小学校の遠足

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長女サヤリの通う小学校の日帰り遠足があった。

この小学校では1学期に1回日帰りの遠足がある。

今までにアルーシャ近郊にあるスネークパーク(ワニ・ヘビ園)や国立博物館に行ったりしていた。

アルーシャは大人にとっても子供にとっても、とにかくエンターテイメントの少ない町だ。

ある時、学校の事務担当のジョイスが

「アルーシャって本当に行く所がなくて、遠足の企画も大変なんです」という話をしていて

「国立公園に行くっていうのは、どうですか?よければ私の会社でお手伝いしますよ」

と提案してみた。

その提案が通って、アルーシャ国立公園への日帰り遠足が実現した。

参加したのは5歳~7歳の子供たち32名+先生と事務員6名の計38名。

マイクロバス1台を貸し切って、ドライバーの他にフレディがガイドとして同行することになった。

フレディは遠足前日に学校へ行って、生徒たちにブリーフィングをして宿題を出した。

タンザニアにはどんな国立公園がありますか?

BIG5って何?アルーシャ国立公園にはどんな動物がいますか?

国立公園でしてはいけないことは?

アルーシャ国立公園から見えるアフリカで一番高い山の名前は?などなど。

遠足の後、みんなに答えてもらうことにした。

遠足当日、いつもの学校解散時間の3時過ぎにフレディに電話してみると、

全然つながらない。

心配になってジョイスの携帯に電話をしてみた。

「ママサヤリ、全て順調だから安心して!でもね、たった今国立公園のゲートを出たところなの!」

3時に学校解散のところが、この日は5時近くになってしまったようだ。

家に戻ってサヤリに「今日の遠足、どうだった?」と聞いてみたら

「ママ、カバはフラミンゴを食べるんだよ!知ってた?」と興奮気味に話す。

「カバはね、夜になると水から出てきて、フラミンゴを食べるの」

「そうなの?あとはどんな動物がいた?」

Black and White colobus monkeyとか、ブッシュバックとか・・」

今までにサヤリの口からは聞いたことのない動物の名前が出てきて、

彼女なりに新しいことを学んだんだな、と思った。

あとは「トイレがいーっぱい並んでたよー」

「バスのドアがオートマティックに開くの!」

そっか、そういうことにもびっくりしたんだな・・・・。

フレディが撮った写真も見せてもらった。

ランチにみんながホットドッグをほうばっている写真や、

レンジャーと一緒に敬礼をした子供たちの写真など、どれも楽しそう。

フレディが「ねえ、サヤリはドッグをランチに食べたよね?」

「ドッグじゃなくてホットドッグ!」

「でもホットじゃなかったから、ドッグでしょ!」

娘たちは真剣な顔で「ホットドッグだってば!!」と何度も言い返していた・・。

翌日ジョイスに「昨日はどうでしたか?」と聞いたら

「とっても楽しくて最高だった!どうもありがとう!」

と言ってくれた。

「私も国立公園には初めて行ったのよ。あんなに近くでキリンが見れて、興奮しちゃったわ!」

ある母親の話では、息子が家に帰ってから、夜まで国立公園の話を興奮して話続けたとか。

疲れが出たのか、翌朝寝坊してスクールバスに乗り遅れた生徒もいたらしい。

遠足の後に迎えにきた父兄はフレディの姿を見て

「親も参加できたなんて知らなかった。次回はぜひ参加させてくれ」と言ったそうだ。

そう、タンザニア人は大人でも国立公園に行ったことがない人がたくさんいるのだ。

そして国立公園の存在すら知らない大人も、全国にたくさんいる。

有名なセレンゲティやンゴロンゴロのあるタンザニアだから、タンザニア人はみんな

よく国立公園に足を運んでいると思ったら、大間違いである。

仕事で一緒だったタンザニア人ドライバーに、小学校の遠足の話をしたら

「小さい頃から国立公園に行くチャンスがあるのは、ラッキーなことだよね」と言っていた。

「僕も中学校の時に、ンゴロンゴロへ遠足に行く話があったけど

親に話をして参加費を出してくれと言ったら、明日食べるものがあるかもわからないのに

そんな無駄なことにお金を出せないと言われて行けなかった。

ほとんどの子供が同じ理由で、親が参加費を出さなかったよ。」

確かに衣食住さえ不安定な環境で、国立公園に遊びに行くなんていう話は

贅沢でムダ使いとしか言えないだろう。

「それに、タンザニア人はなぜお金を払って野生動物を見にいくかが、わからないと思うよ。

普段から野生動物と隣合わせの環境に住んでいる人も多いし、

野生動物は保護するものというより、

畑や家畜を荒らす邪魔者と思っている人が多いんじゃないかな。」

タンザニア人から見ると、高い入園料を払って国立公園を廻る外国人観光客の姿は

どのように映っているのだろう?

お金を払ってキリマンジャロ山に登る観光客のことも、きっと理解できないだろう。

タンザニア人にとっては「観光」という概念がほとんどないような気がする。

日本人であれば、週末や休暇ができたら、楽しんだりリフレッシュをするために

旅行をするのが一般的だが

タンザニアの場合、お金に余裕のない人がほとんどである。

旅行をするとすれば、親戚や友人の冠婚葬祭やお見舞などが目的だ。

ただ単に「どこかへ遊びにいく」という概念はないようである。

大学院生だった頃、私はアルーシャ国立公園でインターンシップをした。

テーマは「国立公園と周辺に住む人々の関係」。

その時に実施したアンケートで、

ほとんどの村人たちがアルーシャ国立公園に遊びに行ったことがないとわかり

びっくりした。

そして、国立公園ができてしまったことで、焚火のための木や

薬草が自由にとれなくなってしまったことに不満を持っている人もいた。

当時の私には、これは大きな発見だった。

自分たちで車を借りて国立公園へ行くのは、確かにお金がかかる。

でも学校の遠足などをきっかけにして

自分の国が世界に誇れる素晴らしい資産をたくさん持っていることに気づいてもらえたら、

それは素晴らしいことだ。

今回の遠足が楽しくて、更に子供たちになんらかの刺激を与えたとしたら大成功。

そして、子供たちが家で遠足の話をして、親たちも国立公園を身近に感じてもらえたら嬉しいと思う。

うちの子供たちを見ていると、こんなに若いうちから

世界的に有名な国立公園へ行くことができて、

なんてラッキーなんだろう!と思わずにはいられない。

タンザニアの子供も大人も、もっと気軽に国立公園へ出かけるようになる日が

近い将来、きっと来ると信じている。


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