デリート(最終話)

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最後のチャンス?

いったい何のことだ?

彼女にその疑問をぶつけようと口を開きかけたが、

何故かうまく言葉に出来ない。


すると彼女は当然のようにグラスに入っている涙をゆっくりと飲み始めた。


カウンター奥のやわらかい照明の光が、

彼女の口元のグラスを通り越して、僕の視界をぼんやりと包み込んだ。

冷静に考えれば涙を飲む行為は明らかに不自然であるはずなのに、

それは不思議な美しさが漂う光景だった。


グラスの中の涙がゆっくりと彼女の口元に運ばれていく。

グラスの中で涙が小さく波打つのにあわせて、

グラスを通り越して僕を包む光も形を変え、揺れている。


そして、気がつくと僕は泣いていた


自分が泣いていることにはすぐ気づいたけど、

最初はそれがいったいどんな意味を持つものなのか、

うまく理解できなかった。


哀しいから泣くとか、うれしいから泣くという、感情に起因する涙とは違い、

僕の感情とは無関係に涙が流れているような気がした。


しかしそれは間違いだった。


自分が涙を流している理由がわかった時、

彼女はグラスの涙を飲むのをやめて、にっこりと笑って僕を見た。


「わかった?」


彼女は僕をじっと見つめて言った。


「僕はこれを忘れていたのかい?」


僕はとめどなく流れる涙をこらえて彼女に訊いた。


「そう、それが1年前、あなたが消したがっていた記憶よ」


それは僕にとってはあまりにもつらい記憶だった。

自分の心に納めきれない思いが、

涙に変わって零れ落ちた。


「最後のチャンスよ」


彼女は確認するように僕に向かって言った。


「もう一度忘れることができるわ、今度は完全に忘れることができるわ」


彼女は一度も瞬きをせずに、僕に向かって言った。


「あなたのそのつらい記憶も、

 そしてこのお店のことも、完全に忘れることができるのよ

 あなたは悲しみを抱えずにこれからの生活を楽しくやっていけるわ

 でも、これが最後のチャンスよ。

 記憶をデリートするか、その記憶を抱えてこの店を出て行くか

 二つに一つよ。二度とやり直しはできないわ」


僕は自分の心が、酸素が足りなくて激しく動悸しているような、

行き場のない苦しみを感じながら彼女の言葉を聞いていた。


「どうする?」


そして彼女は僕に向かって聞いた。


忘れてしまいたい。僕はそう思った。

封印されていた記憶が一気に僕の心をかき乱して、

走馬灯のようにぐるぐると回っていた。


雨の日や、晴れの日や、寒い日や、暖かい日、

いろんな色が混じって僕の頭を駆け巡っていた。

そして、

そのすべての記憶に、二度と触れることができないということが、

僕を決定的に打ちのめしていた。

僕は救いを求めるように彼女を見つめた。



彼女は、完全に動揺している僕を見つめながら、

グラスに残っていた涙をすべて飲み干し、

『コト』と音を立ててグラスをカウンターに置いた。



その瞬間、僕の頭に欠落していた記憶が

パズルをはめ込むみたいに音を立てて浮かび上がった。


そう、僕はちょうど一年前にこのお店に来たんだ

それは、僕の記憶をすべて悲しみの色に塗り替えた日だった。


時計を見ると、21時を少しまわったあたりだ。


「まだ間に合うわよ」


彼女は僕に向かって言った。


気がつくと僕はお店を出て、駆け出していた。


僕の記憶に映る、あの人の顔は、そのほとんどが笑顔だった。


星になってしまったあの人は

記憶の中で、

とびきりのやさしい笑顔を僕に見せていた。



おしまい



ふぅ、やっと終わりました。

なるべく説明を加えないで描写することを心がけて

謎っぽいところは、あえて読み手にゆだねたつもりです。

人それぞれ、解釈は違うかもしれませんね。


みんな、どう解釈して読んでくれたのか、書き手としては気になるもんですね。




【 過去の『小説風に描写』 】

02/22 「小説風に描写① ~ エレベータ」

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02/25 「小説風に描写③ ~ 返せなかった鍵」

02/28 「小説風に描写④ ~ 新幹線で(前編)」

03/01 「小説風に描写④ ~ 新幹線で(中編)」

03/02 「小説風に描写④ ~ 新幹線で(後編)」

03/11 「小説風に描写⑤ ~ 探し物はなんですか(第1話)」

03/12 「小説風に描写⑤ ~ 探し物はなんですか(第2話)」

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「マスター、いいかしら?」


彼女はマスターに向かって示し合わせたように言う。


「かしこまりました」


マスターの低い声が、店内にある種の緊張感を漂わせる。

そして、

カウンター脇にある巨大な銀色の業務用冷凍庫をゆっくりと開けて、

中から凍って真っ白になったグラスをひとつ取り出した。

マスターはそのグラスを精密な機械でも扱うようにして慎重に運び、

彼女の前のカウンターにそっと置いた。


そのグラスを見た瞬間、

誰かに自分の心臓をわしづかみにされているような感覚が僕を襲った。

とても見ていられない。


「このグラス、覚えてる?」


彼女は僕じゃなくて、グラスを見ながらそう言った。


そうだ、そのグラスは僕がこの店に初めて訪れたとき、

彼女が僕の目の前で流した涙が入ったグラスだ。


あの日、不自然なくらいのものすごい量の涙を流し、

そのすべてをそのグラスに落としたのだ。


それは明らかに不自然な光景だった


「ああ、覚えているよ。あの日、君が突然泣いて、その涙を入れたグラスだ」


僕はグラスから目をそむけてそう言った。

胸がずきずきする。


「このグラス、見ていられない?」


僕は彼女のその問いには答えなかった。


「当然よ」


彼女はそう言ったが、

その言葉が僕に向けられたものなのか、どうかわからなかった。

どちらかというと、独り言に近い言葉のような気がした。


「このグラスに入っているのは確かに私が流した涙よ、

 でもこれは私の涙じゃないもの


そう言って彼女は凍ったグラスを両手で包み込んだ。

彼女は身動きひとつしないで、ただじっとグラスを両手で包み込んでいた。

そこだけ一時停止ボタンを押したみたいに

彼女はピクリとも動かない。

時間にしてみれば、ほんの数十秒だったかもしれないし、

何十分だったかもしれない。

どこか時間の感覚がゆがんでいる不思議な感覚だ。






そして、気がつくと彼女はグラスから手を離していた。

驚いたことに、

さっきまでカチカチに凍っていたグラスの中の涙が

完全に融けている。


困惑する僕を見つめて、彼女が言った。


「これは最後のチャンスよ」



つづく




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「こんばんは」


そう言って彼女はゆっくりとカウンターに向かって歩いてくる。


「となり、いいかしら?」


と言いながら、僕の返事も待たずに彼女は隣に腰掛けた。


まるでデジャヴだ・・・。


大胆なスリットが入った黒いワンピースに身を包んでいる彼女は、

やはり会社で見る彼女とは別人だ。


「ひさしぶりね」


彼女はにっこり笑って僕の顔を覗き込んだ。

それは僕が初めて見る彼女の無防備な笑顔だった。


「そうだね」


僕は自分の動揺を隠すみたいにしてバーボンのグラスに手を伸ばした。

でもそこには空のグラスがあるだけだ。


「マスター、おかわりお願いします」


彼女から目をそらしてマスターに声をかける。


すると突然、


「まって」


彼女はマスターに向かって僕のオーダーを取り消すように言う。

そして

彼女は僕の目をじっと見つめて諭すように言った。


「あなたは今日、何のためにここに来たのかわかってるの?」


しばらく沈黙が二人の間をつつんだ。


彼女は突然何を言い出しているんだ?

ただ僕は混乱するばかりで、次の言葉がみつからない。


「だから、何のためにこのお店に来たのかわかってるの?」


もう一度、彼女はゆっくりとそう言った。

でも僕には何のことかさっぱりわからない。


何のために僕はこのお店に来たんだろう?


そう


何のために僕はこのお店に来たんだろう?


そうだ、それこそがこのお店に来た理由だ。


「何のためにこのお店に来たのかはわからない、

 でも、その理由はこのお店にありそうな気がするんだ」


僕は正直に彼女に向かって話した。

いや、

彼女には嘘は通用しないことが、感覚的に僕にはわかっていたのだ。


「正解よ」


彼女はとびきりのやわらかい笑顔でそう答えた。



つづく




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ステーキ

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母ちゃんとステーキレストランに行った。

久しぶりの肉厚ステーキにワクワクしながら

僕と母ちゃんはメニューをにらんだ。


母ちゃんも、僕も注文を決めてウェイターを呼んだ。


僕 「霜降り和牛ステーキ200gください!」

ウェイター 「焼き加減はいかがなさいますか?」

僕 「ミディアムレアでお願いします!」

母 「私も同じステーキ150gもらえるかしら」

ウェイター 「焼き加減はいかがなさいますか?」

母 「(小声)焼き加減てなんね?」

僕 「(小声)生とか、半生とかや」

母 「(小声)生肉はイヤや、ちゃんとやいてもらわんとあかんがね!」

僕 「(小声)じゃあウェルダンだよ」

母 「(小声)わかった」



そして母ちゃんは胸をはって言った。




























 


ウェルカムで!(;゚Д゚)





母ちゃん・・・






ウェイターを誘うのは

やめてください


 


 


(ノД`)・゚・


 





と焦ったところで目が覚めた。

夢でよかった。

でも問題なのは、十分現実におこりそうな状況ということだ。


アイヤー

デリート (第7話)

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マスターに促されて、カウンターの席に腰をおろす。

店内には僕とマスター以外に誰もいない。


「バーボンのロックでよろしいですか?」


「え?あ、はい」


そうだ、初めてこのバーに入った時にも

僕はバーボンのロックを頼んだんだ。


シャキシャキとアイスピックが氷を砕く音が店内に響き渡る。


マスターの手元をぼんやり眺めていると、

一つの疑問が僕の頭に充満してくる。


僕がこのバーに足を踏み入れた理由だ。

1年くらい前、僕は何故このお店に入ったのだろう?


自分が暮らす街や、会社からもぜんぜん離れている

この街のこの店に入る理由がどうしても思いつかないのだ


気がつくと、マスターが僕の目の前にバーボンのロックを差し出した。

僕はその疑問を打ち消すように、

もう一つの疑問をマスターに投げかけた。


「何度もこのお店に足を運んだんですが、

 いつも閉まってたんですけど、

 どこかに長期でお出かけだったんですか?」


するとマスターはにっこり笑ってこう言った


「いいえ、このお店はいつも営業してますよ

 タイミングが合わなかったんでしょう」


タイミングが合わなかった?どういうことだ?

僕はいろんな曜日、そしていろんな時間にこのお店に足を運んだ。

ところが、そのすべてにおいて、

お店のドアは硬く閉ざされたままだったのだ。


マスターに反論しようとしたが、口に出そうとすると、

ソコには有無を言わせないマスターの力を感じて、

僕は黙り込んでしまった。


気後れする自分を隠すようにしてバーボンを勢いよく胃に流し込む。


そしてバーボンのグラスが空になったとき、

後ろのお店のドアが鈍い音を立てて開いた。



そこには彼女が立っていた。



つづく




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それは確かにツライ

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日中、優香から連絡があった。

そう、あの癒し系アイドルの優香だ


「相談したいことがあるから、会いたいんだけど」


忙しい優香からこんな連絡をもらうことなんて、

普段はめったにないことだ。


僕も今日は特に予定もなかったので、

彼女の指定した待ち会わせ場所に向かった。

喫茶店とかだと、目に付くので、ある公園で待ち合わせしたいとのこと。



待ち合わせ場所に到着すると、優香が僕より先にそこにいた。

いつもはキャッキャと笑ってばかりの優香が、神妙な面持ちだ。


「ひさしぶり」


僕はそう声をかけて彼女に近づいた。


どうやら、泣きはらしたみたいで、目がはれぼったく見える。


「どうしたん?」


すると優香は、ポツリポツリと話し始めた。

彼にフラれたらしい


「フラれたってどうして?優香をフルってすごいやつだね・・・」


僕は笑って言ったが、彼女はぜんぜん笑わない。

彼女が言うには、彼に新しく好きな人ができて、

付き合えないということらしい。


それは確かにつらい。


それで、めったにないオフの日に僕を呼び出したのだ。

優香の気持ちを考えると、

もう少し一緒にいてやったほうがいいと思ったので、


「軽く飲みにでもいくか?」


と言ってみる。


すると優香はコクンと小さくうなずいた。









そこで目が覚めた。

これが今朝のてるてるの夢だ。


別に僕は優香のファンでもなんでもないのに意味不明だ。



そして、一番意味不明だったのは、

優香がフラれた彼氏が



モト冬樹だったことだ。



なんちゅう夢だ・・・。

デリート (第6話)

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その日、結局僕はあのバーに入ることは出来なかった。


まだこのお店に来るには早すぎるようです


マスターが言った言葉を頭の中で繰り返してみる。

決して高圧的な口調ではなく、淡々と語られた言葉だったが、

そこには決して踏み越えられない壁が存在していた。


僕は完全にあのバーに拒絶されたのだ。


そして、それから僕は月に何度か、あのバーを訪れた。

ところが、何曜日に行こうが、何時に行こうが、

お店の前には「CLOSE」の札が

取り込み忘れられた洗濯物みたいに

だらしなくぶら下がっているだけだった。


それは何故か僕にとっては絶望的な光景だった。


それでも僕は何故か気になってその後も何度もそのバーに足を運んだ。

でも、階段を下りた先のドアが開くことはなかった。



そして、何ヶ月も過ぎていった。



ひょっとして、あのバーは店をたたんでしまったんだろうか?

僕はだんだん不安になってきた。

もう二度とあのバーに入ることはないのかもしれないと思うと、

どうしようもない不安が僕を襲った。



不安?



いったい何が不安なんだ・・・。



どれだけ考えをめぐらせても、自分が何に不安を抱えているのか、

さっぱりわからない。


でも、僕は確実に何かにおびえていた


何におびえ、不安を抱えているか、僕にはわからなかったが、

一つだけはっきりしていることがあった。


僕にはどうしてもあのバーにもう一度行く必要がある


そして、僕はあのバーに向かった。


階段を下りてバーのドアを見ると、

いつも僕をにらんでいた「CLOSE」の札が見当たらない。


ドアに手をあててそっと押してみると、ゆっくりとドアが開いた。

そしてカウンターの向こう側から、グラスを磨きながらマスターが言った。



「いらっしゃいませ、お待ちしておりました」



つづく

って、長いな~・・・そろそろ終わるはずなんですが 笑




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どんな収益だよ・・・

テーマ:
今日、会社でプレゼン資料を作成していた時のことだ。

プレゼン資料(プレゼンテーション資料:提案資料ともいう)


プレゼン資料の最大の目的は、

提案先の企業に対して、自社の商品やサービスをご利用いただくことにより、

どれだけメリットが生まれるかを端的に伝えることだ。


そのメリットを伝える方法はさまざまだが、

通常の文章と同様に、

プレゼン資料も「起承転結」、ストーリーがないと相手にうまく伝わらないものだ。

つまり、プレゼン資料を作る作業は

単純に商品やサービスのスペックや事実を記載するだけではなく、

ストーリーにするという、創造力が求められる。



僕は今日、

このストーリーにするという作業に行き詰まり、

ついイライラして、うつむきながら

無意識にキーボードを連打した。



はっ と我に返って顔を上げてディスプレイを見ると














----------------------------------------

1、本サービスの収益について


・ 広告枠の販売による収益


・ マーケティングリサーチの受託による収益


・ ちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこちんこ珍子








いつの間にちんこが収益になったんだ・・・


僕は相当病んでいるみたいです


最後の「珍子」が胸に突き刺さりました


誰か助けてください

デリート (第5話)

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考えてみれば、もっと早くそうしていればよかったんだ。

どうして僕は今まであのバーに行かなかったのだろう。

電車に揺られながら、自問自答してみたが、答えは出てこなかった。

ただ、今日という日まで「あのバーにいって確かめてみよう」という気には一切ならなかった。

それだけのことだった。


どうして僕は今まであのバーに行かなかったのだろう


そして、一時間弱電車に揺られて、半年前に出鱈目に降りた駅に到着した。

正直、半年振りで、しかも一度しか行ったことのないお店だから

ひょっとしたら場所がわからなかったらどうしようと少し不安だったが、

そんな不安とは関係なく、僕は簡単にそのお店を見つけることができた。


その時、1人の女性が地下にあるそのバー階段を下りていくのが見えた。



彼女だ・・・間違いない・・・



僕は少し歩幅を早めてそのお店の入り口に向かう。

階段を小走りで駆け下りる途中、階下のバーの入り口がゆっくりと開き、

一人の男性が階段を上ってくる。


その男性の足取りは僕の焦りとは裏腹に、とてもゆっくりしていて、

なぜか僕をイライラさせる。


僕の行く手をさえぎるみたいにして、

その男性はゆっくりと階段を上ってくる。


そして、僕の目の前でいつのまにかその男性は立ち止まっていた。

突然立ち止まったのではなく、いつのまにか立ち止まっていた。

それがまるで自然の摂理のように思えるくらい、

当然のように立ち止まっていた。


よく顔をみると、その男性はこのバーのマスターだった。


「こんばんは」


マスターは僕の顔を見てやさしく言った。

僕なんかより、長い時間この社会の空気を吸い、

悲しみも喜びも深く心にしまいこんであるような、優しい声だった。


そしてマスターは僕の顔をしばらくそっと見つめた。


「お酒を飲みに来たんですが?」


いたたまれなくなって

僕はマスターに向かって何かを埋め合わせるようにそう言った。


するとマスターは、微妙な沈黙の後、


「今日はもう閉店です、申し訳ございません」


その言葉を残して、

くるりと後ろを向いてお店の入り口に向かって階段を降りていく。


時間はまだ8時にもなっていない。

どう考えても閉店には早すぎる時間だ。


それに、彼女がついさっきお店に入ったばかりじゃないか・・・


「閉店には早すぎませんか?」


僕はとっさにマスターの背中に向かってそう言葉を投げかけていた。


するとマスターは僕のほうには振り返らずにポツリと話した。


まだこのお店に来るには早すぎるようです


マスターはその言葉を残してお店の中に姿を消した。



つづく




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