『ラ・ラ・ランド』 (2016) デミアン・チャゼル監督

Tue, January 24, 2017 15:43:02 Theme: 洋画 ラ行

 
素晴らしいの一言に尽きる。前作『セッション』も卓越した出来栄えだったが、デミアン・チャゼル監督はこの作品で映画史に新しい1ページを作った。何しろブロードウェイの焼き直しでない、オリジナルのミュージカル映画で近年成功例は皆無だけに、高く評価されるべき作品。
 
ただミュージカル(映画)として観た場合には、弱みもある。ミュージカル(映画)としての素晴らしさには、楽曲のよさや歌唱及びダンスの優美さ、あるいは衣装の豪華さがある。それがこの映画は、過去の名作にイマ一つ及ばない。楽曲は悪くこそないが、サントラに『City of Stars』のバージョン違いが3曲も入っているように、若干手抜きの感がある。『シェルブールの雨傘』や『オペラ座の怪人』といった名作における高い水準の楽曲の豊富さにはほど遠い。作品冒頭の高速道路(キアヌ・リーブス主演の『スピード』のラストシーンで使われた)の渋滞での群舞シーンは、コカ・コーラのCMの方がいいくらいのショボい出来。そして主人公の一人、ライアン・ゴズリンが歌えず、踊れない(但し、吹き替えなしのピアノの演奏はかっこいい。彼に比してエマ・ストーンは、歌も踊りもそこそこ)。ダンサー/シンガーでない彼にフレッド・アステアやジョージ・チャキリスとまでは期待しないまでも、最大限に評価して「ヘタウマ」レベル。衣装も、配色の派手さだけで、センスがいいとは言いかねる。
 
それでもこの映画が素晴らしいのは、ストーリーのよさ。それが多くの「ストーリーは二の次」となりがちなミュージカル映画の弱点であり、この映画はそれを欠点としていないため、多くの観客に訴える訴求力があると感じた。
 
主人公二人の恋愛がメイン・テーマでありながら、この作品は純粋な(というか王道の)恋愛物とは言い難い。恋愛物であるからには、恋愛至上主義であり、何よりも恋愛が優先しなければならない。例えば、『君に読む物語』しかり『タイタニック』しかり。世俗的な成功や名声など恋愛の前には霞んでしまうという設定が恋愛物の王道のパターンである。でなければ、ジャック・ドーソンを偲んで「碧洋のハート」をぷいっとは海に捨てない。その恋愛物の王道パターンが敢え無く崩されてしまうのがこの作品であり、自分の好みとしては、このより現実的なストーリーがより切なく、心に響く。
 
突然踊り出すミュージカルの気恥ずかしさを、エマ・ストーンがヒールからタップ・シューズに履き替えてみせることで茶化す遊び心もある。
 
あくまで体裁は1950年代のミュージカル映画黄金期の意匠を踏襲しながら、非常に現代的な要素をマッシュアップしているのがこの映画。例えば、『シング・ストリート』(2016年、ジョン・カーニー監督)を思わせるような、80年代カルチャーをダサいとしながらも懐かしむ風潮もそうだし、先に述べた現実的な恋愛の描き方もそうだろう。
 
この作品で秀逸なのは、そのラストシーン。それは、もし二人の運命が異なっていたらと夢想するシーン。そのシーンでは、多分この映画がミュージカル映画としては一番影響を受けたであろう『雨に唄えば』の、ジーン・ケリー演じるドンがサイレント映画をトーキーにすればというアイデアをイメージする演舞シーンを彷彿とさせた。そしてそのゴージャスでハッピーなシーンの裏に、それを夢想する二人の心情を重ねると余りに切ない。そのギャップがこの映画のキモだと感じた(ちなみに、二人の再会のシーンは『カサブランカ』のオマージュ~ボギー演じるリックが店に現れたバーグマン演じるイルザを見て驚く~であると思われ=伏線あり、こうした古典のオマージュが散りばめられているのも映画好きにはたまらないところだろう)。
 
2017年のオスカー作品賞の大本命であり、必ずこの作品が受賞するであろうと思われるが(最有力対抗馬が『ムーンライト』なら勝負は見えた)、そうでなくても、見逃すべきではない素晴らしい作品。
 
★★★★★★★★★ (9/10)
 
 
 
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