昨日の仕事の帰りに久し振りにパチンコをした。
もう、競馬は止めたから、給料前に小遣いが12000円も余ってた。
なんだか疲れて帰りたくなかったので、フラっとパチンコ屋さんに寄った。
わたしは、パチンコは必殺仕事人しかしないのだ。
夜八時、大阪天六(天神橋筋六丁目)のパチンコ屋さんは夜でも賑やかだ。
ホールを歩くと、あったあった。
私は必殺仕事人とは何故か相性がよく、総合的には勝っている。
(一万円でだめなら帰ろう)
私はいつも賭ける前にすることがある。
賭ける金額を決めて心構えをするのだ。
(よしっ!心構えは問題無いぞ、さぁってどれに座るかな)
ちょうど太ったオバハンが大当たりしていた台が目についた。
フッとその左の台を見ると、本日25回、昨日34回、一昨日36回の台が空いていた。
どうやら今までこの台で打っていた人は、大漁に酔いしれて帰ったみたいだ。
(250回転か、この台は25回当たりがあると言うことは後5、6回当たりが残っていると見た!一万円打つと450回転か、本当に優秀な台なら必ず来るな。)
そう考えて、いつもの様に攻め方を覚悟してから座った。
私が座ると、隣のオバハンは、私をチラッと見て軽く軽蔑する目を向けてきた。
(さっきあれだけ出てたのよ、出るわけ無いでしょ、馬鹿ね)
と言われた感じがした。
私は、紳士なのでこのようなことには動じない。
千円を投入した。何事も起こらずに二千円目。
隣のオバハンは、ブルジョアは貧乏人の相手をしないわよ、と言う顔をして優々と打っていた。
(クソッ、しかし、実績の世界だ、まぁ楽しもう。)
三千円目になっていた。
しかし心には余裕があった。こう言う時は負けない筈だ。
隣から中条きよしの演歌が流れてきた。
(オバハンめ五回目か)
必殺仕事人は五回目の当たりで演歌が流れる。カラオケのように歌詞付きでだ。
私は、隣の歌に合わせて声を出して歌った。
中条きよしの・・・・・何とかという演歌だった。(忘れた・・・)
(なぁに、ホールはうるさいから歌っても目立たないさ。)
隣でオバハンが私が歌っているのに気付いて少しムッとしていた。
(わたしの歌よ。隣で歌うな)
と言う顔だった。
オバハンの連ちゃんは五回で終わった。
オバハンは余裕酌酌の顔で、私越しに店の売り子さんに手を上げて
「ちょっと、カフェオーレ頂戴」
と頼んだ。
勝っている者が出来る事、それは売り子に飲み物を頼む事だった。
(悔しいが仕方ない)
私の方は八千円目だった。
突然、
左に「人」でザクッ、右に「仕」でザクッ、そして真ん中に「人」でザクッ!
「必!殺!仕!事!人!登!場!」
主水か鉄か秀かを「!!」ボタンで選ぶ。負ければ道具が落ちてくる、勝てば光がさしこむ。
出るはずがないと思い込んでるオバハンは「何っ」と言う顔をして驚いた。
私は握り拳で行けーと「!!」ボタンを押した!
サッと光が差し込み、「パラパー・」
ヤッタゼ! なんだ単発か。
隣のオバハンはギョッと驚いたが(なんだ単発ね、まぁそんなもんでしょ)と言う顔をして自分の台に顔を戻した。
(ふん、今に見ておれ・・・俺様がこんなものだと思うなよ・・)
大当たりが終わり時短100回になった。
36回転目、なんと再び「必!殺!仕!事!人!登!場!」
俯きながら魂を込めて再び「!!」ボタンを握り拳で、ゴン!
「パラパーーーー」
(クックックック・・・!)
俯いた顔をそのまま回して、オバハンのほうに向けて笑ってやった!
オバハンはほっぺをヒクヒクさせて、目が引きつった。
しかし、オバハンにはまだ勝っている余裕がある。
冷静を装って自分の台を見つめていたが、玉をつかんでつぎ込む動作には明らかに動揺の様子があった。
(ふふん。いまにみておれ、こっちは確変だ。ギャフーンと追い抜いてやる)
オバハンは6箱出して、そのうちの一箱をつぎ込んでいるところだ。
私の台は次も確変で3箱目。
そして次も確変。
これで4箱目だった。
オバハンはソワソワソワソワ落ち着かずにとうとう一箱を無くして残り5箱。
そして!
私の台は、2が左右に止まった。
その時、
キュインキュインーーーーーー。
(クックックック!、確変確定!・・・・・勝った!)
その音を聞いて、オバハンはがっくりと肩を落とした。
そして、途中でやめて4箱と半分を交換するために席を立って帰った。
私は勝負に勝った余韻に酔いしれた。
その時!
「ホータールノーヒカーーリー・・・・」
「え”っ!」
店員が来た。
「これが終わったらおしまいです」
「確変確定だよ、保障はないの?」
「当店では保障はゴザイマセン!」
勝ったのになぜか負けた気分でとぼとぼとパチンコ屋を後にした。
おしまい!