チタンと鉄についてうまく伝わらなかったようだ。
福島県太平洋岸の砂浜には「黒い砂」が結構多い。
私はこれが全部「砂鉄」だと思っていた。
「砂鉄」というのは、純鉄ではない。
地域によって成分は異なるが(だからこそ、きっちり分析すればどこどこの砂鉄と判別することができる)、磁石にくっついてくるいわゆる「砂鉄」は鉄分が20%程度含まれている鉱物だ。
鉄分が20%(この%は重量比)もあれば磁石につく。
あるとき、浜の黒い部分をスコップですくい取って水洗いし、さて磁石で精選しはじめた。
ところが、黒い砂の大部分は磁石にくっついてこなかった。
砂鉄ではなかったのだ。
それがいったい何かは新地町の役場で教わった。
「チタン」だ。チタンといっても純チタンではない。チタン分の多い砂である。
この「チタン分の多い黒い砂」は砂鉄と比重がほぼ同じだ。
だから、浜の「黒い砂」を水を使った比重選鉱(かんな流し)で分離できない。
かろうじて、粒の大きさ(粒度)を分けることができる。
つまり、磁石を使わなければ、浜の黒砂から「チタン分の多い黒砂」と「鉄分の多い黒砂」を分離することができない。
岩手県の海岸の「黒い砂」は全部「砂鉄」だ。
しかも、その砂鉄は鉄分が50%も含まれている(純鉄50%というのではない。チタンと鉄が解け合っているものが50%だT-Fe)(それ以外の含有物としてシリコン、アルミニュウム、チタンなどの酸化物など)。
製鉄の原料としては非常にすぐれている。
製鉄の原料の砂鉄は、そこらの砂鉄で鉄分が20%
岩手県で50%
地域によって差がある。
何度もいうが、これは「黒い浜砂」から磁石で「砂鉄」を選別したその砂鉄の成分の内訳である。
黒い浜砂をかんなながしで白い浜砂から分離してそれを製鉄の原料としたら、非常に鉄の収率は悪くなる。
もともと、鉄分が少ないのだから。
そこで、古代製鉄ではどういう「黒砂」を使ったのかが興味深い。
岩手県太平洋岸のように、黒い砂がみんな砂鉄という地域ではまったく問題にならないことだ。
また福島県でも猪苗代の黒い砂はみんな砂鉄なので問題にならない。
福島県太平洋岸の黒い砂だけが(茨城県の砂鉄採集はまだ行っていないので分からない)製鉄原料として問題があるのだ(もし、海砂を使ったとすればだが)。
長くて細かくなりすぎた。
それでなくても、いつも七面倒くさいことを書いていると言われている。
要するに、「黒い砂」から砂鉄を分離できることを自明のことと考え、分離した砂鉄の成分の中のチタン分の多さが製鉄に影響を与えているという考え方が非現実的なのだ。
磁石がなければ「黒い砂」から「砂鉄」と「それ以外の黒い砂」を分離できないのだ。
「それ以外の黒い砂」はチタン分の多い砂である。
このチタン分が製鉄にどのような影響を与えるかは非常に興味深い問題だ。
実験が必要だ。岩手の砂鉄と福島の「黒砂」を用いて別に製鉄をすればわかる。
溶接棒にはチタンを混ぜていて、そのチタンは新地町の「黒い砂」を使っていたようだ。
チタンは、溶接棒が溶けて溶接する「湯」の球を小さくする働きがあるという。
これから推測して、製鉄にも必ず何らかの影響を与えていると思われる。