青春時代の出来事と、その時感じた憂鬱が染みとなって残る、今も消えない過去の物語。(フィクション)

現在第4部まで完結。

完結した部につきましては、昇順で話を読めるようにしてみました。

通しで読んでいただけるならTHEMEのPROLOGUE第1部第2部第3部第4部 からどうぞ。

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March 02, 2006

7章 待ちぼうけ

テーマ:第5部

11時過ぎに友人の下宿を出発し、ひとまず梅田に向かった。
京阪電車に乗り、まずは淀屋橋まで、そこから地下鉄で梅田まで。

このまま神戸に向かうとずいぶん早く着いてしまう。
それならば勝手の分かる梅田で時間をつぶせばいい。


梅田についた私は、マルビルにあるスターバックスに向かった。
ここの方がうるさい客がいなくて落ち着ける。


「お願いします」
「どうぞ」
「ショートアメリカーノ」
「ショートアメリカーノ」

昨夜飲んだコーヒーと同じ豆を飲みたかったのでアメリカーノを注文した。
ミルクが入らないのでブラックコーヒーと変わらないような味わいだが、使っているお豆が間違いなく好みの味になる。

随分と詳しくなったものだ。


そして違いも分かるようになった。


かなり眠い頭をコーヒーで起こしながら、博美さんに連絡してみる。


「こんちは(・ω・)ノ
今日、普通に大丈夫そうですか?」


デート当日だからすぐに連絡が来てもおかしくないはずなのに来ない。
焦っていたのか、5分も待たないうちに電話もかけてしまう。


「タダイマ、電話ニ出ルコトガデキマセン。P-トイウ…」


繋がらない。

嫌な予感が頭をよぎる。


おまけに半分徹夜明けプラスコーヒーの影響で、気持ちがぞわぞわする。


時計はまだ12時を過ぎたばかり。

気持ちばかり焦って神戸まで行ってしまおうかとも考えたが、待ち合わせの時間は14時だから、今から出ると、やはり早すぎる。


メールも電話も返事が無い。


また体調が悪くなってしまったのだろうか?
いや、前日の電話からすれば、体調に不具合はなさそうだ。


それに博美さんも今日会うのを楽しみにしているはず。

何があったのだろう。


何かに集中すれば時間がすぐに経つだろうと思い本を開いたが、内容が頭に入らない。

結局集中できないので、時間は止まってしまいそうなほどゆっくり流れている。

本当に時間はどの瞬間でも同じ長さなのか疑問に思う。


そろそろ店を出ようかと思っていた矢先、電話が震えた。
博美さんからのメールだった。


「連絡遅くなってごめん!
今、おばあちゃんを連れて病院にいます」

おばあちゃん?病院?
それって命が危ないとかそういうこと?


「了解。ってか、大丈夫なん?」
「うん、いつもは薬だけなんだけど
今日は診察もあって長引いてます。
付き添ってくれって言われてて。
ごめんね」

「いや、それはいいけど。
じゃあ、今日は無理?」

そこで返ってきた返事は次のようなものだった。


「うーん、何時になるか約束できんからね。
兄さんさえよければ少しだけでも会いたいんやけど」


これだけ待たせておいて、土壇場でキャンセル、略してドタキャンの様相。
ただ、合いたい気持ちは抑えられそうもなく次のように返信した。


「来れるなら、何時まででも待つから
来れるようになったら連絡ちょうだい」

「了解です(・ω・)ノ
急にバタバタしてごめんね」


13時になったところで店を後にし、金券ショップで大阪―三ノ宮の割引切符を購入。
まだ早かったが、私は神戸に向かった。


新快速に乗れば、19分で三ノ宮に着いてしまう。
だから連絡をもらってから移動しても十分間に合うはずなのだが、じっとしていられない。

本来なら待ち合わせの時間が14時だから、少し早いぐらいの時間ではあるが、博美さんが現れる気配がない。


三ノ宮に到着後、やはり時間をもて余してしまった。
まだ勝手がよく分からない土地なので、時間をつぶすにも何をしていいか分からない。


とりあえず、まだ昼食を摂っていないことを思い出し、近くに見えた牛丼屋に入る。
そういえば、クリスマスイヴの時もここで昼食だったっけ。


出された並盛りの牛丼を空腹の私はすぐに平らげた。
ただ、空腹だけが満たされ、時間もつぶせない。

時間の空白は満たされない。


そうなると、次の行き先はスターバックスになる。
本日2度目。

どれだけコーヒーが好きなのか。
いや、それ以上に落ち着かないから。


この頃はコーヒーを飲むと余計に落ちつかなくなることをまだ自覚していなかった。

今度は博美さんを意識しつつ、カプチーノを注文した。


別にカプチーノを飲みたかったわけではない。
やっぱり、どこかで繋がっているという気持ちが欲しかった。
この不安で仕方ない状況を、何とか落ち着けたかった。


ぞわぞわする気持ちを払いのけようと、少し熱いカプチーノをいただく。
熱いものが喉を通って胃に落ちてゆくのが分かった。


ふぅ、とため息をひとつ吐き、落ち着いた気分になったが、口に残った苦さが私をまた現実に引き戻す。

手に持っている携帯電話で、無意味に新着メール問い合わせをする。


圏外に入っていないから受信漏れは無いはずだが。



当初の予定の14:00はとうに過ぎている。
本来なら、今頃感動の再会を果たしているのか。


私はコーヒーを飲み、MDをかけて目を瞑り、時間が経つのをひたすら待った。

眠たいはずなのにコーヒーのせいか、目を瞑っても眠れない。
不安に押しつぶされそうになりながら、繰るかもまだ分からない人を待った。


そして14:30を過ぎた頃、電話がかかってきた。

「もっしも~し?」
「あぁっ、もしもし?」
「ごめんね~、急にバタバタしてしまって」
「うん、仕方ないやん。いいよいいよ」
「ホントにゴメンね」
「うん。で、どうするん、今日?」
「んと、今から準備して、って考えたら、夕方5時ぐらいになるんじゃけど。
遅くない?大丈夫?」
「うん、ここまで待ったら一緒やもん。いくらでも待つ!」
「ありがと」
「でも、なるべく早く来てほしいかな」
「ふふ、分かった。じゃあ着く時間とか分かったらまた連絡する」
「おっけぃ、じゃあ、また後で!」

これで、今まで待っていたのが無駄ではなくなった。
そもそも、遅刻しないで彼女が現れることも珍しいのだけれども。



あと2時間少々のために、コーヒーをおかわりした。

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