1回目のチャレンジは アキバの悪徳絵画販売に引っかかってみよう をどうぞ。

後日、2回目のチャレンジ。
日曜日の午後だったと思う。
一通り買い物も済ませたので、例のギャラリーの前に行ってみる。
まだ日が高かったのを覚えてる。

今回は前回の教訓を生かし、「偽名などを考えておく」「絵について知らないフリをする」ということにした。
またちゃんとカモとして扱ってもらえるよう、販売スタッフ側が喜びそうなアキバらしいキャラクタ設定をしておく。

・アキバに買い物に来た社会人
・仕事はコンピュータ系エンジニア
・独身の一人暮らし
・なので女性とはあまり話す機会がない

ん?
普段通りじゃん。
キャラクタ設定の必要ないだろ、俺。

店の前を通過するが、なぜか今回は女性スタッフが他の客に反応してしまい、こちらに声をかけてこない。
仕方ないので、不自然じゃない程度に店の前を行ったり来たり。
ようやく声をかけてもらった。
お、割と好みの可愛い感じの女性。ラッキー。

スタッフ「こんにちはー。
 絵とか興味ありますかー?
 良かったら絵を見て行かれませんか?」

俺「いやー、絵はよく分からなくて」

ス「見るだけでも構いませんから、良かったらどうぞ」

促されるまま店に入る。
受付で住所と名前を記入する。
よし、あらかじめ適当に考えておいてよかった。
第一段階クリアー。

ス「じゃ、お二階にどうぞ」

俺を勧誘した可愛いスタッフも後を付いてくる。
どうやら担当者になったらしい。

二階の絵を見た後、「三階にもありますので、どうぞ」と案内される。
まぁ、何があるかは知ってるんだけどね。

それぞれの絵には作者名とタイトル、
そしてシルクスクリーンには100万前後の価格、油彩画は価格応談と書いてある。

一通り見た後、

ス「どうですか?
 気に入った絵とかありました?」

俺「いやー、どれも綺麗な絵ですよね。
 いいですねー。
 でも結構な値段するんですね。」

ス「そうですねー。
 でももしお金の問題が無いとしたら、どれがお気に入りでした?」

ポイント1: 気に入った絵を一点選ばせる
これがまずこの絵画商法のポイント。
この後に、購入まで至らせるのがこの商法のテクニック。

しばしにこやかに話しつつ、選ぶのを避けていた。

この日の展示のメインは、なにやらラッセンもどきの海洋動物+自然的なものと、ヒロヤマガタ的なポップなアート。
どちらも好みではないので選ぶものが無かったのも事実だが。

どうにも進展しないので、適当に一点選んだ。
山をモチーフにした油彩画で、壮麗な山に稲光が落ちているなかなか雄大な絵。
油彩画なので、価格「応相談」と書いてある。
シルクスクリーンではなく油彩画を選んだ場合はどうなるんだろう、という興味もあった。

俺「どれかと言われれば、これですかねー。」

ス「すごーい、センス良いですねー。
 実はこの絵は一番の目玉なんですよ。」

ポイント2: 客の選択を褒める
まぁこれは客商売全般に言えることだと思うが。

ス「ここではライティングが悪いので、二階のライトがある場所に移動しますね。」

俺「え、いえそこまでしなくてもいいですよ。」

ス「良い絵は良い状態で見ないともったいないですよ。」

みたいなことを言って、わざわざ絵を外して移動する。

ポイント3: 客の目の前で頑張っている姿を見せる
これも、後で断りづらくさせるための布石になる。

二階のスポットライトがある場所に架け、その前のイスに座りながら商談開始。
と言ってもほとんど雑談程度。

ス「今日はお買い物ですか?」

ス「服のセンス良いですよねー。
 秋葉原じゃ見ない感じですよ。」

ス「えー、まだ二十台に見えますよ。」

ってな感じで、あからさまなよいしょトーク
まぁ可愛い女性と話せるのは楽しいので、しばし歓談。
その合間に「絵はいかがですか?」みたいな話は出るが、適当にはぐらかす。

やがて女性スタッフは席を外し、別の女性を連れて戻ってきた。

ス「すみません、別の業務が入っちゃいまして。
 これからはこちらの先輩に代わりますので。」

うーむ、残念。
行ってしまった。
おそらくまた店頭で客を呼び込む仕事に戻るんだろう。

残った先輩の方は、20代後半だろうか。
明らかに俺より年下だが、なにやら経験に基づいた自信を感じる。
「絶対買わせてやる!」的なオーラが出ている。
早速雑談+商談開始。

雑談の中で、
・以前は広島で同じようなギャラリーに勤めてた
・でも絵が必要な人には行き渡ってしまったので、仕方なく東京に出てきた
とか言ってた。
要約すると「広島ではもうカモがいないから、東京でカモ探し」ってことなんだろう。

しかしこちらの女性がすごかった。
ほとんど一方的にしゃべりっぱなし。
こちらは「ええ」とか「そうですね」とか相槌を打つ程度。

またポイント1の「一点選ばせた」ことについては、元々は「どちらかと言えばこれかな」程度だったのに、
やがて
「あなたはこの絵が気に入ったんですよね。」
「この絵が好きだって言いましたよね。」
「この絵が欲しいって言いましたよね。」
とレベルアップしながら刷り込んでくる。
何度も言われると、「あー、俺言ったかなぁ。」という気になってくる。
軽い洗脳だね、これ。

先輩スタッフ「実はこの絵なんですけど、今回作者が個展を開くために来日してるんです。」

俺「そうなんですか、有名な人なんですね。」

先「ええ、それでここだけの話なんですけど…。
 実はこの絵は作者が手荷物として持参したものなので、美術品としての関税がかかってないんです。」

俺「へー、そういうこともあるんですか。」

先「はい、それで私は上に交渉しました。
 この絵はお客様のためにあるんだと思い、絶対買って下さるからと交渉しましたら、本来なら300万なんですが今回に限り150万でいい、とOKが出ました!
 じゃ、支払方法はどうしますか?

おいおい、俺買うなんて一言も言ってないよ。
ちなみにここでもポイント3の「あなたのために頑張っている」感を出している。

ポイント4: 「今回に限り」「お客様だけ」のサービスで迫ってくる
人間誰しもこの手の交渉には弱いものです。

やがて業を煮やしたのか、分割払い前提で話を進めてくる。
手元にはローン会社の分割払いの早見表がある。
元金と分割回数ごとに一覧表になってる分厚い冊子。
へぇ、こんなのあるんだ。

先「お客様の場合ですと、このような支払いになりますね。」

とその早見表を押し付けられる。
初めて見るものなので、パラパラめくってみる。
すると、特定のページに開きぐせが付いている。
どうやら80万前後の商品が、この店のメインの価格帯らしいことが分かる。

ちなみに、この手の相手に対して「お金が無いから」「飾る場所が無いから」などの断り文句は何の意味もない。
向こうからしてみれば、毎回言われるFAQになってる。
「分割払いだから負担かかりませんよ」
「飾らずにしまっておくだけでも、後で資産になりますよ」
みたいに軽くかわされる。

こんな感じで押しの強いトークが続く。
かれこれ商談開始から3時間近く経過している。
その間、何も飲み物なし。
コーヒーどころか、水も出してくれない。
相手のスタッフは交渉と称して中座するたびに水分補給してるんだろう。
こちらはかなりノドが乾いてくる。
疲れて判断力も鈍ってくる。

ポイント5: 持久戦に持ち込む
これもポイント。
そのうちに、「この状態から開放されるなら買っちゃうか」とか考え始めてくる。

やがて本当にノドが乾いてどうしようもなくなったので、「あー、すみませんそろそろ帰らないと。」と席を立つ。
飲み物も出さないので半ば腹が立っていた、というのもあるし。
相手はポカンとした顔をしていたが。

店を出るまで、「もう少し話しませんか」「じゃあせめて絵葉書でもいかがですか」みたいなことを言われるが、強引に振り切ってくる。
外は真っ暗になっていた。
時計を見ると、かれこれ4時間近く経過していた。

対象: 悪徳絵画商法
結論: 危険性は無いが、かなり強引に迫ってくるので要注意。


まぁ暇は潰せたが、冷やかしでこの手の画廊に入るもんじゃない、ということが分かった。
次には飲み物持参で行くことにしよう。

えー、また行くのか?