『美女と野獣』 (2017) ビル・コンドン監督

Thu, May 04, 2017 14:59:13 Theme: 洋画 ハ行

 

1991年のディズニーのアニメーションを実写化した作品。ゆえにストーリーは、18世紀に書かれた原作ではなく、1991年の作品をオリジナルとして忠実に踏襲している。

 

とは言っても、後から出す以上、ストーリーはより練り込まれている。オリジナルでは不自然だと思われる個所がより丁寧に作られていた。

 

ストーリーとして1991年の作品よりもよく出来ていると感じたのは、まず村人たちも魔法にかけられて城や王子の記憶を消されていると明確に描かれていたこと。オリジナルでは、それが明確ではないため、なぜ10年というそれほど長くもない時間で、自分たちの領主を忘れてしまうのだろうという疑問が生まれる。本作品では、ミセス・ポットの伴侶が村人の中にいて、呪いが解かれた後に、ミセス・ポットを見て「I remember you.」という元夫婦としては不思議なセリフを言わせている。

 

そして「なぜベルが野獣に心を寄せるようになるのか」という、誰もが持つ疑問(ただ単に命を助けられた恩義からは愛情は生まれない)に対し、野獣が教養を備え、シェイクスピアの『夏の夜の夢』を諳んじるところで、この作品はうまく答えている。ベルは中身のないガストンを忌み嫌っていて、読書という彼女の最愛の趣味を共有できる相手としてこの作品では野獣を描いている。

 

またオリジナルでは、ベルが身代わりになって城に囚われの身となった後、父親は娘を助けようと村に戻って酒場でみんなに助けを求めるが、誰にも相手にされない。そこから数日の空白期間があるが、父親がその間何をしていたのか不思議に思われるところだが、この作品では、一旦ガストンと一緒に助けに向かい、ガストンに森に置き去りにされた後、魔女に救われて彼女のところで消耗した体力を回復していたかのように描かれている(そして5日後に村に戻り、酒場のシーンとなる)。

 

呪いが解けるシーンでも、一旦は最後の花びらが落ちて侍従たちがそのままアンティークになっていくという設定は観ていて「なぜ早く『I love you.』を言わないんだ」とやきもきさせた(そのため、オリジナルにはない魔女が呪いを解くという設定が必要になり、魔女は最初だけではなく、度々登場している)。

 

オリジナルにない母親の描写も、ベルが母親がどのような人であったかを父親に聞き、父親が「She was fearless.」と答えることで、それを受け継いだベルの性格がより浮き出ていた。

 

呪いを掛けられてから、それが解かれるまで10年であり、11歳の王子は21歳になっていたというのがオリジナルの設定だが、本作品ではそれが敢えてぼかされている。呪いを掛けられる前に、王子が映像として登場しているため、11歳ではおかしいということなのだろう。しかし、ベルが禁をやぶって西の塔に入った時に目にする肖像画では王子は11歳のように描かれていて、それはストーリーの綻びであると感じた。「トーキング・カップ」のチップが、呪いを掛けられる前(本作品ではちらっと登場している)も後も同じ年齢のように見えるのだから、呪いを掛けられている間は歳を取らないという設定でもよかったのではないだろうか。

 

オリジナルがミュージカル仕立てでもあり、本作もミュージカルの体裁を取っている。オリジナルの楽曲のよさは言うまでもないところだが、その割に本作では舞踏シーンの弱さが感じられた。一番よかったのは「Gaston」のシーン。これはオリジナルよりはるかによく出来ていた。それに比して「Be Our Guest」やクライマックスの「Beauty and the Beast」はオリジナルに比してイマイチ。アニメーション作品の実写版として『シンデレラ』であれだけゴージャスな意匠が出来たのであれば、この作品でももう少し出来たはず。その芸術的意匠では、2014年のレア・セドゥとヴァンサン・カッセル主演の『美女と野獣』の方が上。全体的な出来としては本作の方が格段にいいが。

 

クラシックの現代的味付けとして、ル・フウが同性愛嗜好として描かれていること(ディズニー映画史上初めてのゲイのキャラクター)が物議を醸しているが、それよりも、ロココ時代(18世紀)の設定でありながら、上流階級に黒人が多過ぎるように感じた。ロココ時代絵画に黒人が、知る限りほとんど描かれていないことから、時代考証を歪めていると感じられた。ゲイは当然普通にいたであろうから、こちらの方が気になるところ。

 

主演のエマ・ワトソンは、2015年の『シンデレラ』でも出演を依頼されていたが、主人公のキャラクターが「誠実さと独立心に欠ける」として断っている。彼女は子供の頃から、ベルのキャラクターが好きだったようで、本人としては望んで引き受けた役であろう。『美女と野獣』というタイトルとは裏腹に、あの時代の典型的美女というよりは、知的(当時の女性が教養を必要とされていないという描写がある)で快活な「変わり者」というベルの役柄にはとても合っていると感じた。

 

オリジナルがとてもよく出来ているだけに、それを越えることはハードルが高かったとは思うが、なかなかよく出来ている作品。それでも2015年『シンデレラ』ほどの意外感はなかった。エマ・ワトソンの思惑とは外れるのだろうが。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『美女と野獣』予告編

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