2010年11月04日

住宅は誰に頼むべきなのか? -建築家住宅とハウスメーカーや建売住宅との違い

テーマ:住宅建築
$tele-designのブログ

誰もが若いときには賃貸住宅に住んでいますが、早い人で20代後半、遅い人でも40代になると、賃貸に住み続けることに疑問を抱き、住宅の購入を考え始めます。その時に問題になるのが、いったい、どこで住宅を購入すべきか、あるいは誰に頼むべきか。。になります。

世の中の大多数は完成住宅が多く、分譲マンションや建売住宅など、すでに完成したものや、これから完成する建物を購入することになります。あるいは、ハウスメーカーなどに土地とセットで契約するケースもあるでしょう。

問題になるのは、情報の非対称性です。業界の仕組みがとても複雑で、それぞれの人たちが自分のやり方が一番良いと営業するために、一般の人たちにとってみれば、どこの誰に頼めば良いのか、とてもわかりにくいのです。

しかも、雑誌メディアに載っている住宅は、建築家の設計したものがとても多く取り上げられています。住宅に興味のある人、自分の好きな住まいを探している人にとっては、様々なデザインの住宅を見ることで夢が膨らみますが、雑誌メディアに載っているような空間をハウスメーカーや建売住宅に期待してみても、とても苦労をすることになります。

建売住宅やハウスメーカーの作っている住宅は、たとえばファッションに置き換えてみれば、既製品の住宅です。すでにお店にあるセレクションの中から選ぶ必要があります。一方、建築家の住宅は、オーダーメードの住宅です。お店には材料のサンプルはありますが、モデルハウスはありません。

たとえばハウスメーカーの場合、100戸とか1000戸とか、とても大きな数の単位で部材の大量生産を行い、コストダウンを測る一方で、モデルハウスや広告宣伝費、営業費用などを確保しています。住宅のデザインのバリエーションは各社違いますが、素材の選択肢や間取りの組み合わせの選択肢を狭めることで、その大量生産の仕組みが成立しています。つまり、細かい要望への対応度はそれほど高くなく、あくまでも、彼らのセレクションの中から選ぶ必要があります。

建て売り住宅については、10戸~数十戸単位での工事をまとめて行うことによって、コストダウンを図ります。材料もやはり一括仕入れを行い、短い工期で手早く建設して販売することによって成立しているビジネスモデルです。個別要望にはできるだけ応じないことが、そのまま彼らの利益率に繋がります。

さて、やっかいなことは、ハウスメーカーも建売住宅も、営業担当者は、できるだけどんな要望にもできるだけ答えるような、笑顔の対応をしてくれるのですが、実際には仕組み上、限界がありますので対応しきれなくなってしまったりします。これでは、不満がたまってしまいますね。

一方、建築家住宅ですが、メリットは、やはり設計の自由度。既製品ではないので、ゼロから設計を始めます。構造の方法、素材の使い方、空間の面白さや開口部の工夫など、様々な要素を取り込んで、理想の住空間をくみ上げていきます。また、都心などの周辺環境が密集しているところでは、対応力も高く、条件がわるくても、明るくて住みやすい家を設計することが可能です。

建築家住宅のデメリットは、設計をスタートする時点ではコストが見えにくいことでしょうか。たとえば完成品の分譲マンションであれば。最初に値段が確定していますし、ハウスメーカーや建売住宅も、基本的にはすぐに見積もりを確定できるような仕組みにしています。それはやはり、使う材料や部材が決まっているからできる方法です。ところが、建築家住宅は、オーダーメードの住宅ですから、設計内容によっても、設備のグレードによっても、建設費は変わってきます。したがって、基本設計や実施設計を行って、図面が出来上がって初めて、正確な見積もりが可能となり、最終的な建設費が確定します。完成分譲住宅やハウスメーカーのやり方が一般化している今の時代にあって、多くの人たちが不安に思うのは、この点であると思います。

若い建築家であれば、コスト調整の経験も少なく、大きな予算オーバーとなってしまうなどの事例を耳にすることがあります。しかし、経験豊かな建築家であれば、それぞれ独自のコスト調整ノウハウを蓄積していますから、予算をオーバーしてしまうことはありません。その辺の見極めはとても重要です。

ご理解いただきたいと思うのは、オーダーメードのスーツがそうであるように、まずは、予算を決めて、その予算の中でのベストパフォーマンスをめざすことが、建築家住宅の進め方です。様々な要望を考慮しつつ、コストの優先順位を決めて、一緒に相談しながら進めて行きます。もちろん、建設費はあくまでも要望と予算とのバランスですから、すべての要望を満たせないこともあります。つまり、各部材や設備のコストを見極めつつ最良の選択肢を決めて行くのが設計の進め方になります。

家づくりはとても楽しいプロセスだと思います。我々で今まで設計した住宅でも、みなさん、そのプロセスをとても楽しんでくださいました。要望が形になり、図面になり、そして、工事が始まり、実現する。住宅の建設は一生に一度の大プロジェクトですから、理想の住まいを探すためには、ぜひ、自分にあった方法を選んで、後悔のないようにしてもらえればと、思います。
2009年11月21日

ローコスト住宅はいくらでできるのか?

テーマ:住宅建築
tele-designのブログ>

建設コストは、資材流通の経路および人件費のカウントの仕方が複雑であり、読み解くのがとても困難な領域です。見積書の厚さは数十ページ以上にもなり、そこからコストダウンを有効に行うには、経験と知識が必要とされており、価格設定のメカニズムを十二分に把握しておくことが重要になります。

建築家の設計する住宅は、高くつく・・・という風に先入観を持っていらっしゃる方が多くいます。たしかに、自由に設計をして、豪華な造作家具や仕上げ材を使えば、高級で高額な住宅になります。

じゃあ、安くできる建売住宅が良いか?といえば、それでは納得がいかないでしょう。空間的な工夫もなく、安っぽい仕上げ材でつくれば、それだけ安くできますが、そのような安易な設計を行えば、誰が設計したとしても安くはなりますが、住みやすくて愛すべき住宅にはなりません。
建売住宅であれば、1500万円ぐらいで30坪のものもあるようですが、安くするためにかなり無理をした作り方になっていますから、住まい手に安全と安心を届ける責任ある立場としては、安かろう悪かろうの建築は設計するつもりはありません。

一般に、自由設計でローコスト住宅と呼ばれるものは、おそらく建築工事費としては1700万円~2200万円ぐらいのものになるでしょうか。
設計料込みで、建築の総予算が2000万円~2500万円ぐらいになるかと思います。もちろん、敷地の地盤が悪かったりすると地盤改良費や杭工事費がプラスアルファされます。

したがって物件ごとに諸条件も違うので、そのコストは大きく異なりますが、いくらぐらいでどのくらいのモノができるのか、はなかなか一般の方には理解しずらいものはあるかと思います。

Alley House の工事費は約2000万円弱になります。現場の接道状況が悪く、資材搬入が困難だったため、広さの割には割高になっていますが、地盤改良費も含めていますので、かなり頑張って抑えた金額になっています。


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アプローチから
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内観
>>Alley House

一方、Raum Houseは、工事費は2200万円になります。坪単価でいうと、約66万円です。こちらは敷地の接道状況も良く、高低差のあるスキップフロアの難易度の高い空間ですが、リーズナブルに抑えることができました。


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外観
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内観
>>Raum House

現在進行中のプロジェクト(T邸)は、木造3階建てであるにもかかわらず、
30坪の広さで約1600万円の工事費になります。坪単価でいうと、約55万円ぐらいになります。これはローコストにするための諸条件が揃っていたことと、お施主さんのコストへのご理解が高かったことから、実現できました。


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T邸
spacer


ローコストで安く抑えるコツは様々ですが、空間の面白さを犠牲にせずに、いかにコストダウンを図るかが鍵になります。吹き抜け等をとりますと、空間の容積は大きくなり、工事費が大きくなります。それを建具や間仕切りをへらして大きく空間を確保し、壁工事の量を減らしたり、外壁の性能は確保しつつ廉価な外装材を使用したり、あるいは造作家具工事を減らしたりして、コストを調整していくことになります。

家は一生住むものですから、建設時にすべてを揃えてしまいたくなるのが人情です。でも、逆に言えば収納の考え方や造作家具、そして設備のグレード等に関しては、まずはベーシックに考えて、住みながら改良を加えていく方が、無理をして高額な住宅ローンを組むよりは、安心して住まうことができるのではないでしょうか。
(田島則行)

2009年07月07日

設計の一大イベント「竣工・引渡」

テーマ:住宅建築
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毎日のように雨が降って、じめじめとした日々が続きます。
先月から今月にかけては、東京や神奈川に進行中の物件の現場監理に出かけ、配筋検査や仕上げ検査など行いつつ、2つほど物件が竣工・引渡。その合間に富山県の高岡まで出張にも行きました。

また、同時に3つほど新しい物件が開始、他にも新規案件の現場調査に出かけつつ進行中物件の確認申請も提出。かなり仕事に忙殺されておりました。

「竣工・引渡」は、設計にとって、着工と同じぐらいあるいはそれ以上に一大イベントです。手塩にかけて監理してきた物件を、晴れて施主に引き渡すわけですから、ある意味、とても嬉しいと同時に自分の子供が巣立っていくような気持ちになります。

先月頭に大田区で竣工した物件では、竣工引渡の直前になんと奥様の出産が重なってしまい、僕らよりもむしろ施主が大変でした。
奥さんが出産後数週間の間実家で子育てに専念中、旦那さんは竣工検査や登記、引渡、そして引越を全部一人でこなし、こちらが心配してしまうほどでした。

引越も落ち着き、先日引越し後の家にランチに招待されてお伺いしてきました。
出産後母子ともに健やかで、荷物の片付けも終わり、幸せで静かな日々が始まった様子で安心しました。

近隣が密集した住宅街に建つ家ですが、外側は壁で周囲からは閉じつつ、内側にはコートヤードを通して光がいっぱいに注ぎ込みます。
近隣の目も気にせず、カーテンもブラインドもつけず、プライバシーに守られた暮らしです。

「別荘にいるような」とか、「夜が素敵です」とか、率直な感想を頂くと、悩んで悩んで頑張って設計した苦労も報われ、感無量です。

先週末には、改装・リノベーションした別の住宅を引渡ました。
たぶん昨日には引越をなさっているはずです。どんな引越後の感想を聞かせてもらえるのか、ドキドキしながら楽しみにしています。

独立してからしばらくは、設計という仕事を勢いとバイタリティでこなしていましたが、最近は住宅の設計は繊細で難しいが重要な仕事だとしみじみ再認識しています。

家族という人と人を繋ぐ見えない糸を、我々は設計という仕事を通して「空間」を形にし、その家族のライフスタイルや今後の生き方を左右してしまうような、重要な役割を担っていると思うからです。

人生の一大イベントである住宅建築に携わる者として、これまで以上に一つ一つ丁寧に作っていきたいと思います。(田島則行)

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