皆さんは先ず、インスリンという言葉はご存知でしょうか。
インスリンは人間が生きてゆく上で不可欠なもので、すい臓で作られています。ご飯など炭水化物を食べると、血液中にブドウ糖が増えて行きます。そのブドウ糖を分解して体内の筋肉などにエネルギーを与える役目をしているのがインスリンです。
インスリンが無ければ体内の血管にはブドウ糖だらけになって糖尿病になります。暴飲暴食などですい臓の機能が低下したものはⅡ型糖尿病、何らかの原因ですい臓がインスリンを適量を作らなくなった場合はⅠ型糖尿病。Ⅰ型はまず治りません。
私はⅠ型糖尿病という病気と長い間付き合っています。
さて、先月末(2009年10月27日)にこんな事件がありました。
【インスリン大量投与、夫殺害容疑 福岡の50歳女逮捕】
インスリンを投与する。
血糖値が下がる。
※怖いこと
インスリンを投与して、体内のブドウ糖が減ると、体は脂肪を燃焼させ始めます。それで急激に痩せたりするそうですが、怖いのは脳です。
脳には脂肪が無いのです!
つまり、インスリンを大量に投与すると脳と神経がやられます。
正常の人は、空腹時の血糖値が70~120(mg/dl)ですね。それ以上だと糖尿病です。
オシッコに糖が降りたら一時的でも糖尿病です。
(おしっこの糖はチョコレートや甘いものを大量に食べたとしても降りません)
低血糖の場合の血糖値
50~70 で空腹感、あくび、動悸
40~50 無気力、倦怠感、計算力低下
30~40 意識消失、異常行動
20~30 痙攣、昏睡
20未満 神経系麻痺 それにより心臓発作など
私はこれを毎日朝晩20単位腹部に(自分で)注射しています。
これを血管に注射すると大変なことになります。事件の女性は夫に写真のスティック型インスリンを2本丸々投与したみたいですね。
2本と言えば2週間から3週間分でしょうか。通常は腹部の脂肪が多い所に打ちますが、ひょっとすると血管に注射したのでしょうか。簡単に2本打つと言っても、一回に投与出来る量は60単位で一本が300単位。2本分全て投与するには、10回も注射をしないといけません。
被害者は痙攣を起こして脳をやられ、その連鎖で中枢神経が麻痺して心臓発作を起こして亡くなりました。
スティック2本を使ってもたったの6ミリリットル。それだけで人の生死に関係すると考えると、人間や生き物は微妙なバランスの中で生きているのですね。生命の不思議すら感じます。
この事件は加害者に対して同情すべきところはあると思います。
しかし、どんな事情であれ「殺意」を持ってやれば殺人だし、こんなことをすれば死ぬかもしれないという「未必の故意」であっても、死ぬかもしれないという意識が「けん欠」していても人を殺めてしまったのは事実。
悲しい事件だと思いました。(詳しくはニュース参照)
私も過去に酷く落ち込んだことは幾度となくあります。その時に、机に並べたインスリンのスティック(5,6本までは一度に持っていられる)をジッと見つめた事もありました。後から思うと恐ろしいですね。
けれどもインスリンで自殺にせよ殺しにせよ、実行するのはやめておくべきだと思います。この事件では被害者が死にましたが、たぶん殆どの場合は、強度の神経失調のまま廃人のように生きることになると思います。
もし風邪でもないのに、空腹で、こめかみが締め付けられる感じで、悪寒が走って頭がすぐれない状態だったら低血糖かもしれません。(風邪の引き始めに似ているでしょうか、大体空腹の状態のはずです)
低血糖だと思ったら、自動販売機などで缶コーヒーを飲むかコンビニでオニギリ(炭水化物)を一つ食べましょう。それだけでも血糖値が50~100程上昇します。その後楽になったら低血糖だったと思われます。
糖尿病の人も、そうではない人も、インスリンの取り扱いにはくれぐれも注意して欲しいものです。
インスリンと糖尿病については過去の記事を見てください
・(糖尿病 )糖尿病患者と話す時注意する言葉
・(糖尿病 )「病院に行ってきました」--糖尿病と戦う--
・(糖尿病 )知ってますか「糖尿病を判断する検査」
・インスリンの投与と血糖値の測り方(保存版)
①血糖値測定1/2
②血糖値測定2/2
③インスリン投与