昨年11月、パリで同時多発テロが発生しました。その事件を受けて、私は、「テロ対策には何よりも情報収集である。日本にも、アメリカのCIAに匹敵するような諜報機関を設置すべし」と訴えました。
現在の日本の諜報能力は高いものではありませんが、歴史を振り返ると、諜報作戦で大おいなる成果を挙げた時期があるのです。
その舞台は、日露戦争。諜報活動の中心を担ったのが、明石元二郎です。

明石は、英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語を駆使しながら、ヨーロッパで情報収集に尽力します。しかし、明石の活躍は情報収集だけに止まりませんでした。日露戦争が始まると、革命勢力に資金援助をしたり、革命勢力同士を協力させたりしながら、ロシア国内を情勢不安に陥れることを画策します。結果、ロシア各地で暴動やストライキが多発。とても戦争を継続できなくなったロシアは、日本との講話に舵を切ります。

日本は、各地の戦線で連勝を重ねていたとはいえ、国内は疲弊し、もう戦争を継続できない状態でした。ロシアが講和に応じたことで、日本は、窮地を脱しました。明石の諜報活動が、日本を救ったのです。

ひるがえって、現在の日本は、あまりにも諜報活動を軽視しているように感じます。現代の戦いにおいては、武力衝突はほとんど起こりません。その前の情報戦で勝負がつくのです。その意味で、情報収集能力の強化が何よりの安全保障と言えます。テロ集団から日本の平和を守るためにも、諜報機関の早期設置を強く望みます。

(写真の出典:Wikipedia)