『The Salesman (原題)』 (2016) アスガル・ファルハーディー監督

Wed, February 08, 2017 12:24:27 Theme: 洋画 サ行

 
『別離』が素晴らしかったアスガル・ファルハーディー監督最新作であり、本年度カンヌ映画祭脚本賞受賞作。
 
エマドとラナが住むアパートは崩落する危険があるということから、彼らは急遽引越しを余儀なくされた。そして、彼らが役者を務める劇団の一員が大家であるアパートに移り住むことに。引っ越し後、彼らの前の借主は、部屋で客を取っていると悪評がある女性であることを知る。そしてある日、ラナが一人でいる時に、前の借主が引っ越したことを知らずに一人の男が訪ねてきて、事件は起こった。
 
メインのプロットは女性が性暴力の被害に遭った時、彼女と彼女に一番近い男性がどうリアクションするのかということ。ユニバーサルな題材から、『別離』と比較して、幾分イラン色は控え目に感じた。タイトルは、彼らが所属する劇団が演じる劇中劇が『セールスマンの死』であることから取られているが、アメリカの戯曲を彼らが演じていることからも同じ印象を受けた。
 
勿論、イラン社会における独特の男性観、女性観が背景として色濃くあることは当然だが(タクシーのシーン等)、全く違和感なく受け止められた。その分、『別離』で感じたユニークさが減じたように感じたのは少々寂しいところ。
 
エマドが教鞭を取るクラスでクラシック映画を題材に扱っているシーンがあるが、その映画の中で男性が牛になるストーリーがあり、生徒の一人が「実際に男は牛になるのですか?」と質問をし、それに対してエマドが「徐々に(Gradually.)」とジョークで答えるシーンがある。それは、作品の一シーンで、子供がトイレに母親以外の女性と入るのを恥ずかしがるところがあり、また35年連れ添った妻を裏切るようになるというシーンもあり、作品全体を通して男が徐々に「牛」になるという痛烈な皮肉がそのセリフに込められていると感じた。
 
自分は『セールスマンの死』の内容を理解していないので、そのメタファーが意味するところが全く分からなかった。ゆえに、作品を更に深く理解できずに終わっているだろうことが残念。
 
表面的には小難しいところは何らないのだが、どうも噛めば噛むほど味が出てくるような雰囲気。ただ『別離』を越えるものでないことは確かなので、アスガル・ファルハーディーを初見というのであれば『別離』を勧めるし、『別離』がよかったので観てみようということであれば、過大な期待はしない方がいいと言っておく。ただ、水準以上の作品であることは間違いなく、観て損はない。
 
★★★★★ (5/10)
 
 
 
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