晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。


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12月1日の浦江塾の後の雑談で、阪俗研会員の方から

「なぜ、略称を「大民研」にせずに「阪俗研」にしたのか」とのこと。

はたして「大阪」の略は「大」で、「民俗」の略は「民」なのでしょうか?

そこで改めて文献の世界での「大阪の民俗」を確かめてみることにしました。

前回のブログに上げました「坂俗」という略称です。


この週末、ボクは*『近世風俗志』(一)~(五)を「坂俗」をめぐる言葉をあさりました。

*『近世風俗志』:喜田川守貞著・宇佐見英機校訂『近世風俗志』(一)(岩波文庫1996年)

~(五)(岩波文庫2002年)

著者・喜田川守貞は、冒頭の「概略」(『近世風俗志』(一)9頁)に、

その半生を次のように記しております。

 ●余、文化七(1810)年庚午六月、浪華に生る。本族石原氏なり。
  天保十一(1840)年庚子 九月、東武に来る。時に歳三十一。

 前回、述べましたように守貞は大坂で生まれ育ち、長じて江戸に出た町人です。

 それだから、彼の大坂観は、当時の「三都」の比較文化の体を成すものです。

 そのような生い立ちの守貞にとりまして、殊更「坂俗」として挙げておりますのは、

 存外、目に着きません。

 巻之三(家宅)では、厨の「つぼ」を「坂俗」に挙げています。

 ●大坂の厨には必ず二瓶(ルビ:ふたかめ)を並べ置く。河井の水を別つ故なり。河水
   の瓶には蓋あり、井水の瓶には無蓋なり。瓶、坂俗その形と大小を択ばず、つぼと云ふ。
 (『近世風俗志』(一)100頁)


大坂では井戸水は金気を帯びて飲料水には用いられずに、

川の水と区別する習俗があったようで、

「瓶」のことを「かめ」とは云わずに「つぼ」と云ったというものです。

そういえば、ボクの実家でも、昔、元の通り庭の先の井戸がありましたが、

飲用は水道水を溜めた「つぼ」から取っていた記憶があります。

流し台が普及する以前は、棚元に水を溜め置いてある「つぼ」がありました。

(水瓶(みずがめ)とは云わなんだように思います)

民俗学というのは、身近なところから生活文化を見つめなおす学問です。



巻之二十六(春時)では、小正月の「とんど」を挙げております。

 ●また京坂ともに十五日に、門松・注連縄を取り除くなり。江戸も、昔は今日なり。 
 大 坂は、門松・注連縄の類を諸所川岸等に集め積みて、十六日の暁前にこれを焚きて
 左 義長の義を表す。これを焚くを坂
俗は、とんどと云ふなり。(『近世風俗志』(四)(177 頁)

 正月の橙など、子どもたちは、よく盗ったりしたものですが、

今でも氏神さんでは、1月15日には、トンドを行っています。

『近世風俗志』にいう「諸所川岸等」とは、いったいどこなのでしょう。

池田市の民俗調査の時、

村外れにの土手下に「ドンドバ」があったということを聞きました。

拙著『水都大阪の民俗誌 大阪叢書4』「9 池田チンチン坂から見た都会」207頁には、次のように記してお
ります。



 ●村はずれにドンドバがある。「ドンドバ」とは、潅漑のための舟池からの水が放水され た土手下であっ

て、水の轟音からの名という。このあたりの村はずれにヨーネンコー小  屋が小正月には建てられた。ヨー
ネンコーには「夜寝ん講」の字があてられるという。  小正月に子供たちが行うトンド行事である。年越しのサエノカミ(賽の神)祭りである。

年越しといった境界の時間に、村外れといった異界との境界の空間で、

集落の外からの邪悪なるモノを塞ぐ行事が行われていたのでしょう。


ボクが大阪府立四條畷高校に勤めていた頃、

トンドバが昔、JR四条畷駅の駅舎北の

JR西日本の変電所のある辺りであったとも聞きました。

現在も大東市と四條畷市の境界に当たる所です。


『近世風俗志』にいう「川岸」もまた、水路の巡らされた大坂市中にあっては、

異界との境界です。

もちろんここに挙げた「坂俗」の事例が大坂に限定して行われている民俗とはいえません。

守貞が「坂俗」として記したまでです。

また、阪俗研が追究しようとする「大阪の民俗」の一端でしかありません。

『近世風俗志』では「坂俗」の他、「大坂の俗」が多く記されております。

「大坂の俗」記事から近世大阪の民俗を知ることができます。

また京都に居住することのなかった守貞が「京坂の俗」と記すとき、

多分に「坂俗」を反映しているとみることもできましょう。

追々、「坂俗」と記されていない「坂俗」を紹介しま

しょう。

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