2011-03-02 00:53:42

3月4・5日の「踊りにいくぜ!!」に出演する「ウミ下着」について

テーマ:踊りにいくぜ!!

 以前、ぼくは「ウミ下着」というパフォーマンス・カンパニーについて、こう書いている。


 では、ごく日常的な生活空間をそのまま舞台に引き出してくるようなことをした場合、どんなことが起きるのだろう。ウミ下着の『あの娘の部屋に行こう』(2010年41618日、シアターsenka、大阪)を思い出してみよう。



 開演前に、インスタレーションとして会場内に虚構の部屋を作り、「あの娘」のプライベートを盗み見るという趣向がある。そこで構成・演出の中西ちさとがだるい時間を過ごしている。部屋にはぬいぐるみや本棚、冷蔵庫、レンジ、ドールハウスや服があるのが見える。「朝、何よりも先にパソコンの電源を入れる。昼、ご飯が喉を通らない。夜、眠りたいのに眠れない」(チラシより)という日々を過ごしている、20代半ばの女性のプライベート空間である。この空間はやや子どもっぽく見えもするが、この女性の現在の現実であるのだろう。


 (中略)


 ウミ下着は、自らこしらえた日常空間の中で、はみ出ていく自らの身体に苦しんでいる。一方で、居心地のいい物語の中の居場所も作っておきたいし、ちょっと特別な時間も味わいたい。そういうごく普通の感覚を、嘔吐や忘れ物癖、日記の朗読、そして終盤で電話に出て「今から行きま~す!」と声を輝かせ出口に向かって疾走するといった形で、丁寧に描き出した。ここでダンスは、フォークダンスだったり、ラジオ体操かお遊戯のような動きだったり、普通の女子の昂揚した形であることを示していくが、やはりダンスとして設えられた動きであるよりも、服を奪い合ったり、倒れて水を飲むしぐさであったりという日常的動作のほうが、時空を突き抜けていく力を持ちえているように見える。終盤で、4人がほぼユニゾンで着替え、食事をし、化粧をし、電車の吊革を持つという動きになるが、電車に揺られているという震えが、いつか内発的な震えになっていくのも、当然の展開だといえるだろう。



 身体の生理的な重しに溜息つきながら、超越的身体であることに若干の憧れを抱き、でも超越なんてできないよね、とあきらめているんだけど、日常の中のちょっとしたドラマにはしがみついてしまうような心持ち。そういうものが、イデオロギッシュな言葉ではなく、作品の中を疾走する速度として提示されているのが、ウミ下着の魅力だ。超絶技巧を持っているわけでもないし、憑依するシャーマニックなものでもないし、特別な美人というわけでもない彼女たちの身体が、日常の中で疾走する場面を拾い出せたのが、大きな意味のあることだと思う。


 その後、神戸学院大学の公開講座への出演をお願いしたり、長時間話したりしたが、基本的にこの印象は変わっていない。


 実は、神戸学院大の公演を観た複数の人から、彼女たちについて、なかなか厳しいご批判をいただいた。その多くは、ダンスとしての身体性における独創性に関する物足りなさに由来するものだったとまとめてしまっていいだろう。


 確かにそれもわからないではない。
 …ダンス作品である以上、「最も印象に残ったのが嘔吐の映像です」というのではダメだ、オリジナルなムーヴメントの魅力でこそ見せなければならない。…


 しかし、揚げ足を取るわけではないが、彼女たちは何も「ダンス作品である以上」と覚悟を決めているわけではないだろう。何かしらステージである世界を作ろうとしているだけであって、それがダンスというジャンルかどうかは、二の次だと思っているのではないか。


 ぼくたち観客がステージから受けるインパクトの強さ、逆に言えば、劇場や身体の寸法から逸脱してしまうものが、どれだけ溢れているかということに目を凝らせば、彼女たちの泣きたくなるほどの切実さが直接性として突っ込んでくる。


 何かであろうとすることのできないような、不安定な持て余し感。それが彼女たちの魅力だ。


 今回の作品「私たちは存在しない、ブルー」は、ある未分化な状態をテーマにしているようだ。できれば彼女たちには、いつまでも未分化でいてほしい。

 一見ボーイッシュな中西の生理的な煩悶は、見るものの脊椎反射を誘うことがある。思いつめたように疾走する福井の過剰さが好き。重里は、とんでもないことしかできない不器用なヤツに思える。


 何ものかになっちゃうことなく、何ものかであろうとすればそこからはみ出し、何であればいいのかわからず、かつて何ものであったかわからなくなってしまった呆然。


 だから、妙にダンスダンスした、小手先のダンス作品には絶対なってほしくないし、コンテンポラリーなダンスのトレンドとかマーケットを意識したコンセプトの注入などは、絶対にしてほしくない。

 そう、無手勝流の疾走と呆然を繰り返しながら、あくまで「25歳、ちーちゃん」的な日常の衣裳をまとっていてほしい。そんな日常など、存在しうるのか、って? だから、ウミ下着を観にいく。


ウミ下着
「私たちは存在しない、ブルー」


作・振付・構成・演出:中西ちさと
出演:重里実穂 福井菜月 中西ちさと
ドラマツルグ:笠井友仁(エイチエムピー・シアターカンパニー)


2011.3.4(金)・5(土)
会場:アイホール
TEL 072-782-2000
〒664-0846 伊丹市伊丹2丁目4番1号
http://www.aihall.com/
開演:4日 19:00・5日 15:00
(開場は開演の30分前) 
料金:前売…一般3,000円/学生2,000円/一般ペア5,000円
当日…3,500円(一律) 
予約・問合:アイホール TEL : 072-782-2000 (火曜休館) E-mail : info@aihall.com
共催:アイホール
協力:NPO法人DANCE BOX


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