かぐや姫の罪は男女関係か? | 竹取物語の謎を「うら」読みで解く

竹取物語の謎を「うら」読みで解く

かぐや姫は、なぜ竹から生まれて月に帰るのか?
かぐや姫、竹取翁…、名前は何を表すのか?
蓬莱の玉の枝、火鼠の皮衣…、宝物に隠された意味とは?

⇒ 2019年2月追記: 「かぐや姫の罪は男女関係か?」の内容は更新しました。

   かぐや姫の罪は男女関係か? ~竹取物語の謎をうら読みで解く#281

 

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昇天の場面で初めて、かぐや姫が罪のために地上に送られたことが明かされます。

かぐや姫を迎えに、大空より人が雲に乗って下りてきました。
そのなかの王とおぼしき人が竹取翁にいいます。

「かぐや姫は罪をつくり給へりければ、かく賤しきをのれがもとに、しばしおはしつる也。
罪の限果てぬればかく迎ふるを、翁は泣き嘆く、あたはぬ事也。はや出したてまつれ」
 (かぐや姫は罪をおつくりになったので、このように賤しいお前のもとに、しばらくおいでになったのだ。
  罪が終わったので、こう迎えるのに、翁は泣き嘆く。適当ではないことだ。はやくお出し申し上げなさい。)


なんとも、気になるくだりです。
どうせかぐや姫を連れ帰るのは決まっているのだから、わざわざ「罪」を口に出さなくても良さそうなもの。
しかも、何の罪かは語られていません。


何の罪でしょうか?
本文中には語られませんが、 「うら」読み * をすれば、推測する手掛かりはあります。

昇天の場面には、嫦娥*(じょうが)  の話が「本話取」 * されていると考えられました。
わざわざ引かれる理由があるはずです。
それも月に「帰る」ことから
竹取物語の作者は読者に、昇天の場面で「カエル」の出てくる話 * のほうを想起させたいと思われます。


このガマガエルの話には、引っかかるところがあります。
嫦娥は月への出発前に、筮竹で占ってもらったといいます。しかも、占いの内容まで語られていました。
「吉だ。帰妹(という卦が出たから)」 
占術に詳しい方は、おや? と思われたでしょう。

帰妹という卦(※1)について、占いの古典である『易経』では次のように記されています。
帰妹は、征(ゆ)けば凶、利(よろ)しきところなし。

むむっ、吉どころか、凶?


ここで「帰」とは「嫁ぐ」の意味。男女関係を表す卦とされています。

 細かく見ていくと大凶ではなく吉の要素もあるようですが、この卦は、
 手順が不正であるとか、本妻ではなく妾なら良いとかいう解釈らしいです。
 一番上の爻(※1)など、「虚筐を承る(空の竹籠を受ける)」とされており、
 一説によれば、婚姻で納める幣帛がなく、婚をしないこと(婚約不履行)を意味するとか。
 『易経』には明言されていませんが、卦全体につき、こういう解釈もあるそうです。

 その卦徳は、先に少女(若い女)が情に任せて悦(よろこ)んで進みゆき、
 これに長男(年かさの男)が感じて動くことを示している。
 然るべき礼を備えず自ら悦んでいき、その婦徳は不貞であることをいう。



難しい占いの話には深入りしないとしても、ともかく男女関係で凶でした。
関係があって、その結果が良くないということでしょうか。幸せな結婚ではない何かがあったようです。

そして嫦娥は、夫のもらってきた不死の薬を盗んで出奔してしまいました。
夫を裏切ったといえます。

また、かぐや姫に対応していると思われるアマテラス* は、独身ですが子を持っています。

このように並べていくと、やはり、
男女関係の罪を示唆しているといえるのではないでしょうか。

かぐや姫が、この世では厳しく身を守ったのも、その裏返しなのかもしれませんし(※2)。


ただし、少々お待ち下さい。
それは「罪」に仕立て上げられたものだった可能性もあるのです。

アマテラスも、神さまなのですから、結婚しなくても誓約で子を産むことができておかしくありません。

そして、昇天に続いて富士山が出てくることが、でっちあげをほのめかしているように思われます。
なぜならば……。


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かぐや姫の罪。富士山
から「うら」読みされることとは?


※1:卦(け)とは、易で、自然現象や人間社会の関係や変化の全般を象徴させる符号。
   陽を ─ 、陰を -- で表した記号が爻(こう)。
   爻を3つ重ねれば八卦になり(2の3乗)、八卦を2つ重ねたものが六十四卦(2の6乗)。
   卦には、その表す意味に対応するという名が付けられており、
   「帰妹」は六十四卦の一つで、下から 陽陽陰・陽陰陰 となる組み合わせ。


※2: かぐや姫が求婚を断ることを、月での罪に対する罰と考える説があります。
   下記リンクからどうぞ。
  ・キュレーテッド・メディア 「竹取物語」がざっとわかる関連サイトまとめ12選
   http://www.curated-media.com/c386.html

   かぐや姫が月の都で犯した罪とは?→Yahoo!知恵袋
    岡崎祥子「『竹取物語』研究―かぐや姫の罪と罰をめぐって」


参考文献:片桐洋一、他(校注・訳)『竹取物語 伊勢物語 大和物語 平中物語 日本古典文学全集8』小学館、1972年
       野口元大(校訂)『竹取物語 新潮日本古典集成 第26回』新潮社、1979年
       今井宇三郎『易経 中 新釈漢文大系24』明治書院1993年
       戸川芳郎(監修)佐藤進・濱口富士雄(編者)『全訳 漢辞海 第三版』三省堂、2011年


紫字*:リンクあり
                   
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