県立和光南養護学校視察 | 前和光市長 松本たけひろ オフィシャルウェブサイト

県立和光南養護学校視察

新座市選出の吉田県議のお誘いで、県立和光南養護学校の視察に行ってきました。

和光南養護学校は知的障害児を対象とした学校であり、和光、朝霞、志木、新座、三芳、戸田、富士見、ふじみ野の各自治体から214名の児童生徒が通い、102名の職員がその教育、支援に当たっています。教員数は87名ですから、3人弱に1人という割合です。校庭に青々とした芝生が広がる恵まれた環境の学校であり、隣には県営樹林公園もあります。

まず、通学風景を見ました。それから、小学校低学年から高校までの教室や実習を順に見学し、その後、校長先生から補足説明をしていただきました。

小学校低学年のクラスでは、ビジュアルと文字を併用しながらの生活習慣の確立、中学校ではリトミックなどの体育、音楽の授業、高校相当の高等部では実習の場面を見せていただきました。

通学はバスが多く、発達段階の高度な高等部の生徒には電車と徒歩、あるいは自転車通学というケースもかなりあるそうです。5台のバスで、最大1時間半近くかけて通っているそうです。

まず、学校の入り口に到着してからが大変です。なかなか入ってこない子供がいたりするため、通学自体なかなか完了しません(これはすべてにおいてそうで、準備ができて何かに取り掛かるまでの時間がかなりかかります。ただ、そのときに必要な手順をしっかりと子供たちに覚えてもらうようです)

さて、教室の様子です。小学校相当のクラスでは徹底的に生活のリズムと習慣を身につけます。最初は絵を使って。そして次第に文字を交えていきます。このあたり、発達段階からして比較的共通点があるためでしょうが、私が日ごろ接している保育園のさまざまなプログラムと比較的類似点が多いように感じました。ただし、児童生徒の体が大きいため、教員は体力的にものすごくハードです。校長先生も腰を痛めて昨日までコルセット生活だったとのことです。養護学校教員というものは体力的にきつい仕事なのです。実際、体育の授業を見ていると一部の先生は体当たり、格闘の連続のようでした。

また、障害も多種多様で、個人個人にいろいろな特徴や注意点があるため、それを毎年受け入れ、覚えるのもなかなか大変のようです。

隣の畑では担当の先生が農業体験の準備中。ヤーコン、ゴーヤーなど、なるべく新しい作物にも挑戦しているそうです。

スキンシップがすきで手を握ってくる友好的な小学生が何人もいましたが、一方で、近くに行くと怒るお子さんもいるそうです。中には特殊な能力を持つお子さんもいました。曜日にこだわるお子さんについて、校長先生によると「あの子はすごいんです。私の誕生日を言うとあっという間に曜日を教えてくれました」。レインマンを思い出しました。

また、私はめがねをしていないのですが、一緒にお邪魔した吉田県議はめがねに注意するようにと校長先生から忠告されていました。めがねにこだわるお子さんがいるようです。

見ていて感じたのは(ある面当たり前ですが)障害児教育のノウハウ、専門的なプログラムがしっかりと確立されているというところです。また、実習の充実ぶりは一般の学校と比較して最大のポイントなのでしょうね。木工、裁縫、陶芸、印刷(PC)などに分かれてじっくりと一年間、作業します。作品は秋のたけのこ祭で売り、その収入を翌年の材料費に当てているようです。作業を見ていると彼らの多くに共通する、緻密さに気づかされます。

「材料の計量などが緻密だからパン職人になる子もいます」。

「来年の材料費のため、そして、生徒たちも喜びますのでぜひ、たけのこ祭でお買い上げください」とのこと。

ちなみに、ここは普通の養護学校ですが、県内には職業訓練を重点的に教え、子供の働く力を伸ばすための養護学校もあります

ざっと一通り見てから、校長先生にいろいろ話を伺ったのですが、やはりお子さんを養護学校に入れるという決断は重いようで、すべての親御さんが何度も学校に足を運び納得してお子さんを入学させるようです。

また、養護学校の子供たちの特徴としては生活習慣が徹底されていることを挙げておられました。

「うちにははさみを相手に渡すとき、刃を向けて渡すお子さんはいません」ということで、さすが生活習慣の確立を通して自立して生きる力を身につけることを重視しているだけのことはあると感じました。

また、就職ですが、雇用率の規制が浸透したものの、外国人労働者が障害者雇用に適しているといわれる分野にもかなり入っており、不景気もあって、以前3割を超えていた就職率も3割弱になってしまったと言っておられました。

今、高等部3年生は2週間の職業体験中だそうで、先生方が見つけてこられた職場に先生と一緒に通っているそうです。一部はそのまま就職につながるようです。

「普通の学校と違って求人は来ません。先生方が苦労して見つけてこられます」とのこと。ただ、障害者雇用に理解を示す事業主さんは増えているのは間違いないようです。

まもなく県内で支援籍という制度が始まり、養護学校の子供たちが普通の小中学校にも行き、普通の子供たちと触れ合いながら成長する方法が実際に動き出します。

特に和光は地元です。早ければ次の学期から始まるということで、その成果を見守って行きたいものです。ちなみに、今も和光2中、朝霞8小、和光国際高との交流があります。ボランティアの導入は今後の課題とのこと。

また、和光市の施策にもいろいろ(特別支援コーディネーターのノウハウ提供など)ご協力いただいています。近くにあるメリットを生かし、普通の子供たちもいろいろと学んで理解できればノーマライゼイション社会に一歩近づくと思います。世間の人々の理解が向上すれば、確実に障害者には住みやすい世の中になります。

「この子供たちがなんとか普通の職場に就職して、少なくても給料をもらい、職場の人たちと仲良くなってくれるといいと思っています。みんな、最初の給料であれを買おうとか、お父さんお母さんを旅行に連れて行きたいとか夢を持ってがんばっています。養護学校ではしっかりとした生活習慣や職業訓練を行っています」という校長先生の言葉が印象的でした。

(本文中、一般的に役所で推奨されている障がい者という表記ではなく、読みやすい障害者という表記を使っています。本来的には障碍者という表記があるわけで、常用漢字という制度に疑問を持たされる瞬間です。)