2勝2敗のタイで迎えた岡田美術館杯女流名人戦最終局は、202で後手の
里見香奈が勝ち、体調不良の時にも唯一守り抜いたタイトルを防衛。
8連覇の連勝記録を更新しました。

これに勝てばタイトル奪取3期で女流四段に昇段となる先手上田初美は
得意のイビ穴に。対する里見香奈は伝家の宝刀ゴキゲン中飛車美濃に組みます。
金銀3枚で囲う先手に、後手は中央から銀を繰り出しての戦い。 先手は銀を
釣り上げて、金をあげて四段目に浮いた飛車に当てます。
いったん8筋に回った後手飛車。先手は2筋をついて、2二に歩打ち。角で取れば
飛車が成り込もうという作戦。
しかし後手は銀金交換を行い、引いた角で歩を払った後、突っ込んでくる飛車には
金打ちでしっかり守ります。

持ち駒が歩1枚の先手に対し、後手は飛車を回して攻め込むチャンスを狙い、さらには穴熊の急所でもある端攻めをも狙います。
なんとか歩を集めた先手は、邪魔な飛車を後手角の筋の5五に導き出し、
角を回し、角交換から角の打ち込みから馬を引いて守りを固めます。

後手は先手陣に歩の打ち込みで、これを相手すれば角の打ち込みから
馬が作れる状況。もしと金にして取れば、今度は飛車成りができる態勢に
持ち込みます。
先手は飛車成りを許す代わりに逆に端攻めの態勢を作ります。
後手が角打ちで大駒2枚を活用しようとすると、先手は角成りで香車を奪い、
端攻めを強化しようとしますが、馬が閉じ込められる結果に。守り駒であるはずの
馬が押さえ込まれたことになり、ここで状況は後手有利と傾きます。

後手の角を追い払おうとする先手ですが、逆に角を先手玉のこびんの位置に
つけることになり、さらに事態は悪化。成り込んだ竜で持ち駒を増やす後手。
先手は竜と角の筋にある玉を9八にずらせますが、後手は奪った桂馬を貼って逃げ道封鎖。
さらに竜を近づけて攻めかかろうとする後手に、先手は飛車をぶつけますが、
迷い無く竜飛車交換。後手はすぐに飛車を打ち込んで攻めを継続します。

2枚香車で端攻めの姿勢を見せる先手ですが、端の駒交換は、自玉に対する
攻めも考えられるところで、決断が出来ません。
なんとか働けない馬を移動させて守りに利かせようとする後手ですが、あっさりと
歩で遮断。後手はさらに歩と香車を5筋に貼って先手の守り駒をはがしに
かかります。

5筋を突破されてはだめと、先手は5四の位置を奪い取って、飛車張りから
香車と歩をただで奪い取ろうとしますが、ここで後手は9筋に貼ってある
先手の香車を桂馬で奪い取り、飛車頭に香車を打ち込んで阻止します。
この後、飛車交換を行う先手でしたが、後手は再度の飛車張りで攻撃の手を
緩めず、駒を足していきますが、先手上田初美はまだまだあきらめてはいません。
必死の受けをおこないつつ、後手陣に飛車を打ち込んで後手玉の横への
移動を阻止しながら、香車桂馬を後手手玉頭である8三の地点狙いに打ち、
逆転の機会を狙いますが、後手里見香奈は落ち着いてこれをかわします。

飛び道具の小駒で後手玉を攻める先手は馬を奪い取り、玉もおびき出しますが、
あと一手、決め手の手が見いだせません。逆に後手は小駒の持ち駒が増え、
手番が回れば飛び道具で一気の寄せが見いだせそうな状況。
目が離せない展開に、名局賞だという声が飛んでいます。

いつの間にか逃げ道が広くなった後手玉。持ち駒の少ない先手にはこれを
阻止するだけの余裕がありません。
逆に逃げ場のない先手玉はなんとか守り切ろうとしますが、どこまで
持ちこたえられるか。
手番の先手はなけなしの駒を使って逃げ道阻止しようとしますが、逃げ切れば
勝ちと読んだ後手も阻止駒を払って迫る先手の攻め駒をかわしていきます。

ついに寄せがなくなり手番が回った後手は攻めを決行。200手を越える
攻防もついに決着の時を迎えました。


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すでに上田初美が挑決戦進出を決めている、マイナビ女子オープン本戦準決勝、
残る1戦、里見香奈VS甲斐智美の対局は、117手で先手の里見香奈が勝ち、
挑決戦進出を決めました。くしくも挑戦者決定戦は、現在女流名人戦五番勝負を
最終局まで闘っている両者の対決となりました。

どちらが勝っても、挑戦者決定戦は元女王対決となる、奪還争いの戦いとなります。
先手里見香奈ゴキゲン中飛車美濃に後手甲斐智美はイビ穴を組みます。
先手は中央から銀を上げて急戦模様。後手は8筋の歩を突いて隙あらば飛車が
成り込もうという形。
先手は飛車が浮いて8六に上がった歩を守りながら7筋を突っかけ、守りに
上がった先手の飛車に対し、歩の交換から飛車頭に歩を打ち、7一に飛車を
追いやります。そのまま先手は飛車を回して攻め込もうという態勢。

後手がその隙を狙って角を2四に上げると先手は角を下げて迎えますが、
後手は角交換から飛車狙いの角の打ち込み。かわす先手ですが、後手は
穴熊の堅さを武器に角銀交換に出ます。飛車が動いたので後手は飛車を前面に
上げますが、簡単に成り込みは許さず、歩を貼って守りますが、後手は飛車を上げて
8筋からの成り込みを狙います。
対する先手も飛車を8筋に回し、歩の守りと共に成り込みを決めます。
後手は取られそうな桂馬を先に飛ばしてから飛車の利きを止める歩を打って
あくまで飛車の成り込みを狙います。

先手は角2枚を並べて飛車の侵入阻止。同時に2枚角は攻撃にも効いており、
後手はこれを止める方が先決。角道を先手の歩で止めさせてから、なけなしの
持ち駒である銀を貼ると、先手は躊躇無く角銀交換。それからおもむろに香車を
取って持ち駒を増やします。
後手は取ったばかりの角打ちで何とか飛車の成り込みをはかりたいところ。
しかし先手玉には遠く、その間に先手は穴熊崩しを開始してきます。

後手は成り込みたい飛車が身動きできない状態。それを狙って先手は
飛車か馬のどちらかを奪ってしまおうという手に出ます。これは厳しい攻め。
うっかりすると、両者どちらの玉にも王手がかからないうちに投了という
事態も考えられる場面となってしまいました。

これしかないと、後手甲斐智美は飛車を犠牲にして角香を取りますが、
先手里見香奈はさっそく2枚飛車の攻め。受ける駒がない後手玉は
蒸し焼きされるのも時間の問題となりました。
取ったばかりの駒で守りぬこうとする後手ですが、先手はすでに終局図が
見えているのかもしれません。

後手が一手余分に持っていれば、桂馬を奪って角を利かせての攻めも
あるところですが、その余裕はなさそう。
先手は後手の守りに利いている角をそらせた後、飛車を叩きっきり、
一気に寄せに入り込みました。なんとか香打ちで竜をそらせた後手ですが、
これが攻めにも利くことに。一瞬の隙を狙っての待望の桂打ちによる
先手玉への王手で先手玉も危うい場面が見られましたが、そこは読み筋で
あったか、後手が先手玉に詰めろをかけた瞬間に見事な寄せを決めてしまいました。


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マイナビ女子オープン本戦準決勝第1局、上田初美VS西山朋佳の対局は、
157手で先手の上田初美が勝ち、挑戦者決定戦に進出しました。

先に入室した西山朋佳が下座に座っているのを見て、遅れて入室した上田初美は
奨励会三段に敬意を表して上座をすすめるが、女流棋戦と言うことで、西山は
固辞。結局上田が上座に座ることに。

先手上田初美、後手西山朋佳、お互い角道を開けた状態から、後手はすぐさま
一手損角替わりに。その後後手は向かい飛車に。
先手は矢倉、後手は美濃と囲います。
先手は右銀・桂を上げて中央狙い。後手も右桂を上げて迎えます。
先手は飛車と金が右、玉の守りが金銀2枚のみ、中央に銀を出すという
ばらばらな印象で、そこを後手は突こうというところ、中央の銀を目標にして
追い返します。

ようやくもう一枚の金を玉側に寄せた先手ですが、後手は桂馬を上げて
陣形を乱そうというところ。さらには銀を飛車近くまで伸ばして。今度は
飛車を目標に攻めようとします。守りに飛車を4筋に回したところで
後手は角の打ち込み。先手の飛車には紐が付いているので、ここは放置。
逆襲で6筋から先手の攻めが始まります。

6四に歩を打つ先手。これを後手金で取れば飛車金両当たりの角打ちがあるため、
後手はこの歩が取れずに拠点を作られてしまいます。そこで先手も角の打ち込み。ぎりぎり守ろうとする後手ですがやや不利な状況。
先手は後手が打ち込んだ角を何とかしたいところですが、後手は角成りで
3筋からの攻めの継続が予想できます。

先手は銀桂交換で手に入れた桂馬を打ち込んで、後手の飛車を追い詰め、
とうとう飛車を奪い取ります。すぐに飛車を打ち込み、瞬間的に駒損だった
ところを回復。さらには馬交換で飛車成りとし、先手の優勢が続きます。

後手は攻防に利く角打ち。しかしあっさりと歩で止めた後、竜が後手玉近くに
移動して先手は猛攻の準備に入ります。
何とかして角の筋を通したい後手は角飛車交換で打開を図りますが、
持ち駒の少ない先手としては駒が手に入ることは願ったり叶ったり。
ただちに桂銀両当たりにもらったばかりの角を貼って攻めの継続を
はかります。

後手は両取り受けるべからず、と竜当たりに桂馬打ち。この竜が移動すれば、
銀を取られた後に角金両当たりの飛車の打ち込みができて、反撃が可能と
なります。
しかしまだまだ後手が攻め切るには手数がかかると読んだ先手は
竜切りの
大技に出ます。
交換した桂馬で王手金取り。着々と持ち駒を増やし、後手玉を追い詰めていきます。

交換から持ち駒を大量に得た後手ですが、手番が回っても先手玉への
一気の攻めができません。飛車を打ち込んでも先手玉の守りが堅くなるだけ。
ぎりぎり守り抜こうと守り駒を増やす後手に対し、先手は読みきれなかったのか、
いったん駒を引きます。

玉を安全なところに逃がす後手。攻撃が始まってはたまらないと、先手は
自陣の守りを強化します。打ち込まれて成られた後手の竜を追い返し、
もう一枚の角を貼って成り込ませた先手ですが、持ち駒不足で継続の
攻めができません。
そこを見越しての先手守りの金を釣り上げての金銀両当たりの桂打ち。
しかしまだ攻め切るには遠いと判断した先手はあえて誘いに乗ります。

先手上田はカウンター狙い。それを知る後手西山朋佳は交わしながらの攻め。
しかし持ち駒を得た先手はカウンターパンチが見事に決まり、一気に後手玉を
追い落としにかかります。
一歩間違えれば大逆転もあり得た中、最後は冷静に逆転を許さない
攻め手順を選んだ上田初美が辛勝しました。

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里見香奈女流名人が1勝を返し1勝2敗とした、岡田美術館杯女流名人戦5番勝負
第4局は、91手で先手の里見香奈が勝ち、通算成績2勝2敗の五分とし、
決着は最終戦にもつれこみました。

先手依然角番の里見香奈、石田流3間飛車美濃に対し、後手奪取に王手を
かけ、勝てば女流四段昇段も決めることとなる上田初美、左美濃から銀冠に
囲ってからようやく飛車先を開けて居飛車に。後手が先に1筋の歩を突き
こしている分が戦いにどう影響するか。

先手は浮き飛車に角を4六に上げて6筋・7筋を目標にします。
対する後手も飛車を6筋に回して守りに入ります。
一転先手は2筋の歩を上げて角筋を利かせての攻めの態勢。6筋を戦いの
場としていた後手は意表を突かれた形となり、これは引かれないと、6筋を
伸ばし、桂馬交換から銀交換、さらには飛車角交換と 出ざるを得ず、
5五角と好位置を決めながらも、先手はいつでも飛車の打ち込みが出来る
態勢となり、金が離れ駒となっている分、やや後手が不利な体勢となっています。

先手は角が当たっている飛車をあえて後手角が玉のこびんに当たっている
筋に回して受けますが、ここでの交換は不利と見て、後手は数少ない持ち駒の
銀張りで飛車狙い。しかし先手は飛車取りを放置して後手陣に飛車の打ち込み。
里見香奈にはすでに後手玉の詰み筋が見えているのかもしれません。

ここで後手上田初美は玉の早逃げ。しかしこれは端攻めの香車をふさぐ
位置にもなるので痛し痒しという所。先手はすかさず端攻めの逆襲。
後手は玉の逃げ道を広げようとしますが、そうは許さない先手は端攻めを優先。
後手は2筋の歩を伸ばして先手玉正面に迫り、意地の張り合いとなりました。

先手は後手玉の逃げ道封鎖。対する後手は先手玉頭狙いの角打ち。
同時に飛車の成り込みをも阻止する手。
ここで先手は2枚並んだ角の1枚を取ろうと飛車を回します。
攻め駒が足りない後手は角を逃がしながらの香車取り。先手はノータイムで
角を1枚奪い取ります。

後手は飛車が手に入った物の先手玉を寄せきるにはまだ詰めろがかけられない。
それを見越しての先手からの詰めろの歩打ち。
後手は先手玉に香車で王手をかけますが、これは逃げ切られそう。
どうやら先手勝ちの態勢に入ったようです。
先に書いたように、飛車を見捨ててのもう一枚の飛車の打ち込み時点で
寄せきる図が見えていたようです。

必死で逃げる上田初美ですが、読み切った里見香奈の前では無力に等しく、
最後は一方的に寄せきられてしまいました。

挑戦者上田初美が2連勝で迎えた、岡田美術館杯女流名人戦第3局は、
84手で後手の里見香奈が1勝を返し、通算成績1勝2敗で第4局に
もつれこみました。

先手タイトル奪取に王手をかけた上田初美、居飛車の出だしに。角番で
後がない女流名人里見香奈女流五冠は、伝家の宝刀ゴキゲン中飛車を
抜きます。対する先手は超速銀で迎えます。

先手は矢倉模様。後手は美濃模様から9筋の歩を伸ばします。
すると先手は銀を上げ、角の紐付きで後手が伸ばした歩を奪い取ります。
こうなると美濃に構えた後手が戦線に近くなるだけに不利。ということで、
後手は中央突破を図り、歩の交換から金を延ばして金交換で後手が伸ばした
飛車に金を当てて守りますが、後手は飛車を引かずに銀で支えて、飛車金
交換でも構わない構え。ここは飛車を取れば角交換から先手玉の守り駒が
一気になくなるので先手としても悩むところ。

先手は飛車は取らずに銀交換を選びます。そのまま角交換まで進み、
先手はさらに飛車銀交換でいったんは駒損に見えながら、その後に
金を釣り上げての飛車金両当たりの飛車打ちがあります。
受けが利かないなかで、上田初美は苦渋の決断でその筋を選択。
里見香奈にとっては願ったり叶ったりの猛攻が開始されました。

この後は里見の一方的な攻め。最善で守ろうとする上田ですが、すでに
勝負は決していて、すべてが焼け石に水。里見の完勝譜ができあがりました。