自己破産手続き
「ぼくは痴漢じゃない」(新潮社)の共著者でもある、升味弁護士の所へ相談に行った。
「もうとっくに破産状態です。
この住宅にまつわる借り先に、破産申請するから債務額を明らかにする旨を連絡して。
その時に大体2ヶ月先の日付で期限を切ること。破産申請はこれでOK。
問題は免責の申請なんだけど、不動産みたいな目立ったもの持ってると、
それらを処分してから、具体的にこれだけ赤でしたで済むんだけど、そうすると、
そこには居られないし、今売れないからねぇ。
住み続けて手続きするってのも可能なんですが、ちょっと面倒くさいのよ。
相場はこれ位、だから売ってもこれだけ赤になりますという資料を用意しなくちゃいけないのと、
家賃の支払い状況を示す2年分の通帳の写し、
あと、大雑把でいいんで2ヶ月分の家計簿を付けた陳述書を書いて、それを提出すると、だいたい1ヶ月位先のタイミングで立川支部から呼び出しがあって、同じような境遇の人がだぁっと並んでいる所を1人ずつ係官が回って、これで間違いありませんね?他に隠してる物は無いですね?って聴くから、はいそこに記載したとおりですって答えるという儀式があって、それでおしまい。
借金の無いきれいな体になりました、これから新たな人生を歩みますってことになるんです」
こうして、書くとやっぱり結構重たい話だなあと思うのだが、その時の雰囲気はといえば、「来週のホームパーティの打ち合わせ」をやっているような和やかさ・・・かえって家族の身を按じてため息を漏らす升味さんを私が「大変そうですね。元気出してください」と慰めるという、コントのような場面になってしまう。
「私の一番の懸念は、家族は出て行った。破産だ。家も手放すって、世間的にはどうしようもない状況なのに、ちっとも不安が無い・・・そんな感覚で大丈夫なのか、本当にこれでいいのか?ということなんです」
と言うと、
「それは、鈴木さんがキリスト者として、この世の価値を離れた平安という、大変いい状態ということじゃないですか」
もう、お昼休みにかかり、窓から見える神谷町の風景にも、弛んだ空気が感じられる中で、
聖書知識も少しある升味さんが答えたその言葉には、少しの驚きと、
見知らぬ土地で道を尋ね、方向に間違いがなかった時に感じる安堵があった。
わたしたちは羊の群れ
道を誤り、それぞれの方角に向かって行った。
そのわたしたちの罪をすべて
主は彼に負わせられた。
イザヤ 53:6