晴耕雨読 -田野 登-

大阪のマチを歩いてて、空を見上げる。モクモク沸き立つ雲。
そんなとき、空の片隅にみつけた高い空。透けた雲、そっと走る風。
ふとよぎる何かの予感。内なる小宇宙から外なる広い世界に向けて。


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今回も対象としますのは
以下の書物です。
 野本寛一著、2016年7月25日発行
 『季節の民俗誌』玉川大学出版部


前回、農村出身者であるボクの祖父が
「初物食い」だったと聞かされていると
書きました。

初物を食べれば何の効用があるのでしょう。

該書〈Ⅰ 雪国の春 二 キドい山菜を食べる〉に
次の記述があります。
●春、最初の山菜はコゴミである。
 茹でて醤油をつけて食べると、
 「春の生命力」を体のなかにもらう気がする
 (事例⑪=秋田県仙北市西木町上檜木内・

 (中略)・昭和9年生まれ)。
 キドさのある山菜は、
 最初コゴミ、次にアケビヅルの芽、フキノトウ。
 これら初ものを食べると長生きをするといわれる
 (事例⑫=新潟県南魚沼市一村尾・

  (中略)・昭和7年生まれ)。


「初ものを食べると長生きをする」とあります。
なぜ長生きするのでしょう。
文脈からしますと
キドい山菜を食べると
「春の生命力」を
体のなかにもらうからなのでしょうか?
キドい山菜には、きっと
そんなパワーがあるのでしょう。


そもそも「キドい」という言葉の意味が
ボクには分かりません。
*電子情報に「きどい」を探りました。
  *電子情報:
www.weblio.jp > Weblio 辞書
●【形】 (1)(色が)どぎつい 、毒々しい
    (2)(味が)えぐみがある。
     渋みというか

          口の中がじわじわする感じの味を表す。
     アクぬきされていない。


あの生野菜の食感にある
ボクの苦手な味です。
この「キドさ」は
最近、都市化した食生活に
自然志向として見直されている食感かも
知れません。

該書の〈Ⅰ 雪国の春 二 キドい山菜を食べる〉には
次の記述もあります。

●キドさの強い山菜は、
 第一にサイシナ(ヒメザゼンソウ)である。
 エグ味が強いので、

  茎を何度も茹でてから魚と煮る。(中略)
 当地には、
 「キドさの強い山菜を食べると
 冬じゅうに体内にたまった毒が抜ける」という
 言い伝えがある
 (事例①=山形県西置賜郡小国町荒沢・

  (中略)・昭和11年生まれ)。


野本先生は
この「キドさ」の効用を
民俗的世界観を経て
具体的に解析しています。
●「山菜のキドイ(キドさ)で冬の穢れを除く」
 (事例①=冬の毒、
 ②=冬のあいだの汚れ、
 ③=冬の穢れ、
 ⑤=冬のあいだにたまった悪いもの)といった
 類似の伝承を軽く見ることはできない。
 山菜のもつキドさ、
 山菜の力は、
 味覚的にも悪しきものを追放する力を感じさせ、
 実質的には便秘を解消する力をもつのである。
 事例⑥⑧では、

  「便の色が青くなる」と具体的である。


最後は尾籠な話のようですけれども、
山菜のキドさには
悪しきものを追放する力があるというのです。
「悪しきもの」とは
毒、汚れ、穢れと感じられる心意です。
「体内の毒素を下ろす」というのでしょう。

ここまで読んでみますと
『季節の民俗誌』の世界は
現代生活にあって
忘れかけていながら
結構、マスコミなどの媒体を通じて
喧伝されている

 一連の自然食、健康食品ブーム
根底が繋がっているように
ボクは感じますが
いかがなものでしょうか?


究会代表 田野 登

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今回も対象としますのは
以下の書物です。
野本寛一著、2016年7月25日発行
『季節の民俗誌』玉川大学出版部


「「堅雪渡り」という言葉は
戦後、大阪市内で育ったボクには
耳の底にもありません」と記しました。

*電子情報の「堅雪」に当たりました。
   *電子情報・・・:kotobank.jp/word/堅雪-463777
デジタル大辞泉の解説として次の記事を挙げています。
かた‐ゆき【堅雪】
一度解けかかった雪が、
夜間の冷えこみで凍りついて堅くなったもの。《季 春》

季題としては春です。

「「堅雪渡り」という言葉は
・・・耳の底にもありません」とは
このような行動に無頓着であっただけで
毎年のことではありませんが、
凍てついた雪の道を歩いたことは
たしかにあります。
気づいていないボクの感性が問われます。


該書〈Ⅰ 雪国の春 一 堅雪の気配―春微動〉に
次の記述があります。
●堅雪渡りをする。
 堅雪になるとメジロが鳴く。
 子どもたちは橇遊びをし、
 大人たちは杉の枯れ枝を燃料として刈りおろす。
 また厩肥や堆肥を、田に必要分を仕分けて橇で運ぶ。
 グループで菟ボイをする者もいた。
 子どもたちは登校途中、杉の枝を折り、
 綿帽子を敷いて、滑って遊んだ
 (事例⑩=山形県西*置賜(おきたま)郡白鷹町黒鴨
 ・佐藤軍一さん・昭和7年生まれ)。


堅雪になると
メジロが鳴くだけではありません。
雪国の子どもたち、大人たちが
それまで閉ざされた冬から
春に向けての行動が
一斉にスイッチオンされる
それを話者は語っているのです。


子どもたちの遊び、
大人たちの野良仕事の準備、狩猟に出かけるなど
雪国の人たちの行動は
気象の変化に連動しています。


前回、民俗学は自省の学と記しました。
お盆に先祖祭りをしていて
昭和28(1953)年2月9日に
68歳で他界した祖父のことを
思い出しました。

昭和25年1月生まれのボクですので
祖父のナマの言葉を
憶えて居るわけではありません。
祖父は初物好きだった。
特に筍が好きだったと。

(季題「筍」は夏ですが・・・。)

戌年生まれですので
明治19(1886)年丙戌に
丹波(兵庫県)の山間の村に生まれた祖父です。
小学校も碌すっぽ卒業しないうちに
出郷し大阪に出てきたと語られています。
初物を愛でる味覚は
もしかしたら
幼心に季節の移ろいを感じた
祖父の記憶に根ざすもののように思えてきます。


『季節の民俗誌』を読むことは
離農した都市生活者の先祖の

記憶を気長にたどるような気がします。
暮らしの古典を知ることは
今の自分に気づかせられることになります。


究会代表 田野 登

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8月の初旬でしたか、
一冊の分厚い書籍が送られてきました。
昨年、文化功労者の顕彰を受けられた
民俗学者の*
野本寛一先生からの書籍でした。

   *野本寛一先生:ja.wikipedia.org/wiki/野本寛一


野本先生からは20年来、
励ましのおことばをいただいております。

御恵与いただきましたのは以下の書籍です。

野本寛一著、2016年7月25日発行
『季節の民俗誌』
玉川大学出版部 A5版 465頁


今年のお盆、先祖祭りに
実家に籠もった折、
持ち帰って拝読しました。
その時の感動は、独り占めできないと思い
《『季節の民俗誌』に知る暮らしの古典》と
題しシリーズとして
ブログアップすることにしました。


ボクの読書は、いつも
跋文の次にあとがきを読むことから始めます。
あとがきに当たる〈終章 季節の風を受けて〉に
次の記述があります。

●本書で紹介してきた
 堅雪渡りのころの少年・少女たちの遊びは
 じつに多彩で、彼ら、彼女らの五感は全開し、
 心も体も躍動していた。


「堅雪渡り」という言葉は
戦後、大阪市内で育ったボクには
耳の底にもありません。
雪など降っても根雪になることなど
まずあり得ません。


引用文の続きを載せます。
●現今、味覚異常の子どもたちが
 増加しつつあるという。
 人生の基礎が培われる時代にこそ、
 人は自然のなか、四季と季節のめぐりのなかに、
 おのれを深くさらされなければならないのだろう。
 都市や都市化した暮らしのなかでも、
 こどもたちをできるだけ季節の子にしてやりたい。


いきなり、この箇所を載せたのでは
誤解を招きかねません。
じじつ、ボクも読んでいて
しばらくは『季節の民俗誌』の世界に
入り込めずに想像力をめぐらすのが
しんどいでした。


読み進みますと次の記述があります。
●社会環境や生活様式の著しい変容のなかで、
 かたちを変えようとも
 継承してゆかなければならないものがある。
 いまはその方途を真剣にさぐるべきときである。


ずいぶん意気軒昂と思われる文章を挙げました。
「かたちを変えようとも
 継承してゆかなければならないもの」とは
いったい何でしょう。
ボクは、それを「暮らしの古典」と
名付けることにしました。


次回は、
「堅雪渡りのころの少年・少女たちの遊び」を
取り上げます。
雪の降り積もらない街に育った
ボクにとって興味津々です。


民俗学は自省の学です。
未知の世界を経て
ちゃんと自分の世界に戻って来ます。
次回をお楽しみに。


究会代表 田野 登

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究会では
今秋、3回連続講座
「シニアのための民俗学入門」を始めます。


今や、団塊の世代のシニア・アクティヴが
生涯学習に熱心な時代です。
今から何を始めようか?と
迷われることはありません。
今までの人生経験から得た知見を
「再発見」することから始めるのはいかがですか?
昭和の情景が
だんだんと遠のいてきました。


民俗学は
自文化を内省する学問です。
お正月やお盆に
科学文明が発達し、
都市生活が進展した今日でも
神さんやホトケさんをお祭りします。
そのいっぽうで
冠婚葬祭が変化しています。
昔の仕来りを忘れかけています。
大阪では地蔵盆には祠の前で
踊ったりもしたものです。
今ではどうでしょう。


シニア・アクティヴのみなさんに
昭和25年早生まれのボクから提案します。
今こそ、「自文化」を再認識しましょうと。


2016年秋のセミナー要項案
「シニアのための民俗学入門」
第1講:9月17日 pm7:00~9:00
  田野 登「民俗学のすすめ」
第2講:10月15日 pm7:00~9:00
  濱田時実氏 (仮題)「神社祭祀を再考する」
第3講:11月19日 pm7:00~9:00
 岸田史生氏 (仮題)「画集『大阪城八景』が拡げる民俗的知見」
資料代実費等:1回500円
会場:福島区民センター
   
http://loco.yahoo.co.jp/place/g-z26RRBgFl2I/map/?utm_source=dd_spot


興味をお持ちの方は
ブログトップの
 
tano@folklore-osaka.org までご連絡下さい。

昔に関心のある若い研究者も歓迎します。


究会代表 田野 登

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昨日、住職からハガキが届きました。
住職もお盆の行事でおいそがしかったのでしょう。
9月3日(土)、あと10日後の浦江塾の案内です。

講師がいなければボクがする。
毎度のことです。
写真図  浦江塾の案内のハガキ



文面は以下のとおりです。
郷土誌を見直す『浦江塾』のご案内
 大阪市内は上町台地が南北に走り東西は水辺でした。
すっかり都市化した現在にあっても地名には島、洲や
水辺が偲ばれる地形が残っています。伝承古代の島の
田蓑島は禊の島とも言われ、浦江八坂神社付近の説も
あります。時代により利用目的が変わる島々を考えます。
    
 日時 9月3日(土曜日)午後7時より9時迄
 場所 妙壽寺(福島区鷺洲2-15-10)駐車可
 テーマ 「島洲の街・大阪―福島区・北区版」
       大阪民俗学研究会代表 
               文学博士 田野 登先生
終了後、情報交換等の雑談を行います。ご参加下さい。


以下、田野による書き込み。
一昨日、大阪城南女子短期大学公開講座
「大阪の夕陽信仰」では
上町台地の高台の話もしました。

大阪という「坂」の付く地名ですが
広い高台は上町台地の一筋に伸びる
洪積層を基盤とする地域だけです。
大阪は埋立都市なのです。
基盤は軟弱な沖積層です。
防災の点からみれば
かなり、ゆるゆるで危ない都市です。


今、手許に
*国土地理院「明治期の低湿地データ」があります。
 *国土地理院「・・・データ」:

 http://www.gsi.go.jp/bousaichiri/lc_meiji.html

このデータには次の記述があります。
●ここで言う「低湿地」は、
 河川や湿地、水田・葦の群生地など
 「土地の液状化」との
 関連が深いと考えられる区域です。


このデータから大阪市内を抽出します。
低湿地の表記は黄色なのですが、
上町台地の高台および

船場・島ノ内を含む
旧大坂三郷の外側は、
ほぼ真黄々です。
 

福島区近辺で黄色でないのは

西区の木津川以東、
西区から此花区にかけての
元の「九条島」周辺など
限られています。

福島区域では
旧中津川左岸および野田新家

海老江の八坂神社、南桂寺周辺
玉川の野田戎、極楽寺・円満寺周辺
福島では下天神社から旧蜆川・堂島川沿いから
JR福島駅あたりが北限で
鷺洲ではJR東海道線周辺の妙壽寺と
北区の旧大仁から
北浦江にかけての一角ぐらいです。


この「非低湿地」が、いかほど島・洲を
反映するものかは
当日、お話しする中で
少しは明らかになるでしょう。


コンテンツは次のとおりです。
0 解題「島洲の街・大阪」の対象
1 地図に見える「シマ」
2 大阪市内の地名「島・洲」
3 伝承古代の「島」
4 近世名所絵の「島」
5 「島」の近現代
6 埋立「洲」に見える現代
7  島洲への「観光」のまなざし


いつもどおり
参加手続き無用、参加費無料です。
30人ほどの資料は用意します。
初参加の方、歓迎します。

究会代表 田野 登


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