「日本は特別な尊敬を抱く国」マリス・ヤンソンスがバイエルン放送交響楽団と来日公演
ドイツのミュンヘンに本拠を置くバイエルン放送交響楽団の首席指揮者を務めるマリス・ヤンソンスが、同オーケストラと11月7日から16日まで、東京、川崎、福岡、兵庫・西宮、岡山・倉敷の5都市で8公演の日本ツアーを展開する。
1946年、リトアニアのリガに生まれたヤンソンスは、ロシアを代表する名門オーケストラ、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー交響楽団(旧レニングラード・フィルハーモニー交響楽団)の指揮者を務めた親日家のアルビド・ヤンソンスを父に持ち、日本に対する特別な思いを抱く。
「父がレニングラード・フィルの初来日に帯同して日本を訪れたのが1958年。その時から私は日本に対する特別な思いを抱くようになりました。
クラシック音楽が生まれ、継承されているヨーロッパからはるかに離れた場所にあって、日本の聴衆はとても広い知識を持ち、深い理解を示し、知的で熱狂的な感動を表してくれます。これは奇跡ともいえる素晴らしいことで、私は来日を重ねるごとに日本に対する尊敬の念を深くしています」
ヤンソンスが2002年から首席指揮者を務めるバイエルン放送響は、世界的なオーケストラが名を連ねるドイツにあって、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と双璧(そうへき)をなす名門。
1949年にミュンヘンに創設され、オイゲン・ヨッフム、ラファエル・クーベリック、コリン・デイビス、ロリン・マゼールが首席指揮者を務めて歴史的な名演の数々を残してきた。
ヤンソンスはバイエルン放送響と5年から同オーケストラと日本ツアーを2年ごとに展開する一方、4年からはアムステルダムのロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席指揮者も兼務。ヤンソンスがバイエルン放送響と交互に来日公演を行っているコンセルトヘボウ管は、1888年に創立された名門中の名門。
ヨーロッパを代表する英国の音楽専門誌「グラモフォン」がコンセルトヘボウ管を昨年の11月に世界のトップにランクづけしているが、ヤンソンスは2つの超一流オーケストラのシェフを務め、世界の楽壇で揺るぎない位置を占めている。
「私はいくつもの幸運を得ました。良い教育。良い教師。
良いオーケストラ。
その3つに出会い、私は育てられてきました。
良いオーケストラは高い技術ばかりでなく、音楽に対する動かしがたい情熱を持ち、新鮮な気持ちを決して失うことなく音楽に立ち向かいます。
バイエルン放送響は技術と情熱の分野において非常に高いレベルが維持された世界のトップオーケストラです。
本当の一流は物質的な側面ばかりでなく、精神的にもこれ以上ない最高のものがいつも求められ、それにこたえることができるのです」
日本公演の直前にはシェーンベルクの超大作「グレの歌」、ヨーロッパなどでは特別の機会にしか演奏しないベートーベン「第九」で楽団創立60周年の記念演奏会を行い、大成功を収めている。
「どちらも声楽を伴った大規模な作品。記念碑的な大作で先人たちが築いた素晴らしい伝統と足跡をたたえることができたと思います」とヤンソンスは矜持(きょうじ)を口にする。
「記念事業の一つとして、大変に興味深い一日も設けることができました」と言葉を続けてほほえむ。
「第九を2日連続で上演した次の日の10月31日、わたしたちは『とびらの開いた日』と題したイベントを開催しました。朝の10時くらいから夜の11時まで1日中、街に音楽があふれたのです」
リハーサルを公開し、フル編成のオーケストラコンサートを2回、小編成の室内オーケストラのコンサートや子どもたちを対象とした音楽体験のワークショップ、親しみやすい内容のレクチャーや愛好家向けの講座をいくつも同時開催したという。
「コンサートホールだけで1万人が集まり、定員オーバーで消防署の指導が入るほど。客席に入りきれないお客さんはステージに上がってもらいました。すべての催しは無料。音楽ですべての人たちが通じ合い、喜びを共有することができました」
深い思索を盛り込んだ難渋な作品も、長大で多様な感情、壮年を包含した交響曲や情趣に富んだ愛らしい小品も、すべて生き生きとした息づかいのうちに演奏する魔法のようなタクトの使い手は、音楽家がいかにあるべきかについて考えることを忘れない。
「とびらの開いた日」も、その思いを形にしたものだった。
「世界全体が経済的に困窮し、活動を著しく低下させています。物質的な豊かさばかりを追求した結果です。自動車は1台あれば用が足ります。豪華な車を2台も3台も持つ必要がありませんし、無用な物欲は何を手にいれても満足することがありません。
今こそ精神的な豊かさが求められています。
かつてのソ連は経済的に停滞していても、精神的な豊かさを守っていました。社会の体制がどうあれ、精神的な豊かさを忘れては人は幸せになりません。音楽、芸術の本当の価値や意味が問われる時が来ています」
ttp://sankei.jp.msn.com/entertainments/music/091106/msc0911060212001-n1.htm






