『てっし録(^▽^)』~行政書士試験合格で時代を豊かに生きよう!

★10回行政書士試験に合格した講師が合格思考を伝授★


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 商法の場屋取引に関するクイズを作りました。
よかったら解いてみてください。

[クイズ]

 あるホテルで宿泊客が価額等を明告せずに貴重品(30万円相当)をベルボーイに預けたところ、このベルボーイがこの貴重品をなくしてしまった。この場合、宿泊客はホテルに対して「30万円賠償しろ!
」といえるか。

 なお、このホテルの宿泊約款には、「宿泊客の携行品等のうちフロントに預けなかった物については、あらかじめ種類及び価額の明告がない限り、ホテル側が負担すべき損害賠償の上限を15万円とする」と規定されている。


猫村1 ヒント

1 場屋取引に関する条文

商法594条(客の来集を目的とする場屋の主人の責任)

① 旅店、飲食店、浴場其他客ノ来集ヲ目的トスル場屋ノ主人ハ客ヨリ寄託ヲ受ケタル物品ノ滅失又ハ毀損ニ付キ其不可抗力ニ因リタルコトヲ証明スルニ非サレハ損害賠償ノ責ヲ免ルルコトヲ得ス。
② 客カ特ニ寄託セサル物品ト雖モ場屋中ニ携帯シタル物品カ場屋ノ主人又ハ其使用人ノ不注意ニ因リテ滅失又ハ毀損シタルトキハ場屋ノ主人ハ損害賠償ノ責ニ任ス。
③ 客ノ携帯品ニ付キ責任ヲ負ハサル旨ヲ告示シタルトキト雖モ場屋ノ主人ハ前二項ノ責任ヲ免ルルコトヲ得ス


商法595条(高価品に関する特則)

 貨幣、有価証券其他ノ高価品ニ付テハ客カ其種類及ヒ価額ヲ明告シテ之ヲ前条ノ場屋ノ主人ニ寄託シタルニ非サレハ其場屋ノ主人ハ其物品ノ滅失又ハ毀損ニ因リテ生シタル損害ヲ賠償スル責ニ任セス


商法596条(責任の短期時効)

① 前二条ノ責任ハ場屋ノ主人カ寄託物ヲ返還シ又ハ客カ携帯品ヲ持去リタル後一年ヲ経過シタルトキハ時効ニ因リテ消滅ス。
② 前項ノ期間ハ物品ノ全部滅失ノ場合ニ於テハ客カ場屋ヲ去リタル時ヨリ之ヲ起算ス。
③ 前二項ノ規定ハ場屋ノ主人ニ悪意アリタル場合ニハ之ヲ適用セス。


2 
客の荷物についての場屋営業者の責任

(1)意義

 場屋とは、旅館、飲食店、浴場のように、不特定多数の人の利用に適するスペースと物的・人的設備を有する所をいいます。場屋取引とは、客の来集を目的とする場屋における取引です。

 商法は、営業的商行為の一つとして、客の寄託品や携帯品に対する場屋の主人の損害賠償責任を規定しています(商法502条7号、594条以下)。

 
(2)寄託を受けた荷物に関する責任

 客から寄託を受けた物品の毀損、場屋営業者は不可抗力によるものであることを証明しない限り、損害賠償責任を負います(商法594条1項)。店が客から預かった荷物をなくしたら、よっぽどのことがないかぎり、客に賠償金を支払え、ということです。

 このように、
場屋営業者は不可抗力によることを証明しない限り免責されません。一般の商人の責任(過失責任)よりも責任が強化されています。

 ※寄託を受けた商人の責任(商法593条)
 一般に商人が営業の範囲内において寄託を受けたときは、報酬を受けるか否かにかかわらず善管注意義務を負います。商売人は、客から預かった荷物をきちんと管理せよ、ということです。うっかり客の荷物をなくしてしまった(過失による善管注意義務違反)場合、店は損害賠償責任を負います。

 この責任のルーツは、ローマ法のレセプツム責任(受領責任)にあるといわれています。レセプツム責任とは、旅店主が盗賊と結託して客の荷物を奪うことの多かったローマ時代に、客の荷物の安全を図ることを目的として認められた旅店主に対する厳格な責任です。

※不可抗力の意義
 不可抗力とは、特定事業の外部から生じた事故であって、通常必要と認められる予防方法を尽くしてもなお防止することができない危害と解されています(通説)。

例えば、旅館の玄関前面の丘陵部分が集中豪雨により崩落し、それに接して設けられていた駐車場に駐車していた車両が損傷を受けたケースで、何らかの土留め設備が設けられていれば本件事故が生じなかった可能性が存在し、また、旅館従業員等が迅速に対応していれば損傷の被害を防止できたとの疑いがある以上、「不可抗力によるものとは認められない」とした判例があります(東京地判平8.9.27)。


(2)寄託を受けない荷物に関する責任


 客がとくに寄託しなくても、客が場屋内に携帯した物品について、場屋営業者は自己又は使用人の不注意によって生じた滅失・毀損について損害賠償責任を負います(594条2項)。

 寄託契約が成立していない以上、場屋営業者は契約上の責任を本来負うものではなく、また、不法行為責任も当然には発生しません。

 ただ、商法は、場屋営業者と客との間に特殊な関係に基づき、場屋営業者に特別の責任を負わせています。

※不注意の意義
 「不注意」とは、過失による善管注意義務違反のことです。
1項とは異なり、客の側に立証責任が課されています。つまり、善管注意義務を果たさなかったということについて、客の側が、場屋営業者本人又は使用人の不注意を証明しなければなりません。

※使用人の意義
「使用人」には、事実上使用する家族を含みます。
場屋営業者との間に雇用契約があると否とを問いません。

※594条は任意規定です。


(3)高価品に関する責任

 高価品(宝石、貨幣、有価証券など)は損害発生のリスクが大きく、損害額も巨額になります。高価品であることの明告がなければ、場屋営業者は、そのリスクに対応した注意を払うことも、リスクに見合った保管料を請求することもできません。

 高価品
については、客がその種類及び価額を明告して場屋営業者に寄託するのでなければ、場屋営業者は滅失・毀損についての損害賠償責任を負いません(595条)。

 
※「高価品」とは、容量又は重量の割に著しく高価な物品をいいます。
 容積も重量も相当巨大であって、高価であることが一見明瞭なものは「高価品」に当たりません(最判昭45.4.21)。

※ 高価品については、寄託にあたり価格の明告がなければ、完全に賠償責任を負いません。普通品としての賠償する責任すら負いません。


(4) 免責

 場屋営業者の責任(594条1項・2項)は、任意規定です。特約によって場屋営業者の責任を免除することは可能です。ホテルや旅館などでは、宿泊約款等においてこのような特約を定めています。

 ただし、責任を負わない旨を告示しただけでは免責されません(594条3項)。



[参考問題] 平成19年度行政書士試験問題40

 場屋営業等に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1 商人がその営業の範囲内において物品の寄託を受けた場合には、報酬を受けないときであっても、善良な管理者の注意をもってその物品を保管する義務を負う。

2 場屋の主人は、客より寄託を受けた物品が滅失または毀損した場合には、それが不可抗力によることを証明しない限り、損害賠償の責任を免れることができない。

3 場屋の主人は、客から高価品の寄託を受けた場合には、客がその種類および価額を明告して寄託したときでなければ、その物品の滅失または毀損によって生じた損害を賠償する責任を負わない。

4 客が物品を特に寄託することなく場屋中に携帯した場合において、場屋の主人、または使用人の不注意によってその物品が滅失または毀損したときは、場屋の主人は、損害賠償の責任を負う。

5 客が携帯する物品について、責任を負わない旨を告示した場合には、場屋の主人は、損害賠償の責任を負うことはない。


[こたえ]

1 ○(商法593条)。民事寄託との違いに注意(民法659条参照)。
2 ○(商法594条1項)。
3 ○(商法595条)。
4 ○(商法594条2項)
5 ×(商法594条3項)。
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