あっていいじゃないか。裏GIGS BOX的なもののリリースを強く望む。

あと、リリース情報は早めに出してねEMI。Amazonで注文して日本の口座から引き落としている
自分にとっては、残高とのにらめっこは大変なのである。
以上。

Shake The Fake
『SHAKE THE FAKE』(1995)


 前作の大成功を受け、嫌が応にも期待の高まった今作。
レコーディングにも1年半という長期間をかけ制作された。
 氷室の当時のインタビューを紐解くと、「様々なパターンの曲を書いて、自分の曲作りの力を
アピールしたかった
」とある。その言葉通り、確かにこのアルバムはバラエティに富んだ楽曲を収録
している。しかしながらアレンジャーを3人も起用するなど、アルバムとしての統一感に欠ける。


 アレンジャーの中でも、以前紹介したホッピー神山は、氷室曰く「嫌なことでもさらりを言ってくれる
ので助かった
」というように、アレンジ面だけでなくレコーディング全般にも大きく力添えをした。
それは技術的な面だけではなく精神的な面も大きいと思われる。上記の発言を裏返せば、
「嫌なことを気を遣って言わない人が多い」ということではないか。
 後に氷室がLAに渡った際に日本ではいわゆる「スター様」になってしまってかえって居心地が
悪かったという発言をしているが、レコーディングなどの音楽活動においてもそれはあったのだ。

 氷室自身は前作での成功をプレッシャーに感じていたに違いない。そして彼の性格ならば
それを超えようと、今までの殻を破ろうとしたに違いない。彼が今までそうしてきたように。
そして冒頭の様々なパターンの曲作りへと彼を向かわせたのだ。

 

 しかしそれは確固たる方向性、ある1つの到達点に達した氷室が新たな地平線を求めていながら
自分自身それがどこにあるのかわからない。孤独な戦いでもあった。
その方向性が定まらぬままもがいている様がこのアルバムには見て取れる。
自分自身でジャッジメントを下すソロ・アーティストとしての本当の苦しみが彼を追い詰めていった。
そして成功が生んだ「スター」「成功者」という自分の位置づけ。その枠にはめ込まれることとの
戦いも、彼を追い詰めていったのだ。

 したがってこのアルバムは統一感の無い、異なるタイプの楽曲の寄せ集めという特徴となっている。
個々の楽曲に確かに面白いものはあるが、全体としての印象がはなはだ薄いアルバムなのだ。
元ネタがはっきりしている楽曲もあり、それは氷室自身に今まで見られなかった「洋楽に対する
コンプレックス」を強く反映したものでもあった。
非常に評価しづらいアルバムだが、厳しく採点しよう。


師匠のおすすめ度 ★★


1. VIRGIN BEAT
シングルが先行発売された。そのビジュアルイメージは鮮烈であった。
ベイエリア工業地帯と思われる所にクレーンがあり、その先端部分に氷室が独りで立っているのだ。
少しでも足を滑らせたら真っ逆さまに海に落ちてしまう。当時自分は氷室がスタント無しでやったと
思っていたのだが、よくよく映像を見ると別人だとわかって萎えた。
 この氷室のイメージはアルバムジャケットにも取り入れられ、ギリギリな状態にある自分と
重ね合わせたのか、氷室もたいそう気に入っているとのこと。ビジュアル的には非常にインパクトが
強く、各方面に影響を与えた。中でもお笑いのナインティナインの岡村はパロディで氷室を
演じ、大きな笑いを取った。後日氷室本人が「スタッフ一同笑わせてもらいました」とのメッセージ
を送ったほどである。このビジュアルはCMサイズで作られたのみで、フルレングスのものは無い。
DVD「CAPTURED CLIPS 1988-2006」にて初収録され、当時を知るファンを喜ばせた。

 曲自体は氷室の得意とするポップセンスあふれるロック。ドラムにはSP≒EEDから永井利光を起用。
強靭な8ビートを奏でている。後に氷室は海外の有名ドラマーを起用してレコーディングをするのだが
「日本人の方が8ビートが上手い」という趣旨の発言をしている。恐らくそれは長年ステージで親しんだ
永井らのビートが体に馴染んでいるからだと思われる。
 1995年のSHAKE THE FAKEツアーでリストに入った後、しばらく間を空けて2003年の
CASE of HIMUROでオープニングに使われた。イントロのキメに合わせて氷室が人差し指を
天に突き立てた瞬間、客は燃えた。俺は萌えた。同年の「Higher Than Heaven」でも
歌詞の「Higher and Higher」に合わせてオープニングに選ばれた。

2. BREATHLESS
 前曲同様、イントロのキメが印象的。低音のAメロから日本的なメロディのBメロに入り、サビで
氷室節が炸裂する、王道な作り。しかしなぜか一度もライブで披露されていない。以前カラオケで
歌ったことがあるのだが(いわゆる3rd STAGE)、そこでその理由がはっきりした。超難しいのだ。
これほど一つの曲の中でメロディの起伏が激しい曲は他には無い。
自分の想像だが、全曲もこの曲もアレンジャーは同一人物ではないか。そしてそれはホッピー神山
の可能性が高い。ちょっとプログレッシブなニュアンスがそう思わせるのだ。

3. SHAKE THE FAKE
 問題の曲。以前記事にも書いたが、元ハノイ・ロックスのマイケル・モンロー作「Dead Jail Rock'n'Roll」に
瓜二つなのだ。しかも仮タイトルは「スティーヴ・スティーヴンスがいなけりゃただの人」。
当時スティーヴとマイケルはJerusalem Slimというバンドを組んでレコーディングまでしていながら、
スティーヴが元モトリー・クルーのヴィンス・ニールのもとへと去ってしまったためアルバムそのものも
日本発売されたのみでお蔵入りするという事件があった。それを揶揄してのパクリなのであろうか。
 この曲に対する氷室の気合の入れ方は尋常ではない。ベースに松井常松を起用。歌入れの
前に走りこみするなど。パクリを悟られないためか、はたまたパクリと言わせないだけのクオリティを
曲に与えたかったのか。
 でもそんなのカンケーネー!と言わんばかりに、ファンの間ではライブの定番曲として人気を博した。

4. LOST IN THE DARKNESS
 オーケストラ風のキーボードが仰々しい。このアルバムではこうしたキーボードサウンドが特徴的
で、中には行き過ぎたアレンジのものもあるが、この曲はまだかろうじて許せる。
それはメロディが強いからである。低音から始まりサビでピークに持っていくのは氷室のお得意の
パターンだが、この曲では高いレベルで成功させている。氷室もこの出来に満足したのか、
ツアーではオープニング曲にしていた。しかしそれはそれまでの氷室では考えられなかった。
一発目はガツンとハイテンポの8ビートから入るのが十八番だったからである。
新たな音楽性を探ろう、何か違うことをやろうとしていたのがそこからも明らかである。
 ギターソロ直前のプログレ的なストリングスのメロディから、ホッピー神山のアレンジではないか。
やはり彼の貢献度は高い。

5. HYSTERIA
 モロ、ホッピーの世界。イントロからトランペットのアバンギャルドな音が炸裂。
純日本風のメロディの楽曲を異世界に連れて行く。ダンサブルなリズムも心地いい。
前曲同様、プログレッシブな要素もたっぷり。氷室の楽曲では異色のものだ。
アルバムを受けてのツアーでも演奏されたが、ホッピーがバンドメンバーに参加した2000年の
Beat Haze Odysseyツアーでも一部の会場で演奏された。

6. FOREVER RAIN
 これはオーケストラ風のアレンジの行き過ぎの例。いくらなんでもやり過ぎ。ファンは氷室の
ロックが聴きたいのであって、クラシックを聴きたいのではない。そう言いたくなるほどモロ、である。
氷室が本当にやりたい音楽はここには無い。これを聴くと、完全に煮詰まって曲の仕上げを
アレンジャーに丸投げしてしまったのだと思わされる。

7. DON'T SAY GOODBYE
 シングル「Virgin Beat」カップリングのバラード。「KISS ME」と「You're The Right」の関係と同じ。
 アルバムではリミックスを施しているのも同じ。シングルバージョンの方がいいのも同じw
 音がどうも硬質になっていて、素直にポップさを出しきれていないのだ。それが狙いなのだろうが、
 メロディがいいのだからポップに走っても問題ないはず。歌詞も氷室お得意の痛みを感じさせる
 内容だが、どうも狙いすぎててあざとい印象が強い。名作の域には達していない佳作。 

8. DOWN TOWN ARMY
 氷室が得意なはずのシャッフルビートの曲だが、アレンジとビートが弱すぎて絞まらない出来。
 ボーカルも中途半端な印象で、オケに乗り切れていない。これ以上は語るまい。

9. LONESOME DUMMY
 女性コーラスを大胆にフューチャーし、氷室ならではの色気を感じさせる秀曲。
 ただ氷室のボーカルには迷いが感じられる。ライブバージョンの方が思い切りがあって良い。
 ある種の実験的な曲だが、こういうリッチなアメリカン・ロックテイストも氷室には合っている。
 今後へと繋がる曲。

10. BLOW
 これは痛い。ボブ・ディランの物真似。歌詞にまで「Like A Rolling Stone」とある。
あいたたた。氷室の汚点の1つだ。3曲目のタイトルチューン「SHAKE THE FAKE」では気合で
パクリから自分の曲へと力技で持っていったが、この曲はそれさえできていない。
ぱっと聴きには長渕剛風でもあり、氷室ならではの魅力のかけらも無い。
自分はファンだがこの曲だけはお蔵入りさせたい。

11. TRUE BELIEVER
 最後に救われる美しいメロディ。氷室のボーカルも澄んだ空を思わせる輝きを放つ。
CROSSOVER05-06で初めてライブ演奏され、楽曲の良さを改めて認識させられた。
前曲さえなければもっと映えた曲なのに、もったいない。たいていはこの曲に至るまでに
ストップボタンを押してしまうだろう。

結論を言うと、このアルバムには捨て曲が多い。そしてサウンドにエッジが足りない。
6,7,10を削ってキーボードの音量を10%下げてボーカルを録り直せばもっといいアルバムになる。
暴言かもしれないが、それほど出来は良くない。今回改めてアルバムを通して聴いてそう思った。
氷室が国内での活動に限界を迎えていたのは明らかである。


厳しすぎかな?
2008年一発目の記事である。氷室記事かと思いきや、そうではない。
2007年一番最後に手元に届いたアルバムである。



ラム・フライ(紙ジャケット仕様)/ラム
¥2,000
Amazon.co.jp


現在GLASSONIONで活動する池浦均氏の所属したバンド「ラム」の唯一のアルバム。
アコースティック・ギターをメインとする演奏で、「喫茶ロック」というよくわからないジャンル分け。
1973年生まれの自分には少し古く聴こえる部分もあるのだが、確かな普遍性も感じさせられる音である。
古く感じさせる主な要因はホーンやストリングスを仰々しく盛り込んだアレンジ、
メインボーカルの声質、昭和歌謡の王道を行く歌詞とメロディにある。
逆に普遍性を感じさえる要因は、センスあふれるアコースティック・ギタープレイにある。
ギターだけを取れば今でも十分通用する音である。時の試練に耐えるプレイである。
その二つの両極端な部分が、聴く者を懐かしくもあり新しくもある別次元の音世界に連れて行く。
素晴らしい音質もラムの世界を2008年の現在に当時そのままの姿、いやそれ以上にリアルに
見せてくれる。

このアルバムで面白いのは、紙ジャケットによる当時のLPの再現度の高さである。
写真をご覧あれ。

ラムフライ1
中のCDは当時のレコードレーベルそのままのデザイン。
マニア心をくすぐる。


ラムフライ3
歌詞カードもそのまんま・・・と思う。
LPのやつを見たことが無いから。


ラムフライ2
で、おまけ。
で、出た~~!!!!
メンバーの写真ポスター縮小版!
右端がかの池浦氏である。
ちょ、長髪ぅ~!!髪黒々~~!!!
当時はカッコいいではないか。
ポスターにキスマークをもらいたいぐらいである。
        (リップサービス  キスだけに 寒)


では、アルバムの中からいくつか曲を紹介しよう。

5. ナ・ナ・ナ
 これは素晴らしい!ライブハウス照和で観客に大いに支持されていただろう曲。
わずか2分の小曲であるが、遊び心たっぷり。「一人でいるより二人の方が」
「四人でいるより四十人の方が」という歌詞が意味はわからないけれど面白い。
「100人でいるより1万人の方が」などといろいろとライブで遊んで歌っていたんだろうかと
想像させる。

6. 雨の日
 声質からして、恐らく池浦均の歌。淡々と、かつ情感に満ちた歌声はメインボーカルのお株を
奪う。ギターの音色も素晴らしく、左右から心地よく響く。しとしとと降る雨の音のように。
アレンジもムーグシンセを効果的にかつ控えめに用いており、曲の世界を深めている。
アルバムの中で一番のお気に入り。

9. ノートブックの想い出
 アレンジがバッチリと決まっている曲。ボサノバ調のリズムに心地よいギターの調べ。
特に右チャンネルから聴こえるギターのバッキングはセンスに溢れている。池浦氏であろうか?
ストリングスとコーラスが絶妙に絡み、羊を飛翔させている。
なるほど、この心地よさが「喫茶ロック」なのだな?

11. この辺で
 アルバムを締めくくる小曲だが、無性に心に響く。この曲でも途中でメインボーカルを池浦氏が
取っているのだが、自分には彼の声の方が心地よい。今ではしょぼくれたおっさん化している
池浦氏であるが、若くてぴちぴちしているこの頃はとても良い。

なんだか褒めているのかけなしているのかわからなくなってきたが、知り合いということを抜きに
してもけっこう楽しめた作品である。ボーカルの声質が自分には合わないので、真面目な話
池浦氏がメインボーカルに座っていてほしかったと思う。
一般的な知名度は全く無いバンドの作品ではあるが、持っていて損は無いアルバムである。



 最後に、自分と池浦氏との不思議な縁について書いておきたい。
自分はこのブログを始めていろいろな人との出会いがあったが、その中に彼の奥様がいた。
そして彼の活動拠点である福岡にて、奥様ともどもお会いする機会があった。
楽しく食事を取りながらビートルズやそのメンバーについていろいろな話をしていた。
そしてカラオケでもまるで長年一緒に歌ってきたかのように見事なハモリを池浦氏はしてくれた。
自分も調子に乗ってビートルズのアビーロードB面メドレーを歌ったりと、普段のカラオケでは
絶対誰もついて来れない選曲とそれにまつわるマメ知識語りで思いっきりマニアぶりを
見せ付けてやった(笑)。
そんな自分を池浦氏は気に入ってくれたのか、それとも単に酒の勢いか、最後には肩を組んで
中洲MANZOKU CITY辺りを練り歩いた(決して中に入ってはいない)。

 その時はそれで終わったのだが、もう一度会う機会があり、その時は彼の職場に少しお邪魔した。
するとそこにいたスタッフに何だか見覚えが・・・。、何と自分が以前勤めていた職場のイベントを
手伝ってくれた業者さんだったのだ。そしてさらに記憶を辿ると、池浦氏とは一度自分の職場に
来て頂いて打ち合わせをしていたのであった。名刺交換までして・・・。
その件を伝えると、「え?あの時の○○さん!?」みたいな話になり、驚いたものだった。

世間は狭いと人は言うが、こんな偶然はない。その後も決して本名ではなくハンドルネームで
池浦氏とはお話をさせていただいた。自分がタイに移住するために出発した際にも、福岡で
池浦氏ご夫妻とはお会いすることができた。知り合いの結婚式で熊本に飛んでいた池浦氏を
訳も告げずわざわざ呼び戻し、居酒屋で会った時の「なんだこいつか~」という脱力したような
安心したような一言を発した池浦氏を、今でもはっきりと覚えている。

 こんなことを書くとまるで故人を偲ぶような感じになってしまったが、池浦氏はしっかりとしぶとく
ご存命で、還暦を迎えた現在もマイペースで音楽活動を続けている。

え?還暦まだ迎えてないって??
細かいことは気にしない、気にしない。
ではこの辺で。