『スノーデン』 (2017) オリバー・ストーン監督 | FLICKS FREAK

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いやぁ、映画って本当にいいもんですね~

 
結論から言おう。この映画は全ての人が観るべき重要な作品であり、しかも上質のエンターテイメントである。
 
元NSAのスノーデンを扱った作品には、2014年のドキュメンタリー映画『シチズンフォー スノーデンの暴露』があるが、それを観た時には正直ぴんとこなかった。事件の背景や諜報活動に関して詳しい説明が全くなかったからである。しかし、この作品ではNSAやCIAの諜報活動に基本的な理解がなくても十分に理解できるように丹念に作られている。
 
そしてこの映画を通して、言葉では知っていたはずの「National Security(国家安全保障)」の意味するところを知ったように感じた。9.11を経験したアメリカにとっても、「テロの脅威」は一時的なもので、国家の安全保障のプライオリティはもっと別のところにあるというのは、共謀罪を「テロ準備罪」と言い換えて国民の主権が脅かされそうなわが国にとっても非常に意味のある警句だろう。
 
『JFK』を観れば、「マジック・ブリット」などありえないとオズワルド単独犯を安易に疑いかねないほど、オリバー・ストーンの映像は説得力がある。ゆえに、この作品をもってスノーデンの評価をするのは危険であることは重々承知していながら、ラストシーンで本人が話すシーンでは思わず涙がこぼれた。
 
オリバー・ストーン自身は、トランプ政権に対してリベラル派が恐れるほどの危機感を持っていないようだが、大統領の右傾化を危惧する示唆に富んだこの作品は、今まさに観るべきだろう(トランプの勝利を誰も予想していなかったであろう時期に制作されていながら、トランプの映像が挿入されていたのが印象的だった)。
 
スノーデンがhackerなのかwhistle-blowerなのかといったことよりも、大国の諜報活動が世界に与える影響を考えるfood for thoughtとすべき作品だろう。強く勧める。
 
★★★★★★★★ (8/10)