『Nocturnal Animals (原題)』 (2016) トム・フォード監督

Tue, February 07, 2017 18:45:08 Theme: 洋画 ナ行

 
イヴ・サンローランとグッチのクリエイティブ・ディレクターを務めたデザイナー、トム・フォードによる監督2作目。前作の『シングルマン』はイマひとつだっただけに、それほど期待していなかったが、これがすこぶるよかった。
 
アートギャラリーで成功し、傍目には何不自由なく生活しているスーザン(エイミー・アダムス)。しかし、彼女の結婚生活には亀裂が入っていた。その彼女の元に届いたのは、19年前に別れた前夫エドワード(ジェイク・ジレンホール)が書いた小説の原稿。幼なじみの彼らはニューヨークで再会し、裕福なスーザンの親の反対を押し切って結婚したが、その結婚は親の言葉通り破綻し、スーザンは裏切りとも言える形でエドワードの元を去ったのだった。小説は親子三人が襲われ、妻と娘が惨殺されるショッキングな内容だった。スーザンは小説に激しく感情移入していく。そして読み終わった後、スーザンは、原稿に添えられたメールアドレスに会えないかとメッセージを送った。
 
前作『シングルマン』はトム・フォードの美意識が感じられた作品だったが、イメージ先行という感じで、少し気負いが過ぎたように感じた。ジュリアン・ムーアは、ブルガリの広告からそのまま抜け出てきたように魅力的ではあったが。
 
この作品はかなり構想段階から練り込まれたことがよく分かる。脚本も自ら手掛けたトム・フォードの感性が遺憾なく発揮された秀作と言える。
 
まずオープニングから驚かされる。まるでデヴィッド・リンチの妖しげな世界を身構える前に突き付けられたかのよう。全編を通して、映像のそこここにモダン・アートがさりげなくあるいは明示的に配されるが、それは好みの分かれるところ。
 
『Nocturnal Animals(夜行性動物)』は、前夫エドワードがスーザンに送ってきた原稿のタイトル。扉に「スーザンに捧げる」と書いてあったが、以前、エドワードが宵っ張りの彼女のことをそのように呼んでいたことからも、その小説が彼らの関係を暗示していることは明らか。ゆえにスーザンは引き込まれていく。
 
映画は、小説を読むスーザンの心象風景が映像となって描き出され、リアルな世界の描写よりも支配的。つまり観客も、その小説の内容を追体験できるところが面白い。そして観客は、その小説が言わんとするところ、そしてなぜそれをエドワードがスーザンに送ってきたかを考えさせられる。
 
そしてエンディングをいかに解釈するか。ネット上では、この映画にはまった人たちの推測が百花繚乱だが、自分にとってはそれほど難しい解釈ではないように感じた(但し、一番多い「復讐説」は取らない)。是非、観て考えてほしい。
 
エイミー・アダムスは、これまで『サンシャイン・クリーニング』のイメージ(高校時代のチアリーダーが大人になって周りからは負け組と思われている)が強すぎて、『アメリカン・ハッスル』のような役は似合わないと思っていたが、この作品で観た彼女はこれまでのどの作品よりもよかった。大学卒業後の溌剌とした雰囲気は、メーキャップの効果もあるのだろうが、自然に若く見えたし、現在の憂いをまとった雰囲気(エドワード曰く「悲しみを帯びた目」)も説得力があった。
 
そしてもう一人の好演技がアーロン・テイラー=ジョンソン。これまで『キック・アス』のダサかわいい印象しかなかったが、ゴールデングローブ賞助演男優賞受賞は看板通り。これまでゴールデングローブ賞の助演男優賞を受賞して、アカデミーにノミネートすらされていない例はないと聞くが、明らかにアカデミーの選考ミスだろう(アカデミーでは、この作品のマイケル・シャノンをノミネート。実力派の彼の近作『ドリーム ホーム 99%を操る男たち』での演技はとてもよかった)。
 
トム・フォードの輝かしい経歴から過大評価されるとすれば、残念なほどよくできた作品だと思う。一見の価値あり。
 
★★★★★★ (6/10)
 
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