みなさま

 

試験1週間前です。もう、「新しい知識」を入れても、それは「本番で使いこなせない知識」になる可能性が高いです。むしろそれを越えて、「有害な知識」になる可能性すらあります。多くの受験生の方々に、「直前1週間は、何をすればよいのでしょうか?」という質問をいただきますが、「今まで書いた答案の見直しと、基礎(論文)講義レベルの知識の見直しをしましょう」と回答しています。「重判を今からやるべきですか」という質問もよくいただきますが、「重判の有用性は否定しませんが、今から(1週間前から)やる必要はありません。重判をおさえていなければ、合格していなかったという受験生は聞いたことがありません」と回答しています。

私が関わらせていただいている極めて優秀な受験生の方は、先日、「そろそろ拡張型の勉強から、収束型の勉強に切り替えようと思っている」という趣旨のことを述べておられました。論文式試験においては、本当にこのことが妥当すると思います。

 

さて、本題です。

これまでも、当ブログや、ツイッター等でも一番多く申し上げていること。それは、「問題文を正確に読む」ということです。「あまりにも抽象的すぎるし、当たり前のことをいうよね~」と思われる方もいらっしゃると思います。「もっとテクニック的なことを示してくれ~」と思われる方もいらっしゃると思います。しかし、それをふまえてもなお、まず最初に言いたいこと、それは、「問題文を正確に読む」。このことです。計算したらば、私は今期の司法試験受験生の答案をやはり5000通以上読んでいました。そんな中で、個別指導や、添削をしている人々に、私は、「なぜこのような記述をしたのか」という理由を問うことがあります。そこで、一番多く出てくる理由、それは、「問題文を読み落とした」「問題文を読み違えた」「設問部分をちゃんと読んでいなかった」…これが、「現場」なのです。

 

なぜ、上記のようなミスが起こるのか、お話をしていてその原因を分析してみました。

①そもそも、長文を読む集中力・モチベーションが十分にない

②長文読解力が十分でない

③基本的知識が不足しているため、問題文を読むことができない

④知識が入りすぎてしまっているため、予断を入れて問題文を読んでしまう

 

①について。やはり、こういう方がいらっしゃいます。集中して読むことができない。これは、試験以前に、普段の環境に依存しますよね。個別指導においては、私は受講生に、本を読むのが昔から好きかとか、そういうところまで聞くことがあります。そしてそういう人には特に、問題文を小説のごとく読んでみてくださいと言っています。少なくとも直近4年分。これは直前期にも有効だと思います。モチベーションが十分にないというのは、「もうめんどくさいから、こういうことにしておこう」とか、「読んでないけど、きっとこういう事実だろう」などとして、物理的に問題文を読んでいない場合を指します。こういう人も、いるんです。これが現場。こういう方には、「気合!滾り!」これしか言いません笑

 

②について。最初の方に書いてあったことを、最後の方で忘れてしまうとか、登場人物が多くなってくると、わけがわからなくなる…という方々。こういう方々の原因は、①と同じような原因のほか、そもそも、問題文を1回しか読んでいなかったり、司法試験型の長文問題の演習が圧倒的に不足しているということが原因として挙げられます。

まず、問題文は、少なくとも3回読む。特殊な能力が無き限り、これは鉄則だと思います。3回読んでいたら、時間不足になって、途中答案の温床となる。という方もかなりいらっしゃいますが、逆なのです。途中答案を解消するために、3回読むのです。

直前期としては、やはり直近4年分の過去問の構成、ないし、小説のごとく読む作業、これをお勧めしています。

 

③について。例えば、民法平成28年度。Cの年齢が18歳という事実、法律行為をCにかわり行ったのは親権者であるという事実、その法律行為の理由、等々…かなり、本試験委員は優しい誘導をしてくれていました。しかし、再現答案を見ていると、ここから、法定代理権としての824条、利益行為(826条)、親権者の法定代理権の濫用を「読み取れなかった」方が、本当に本当に多い。これが「現場」です。

この原因は、インプットの量的不足と、質的不足にあります。出題者側として考えてみるとわかりますが、法定代理権としての824条、利益行為(826条)、親権者の法定代理権の濫用を聞きたかったら、上記の事実を問題文に出さざるを得ません。まさか、問題文に「この行為は、利益相反行為に当たる恐れがあり、そうでないとしても、法定代理権の濫用となるおそれがあった」などとは書けませんよね。どの問題集にも、ここを問うときには、上記事実が載っているはずです。つまり、その演習をするときに、「その論点の論証と、帰結」に加えて、「典型的な事例」までおさえておけば、すんなりと、平成28年の上記部分については争点を抽出できたのです。ただやはり多くの受験生がまだここまで意識せずに、論点とその帰結だけいえれば良しとしてしまっているように思います。何より、私がそうでした。。。インプットの仕方を意識しましょう。

なお、上記作業は、今からやっても遅くありません。この一週間における資料の見直しの中に取り入れてみてください。

 

④について。これも勉強期間が長い方に本当に良く起こりがちです。何度も書いた問題等の「記憶」が、問題文を読む邪魔をしてしまう。あるいは、事実をねつ造してしまう。。。私も何度もやったことがあります。「過去に似た問題を解いたことあるから、それと一緒だと思った」という言葉を、私は数えきれないほど聞きました。これもある意味思考が逆で、過去に似た問題を解いたことがあるからこそ、見たことない問題よりも慎重に問題文を読まなければなりません。

 

①~④のどれかに当たるという心当たりがある方は、やはり、本試験の全科目の答案構成用紙に、〜本当に、読んだ?〜と記入しちゃいましょう!

本当に、この意識付けを本試験の期間持ち続けるだけで、大きく点数は変わると確信しています。これも前にも書いたような気がしますが、「長文読解能力」には実質的な配点が振られており、かつ、その点数はかなり高いのです。当たり前のことを書いていますが、これを読まれた方は、それだけで合格に近づいていると思います。

 長文失礼いたしました。誤字脱字駄文等ご容赦くださいませ。