大阪で一番古いお好み焼き屋での会話・故郷いまだに忘れがたく・2. | 井上高志のブログ

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 私の故郷、大阪・天神橋筋六丁目あたりの路地裏に大阪で一番古いと言われていたお好み焼き屋があった。その店は長屋の一角にあって十人も入ればいっぱいになる小さいお店。店の名前は「春美」。戦後すぐに店をやり始めたおばあさんの名前が「春美」。明治生まれの女性の名前にしてはモダンな名前だったと思う。私は子供のころ、そこのお好み焼きを二日に一度の割合で食べていた。というのも母親が仕事で忙しく、晩ごはんの支度ができない時、そこのお好み焼きを晩ごはんの代わりにしていたからだ。そのお好み焼きは値段がとても安く、大きさも普通のお好み焼きの二倍強の大きさであった。育ちざかりの姉や弟や私はそのお好み焼きで大きくなったようなものだ.                               

 そこのお好み焼きは今でいう広島風の焼き方で、独特の味がしてとてもうまかった。だから飽きないで食べ続けられたのだと思う。今でもお好み焼きを食べるたびに「春美」のお好み焼きを思い出す。そして高校生の頃にその店で聞いたその店の二代目(その当時もう七十代)の娘さんと、その店の常連だったおばちゃんの会話をいまでも思い出す。・・・    「前から言おう思っててんけど、あんたとこの鉄板汚いなあ。一回洗ったらどないやのん」  「ああ、あきまへんねん。鉄板は洗えまへんねん」  「なんでやのん、。汚いがな。焦げがこびりついとるがな。」  「ウチとこの鉄板はおかあちゃんが店やり始めてから一回も洗ったことおまへんねん。」  「ええっ、ほんまかいな。なんぼ火で焼くいうたかて・・・」  「絶対洗えまへんねん。鉄板洗ったら終わりですねん。鉄板から味が出てまんねん。鉄板、洗ったらこのお好み焼きの味、出まへんねん。」  「ええっ」