『T2 トレインスポッティング』(2017) ダニー・ボイル監督

Wed, April 12, 2017 01:36:09 Theme: miscellaneous

 

1996年の『トレインスポッティング』は、現状に不満を抱えた若者が社会に中指を立て、最低・最悪の状況を自虐的に笑い飛ばした痛快な作品だった。20年経った今、時代は違う。若者が不満をぶつけて、それを面白いと受け入れる社会ではなくなっている。つまり、続編のこの作品が単純に面白いわけはない。

 

ベグビーが知らずにナンパした相手がオカマだったことから「FXXX!」と相手を罵倒することが、面白いと受け止められる時代ではないということである。そして、それが本作ではどう描かれているかと言えば、ベグビーは実は「ホモフォビアのホモ」であることを強く示唆するように描かれている。そういう現代社会に我々は生きている。

 

世界的に社会現象になるほどヒットした作品の続編を、この複雑化した社会の状況を前提にしつつ描こうとしたダニー・ボイルの勇気には賞賛を与えたい。

 

そして、この作品を前作と比べて面白くないとこき下ろすことは簡単なのだが、そうはさせないほどじわじわくる滋味がこの作品にはある。20年経った自分の変化と、映画の描く世界の変化とをシンクロさせることができるかどうかが、この作品を味わえるかどうかの分かれ道となるだろう。

 

「Choose Life.」というドラッグ撲滅キャンペーンの標語を逆手に取って、ドラッグに現実逃避する若者を描いた前作は、強烈な社会的メッセージを持っていた。20年経っても相変わらず最低・最悪の生き方をしている4人を見て、懐かしくもあり、少し寂しさも感じた。そしてそこには、社会を動かすだけのメッセージを発するだけのエネルギーを感じることはない。ただ、どん詰まりの彼らの生き様を傍観しながら、少し寄り添い、少し共感するだけである。

 

「The Worst Toilet in Scotland」のシーンや(実際、あれよりもひどいトイレは自分の人生で一度しか見たことがない。それは20数年前の北京でだった)、スパッドがガールフレンドの母親とシーツを奪い合って下痢便をまき散らすシーンのような笑いはこの作品では皆無である。この作品はよりシリアスである。最低・最悪の状況の彼らの唯一の救いは、スパッドに文才という隠れた才能があったと描かれていることかもしれない(彼の書いた文章は、アーヴィン・ウェルシュの原作の文章そのものを使っている。例えば「汗がシック・ボーイからしたたり落ちた」という文章は、原作『トレインスポッティング』の出だしの一文)。

 

20年前に前作にはまり、20年を経て同じノリで作られてもなあという人だけが楽しめる作品かもしれない。前作のスピード感やシニカルな笑いを期待している人や、20年前に同時代的共感を経験していない人が楽しめる作品であるかどうかは甚だ疑わしいと思われる。

 

そして、この作品のオープニングに使われているルー・リードの「パーフェクト・デイ」のカバー(この曲は前作では、マーク・レントンのオーバードースのシーンで使われていた)から始まる一連の音楽は、前作同様、最高にイカしてる。

 

★★★★★★ (6/10)

 

『T2 トレインスポッティング』予告編

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