2012-02-09 23:21:36

「トモが緩い」ことについてのお話。

テーマ:コラム
みなさんこんばんは、大西です。

先週は確定申告の書類提出などで色々と忙しく、
ブログ更新できませんでした。
先週競馬したシルクタイタンが今朝放牧に出ましたので、
入厩している担当馬が2頭になり、
通常の業務に戻りますので、
先週よりは少し時間ができそうです。

そのシルクタイタンですが、
先週、初の障害レースに出走しましたが、
結果は12着でした。
二つ目の障害あたりから、飛越が安定せず、
早々と後退して、回ってくるだけの競馬になってしまいました。
平沢騎手が言うには、
まだ馬が吹っ切れていないそうです。
わかりやすく言うと、
障害を跳ぶことに、タイタンが戸惑っていたようです。
吹っ切れて、自分からどんどん跳ぶ気になれば、
また違った競馬を見せてくれるでしょうが、
まずは障害レースに慣れることが必要ですね。
幸い、脚元、身体に問題はなく元気なので、
また障害練習して、上手くなって次走頑張りたいと思います。

今週はローズノーブルが出走します。
デビューから2着、2着と来ていますので、
今回こそは1着が欲しいですね。
放牧から帰ってきて、全く問題なく順調に調整してきました。
状態もとてもいいので、期待しています。
応援よろしくお願いします。


さて、今回は前回予告したように、
馬の四肢についての表現に関して、お話したいと思います。
みなさん耳にしたことがあると思うのですが、
「トモが緩い」という表現があります。
緩い、というのは身体の感じについてなのですが、
大抵は筋肉について言われます。
すなわち、トモが緩いというのは、
トモ(後肢)の筋肉に、力がつききっていない、という事です。
前にもお話しましたが、
馬が走る時、基本的には後肢が推進力を生み出します。
なので、後肢の筋肉に力がないと、
推進力が小さく、より速く走ることができません。
馬が速く走る上で、トモの筋肉が発達している事はとても重要であり、
いつまでもトモが緩いのは、
競走馬にとっては良い事ではありません。
もちろん筋肉ですから、鍛えれば力がつきますし、強くなります。
鍛えるのに必要なのは日々の調教であり、
逆に言うと、トモに限らず、速く走る為に必要な筋肉を鍛える為に、
競走馬は日々調教をこなしているわけです。
(もっとも、調教はそれ以外に、心肺機能を鍛えたり、
 その他色々な効果を期待しているので、
 筋肉を鍛えるためだけにやっているわけではありませんが。)
ただ、筋肉の発達には馬それぞれ個体差があるので、
同じ時期の同じ年齢の馬でも、
筋肉がしっかりしているのもいれば、
まだまだ緩い馬もいるわけです。
だから、2歳だから緩い、4歳だから緩くない、とか、
一概には言えませんので、
「この馬はまだトモが緩いので、
 もう少し乗り込んでからデビューさせる」とか、
「本格化するのはもう少し先になりそう」とか、
そういったコメントになるわけです。
ちなみに、「トモが緩い」の反対語は、
「トモがパンとする」です。
いや、厳密にこれが反対語、とは決まっていないのですが、
だいたいみんなこう言います。
「春先はまだまだトモが緩かったのですが、
 夏を越してトモがパンとしてきました。」
といった感じのコメントを聞いたことがあるのではないでしょうか?
「緩い」に対しては「パンとしてきた」、
という言葉が一番しっくりきます。


では、トモが緩い馬も、日々調教を積んでいれば、
みんなパンとしてくるのでしょうか?
基本的にはパンとしてくると思います。
個体差があるので、すぐにパンとする馬もいれば、
いつまでたってもなかなかパンとしてこない馬もいます。
「この馬、トモがパンとすれば走るよ」
なんていわれてる馬が、いつまでたってもパンとせずに、
結局未勝利を勝てずに時間切れ、なんて事もあります。
でも、「緩い」とか「パンとする」というのは、
あくまで乗った人の感覚的な話なので、
そういった馬は、実は「緩い」のではなく、
単にトモに力のない、トモの力の弱い馬であって、
だからこそいつまでも力がないのであって、
パンとしない、のではないという場合もあるかもしれません。
判断の難しいところではありますが、
鍛えない事には始まりませんので、
鍛えるだけ鍛えてみての結果としてどうか、
ということになります。

さて、「トモが緩い」とはどこでわかるのでしょう?
騎乗者であれば、乗ればわかります。
キャンターまでいかなくても、常歩、速歩で十分わかります。
トモがパンとしている馬と、トモが緩い馬では、
トモの動き、身体の使い方が違います。
トモがパンとしている馬は、
トモの力だけで、身体全体を前に進める事ができるので、
トモの踏み込みが深く、
それでいて身体に無駄な動きがありません。
無駄な動きがないと、背中がとても安定していて、
乗り心地がとてもよく感じます。
トモが緩い馬は、
トモの力だけでは身体全体を前に進めることができないので、
トモを左右に振って歩きます。
脚のない魚類や脚の短い爬虫類は、
前に進む為に、身体を左右にくねらせて前に進みますね。
あれと同じ原理です。
例えば、右トモを深く踏み込むためには、
左のトモ脚で踏ん張って、身体全体を前に進めながら、
右トモをより前に(深く)踏み込ませるわけですが、
トモが緩いと、この左トモの踏ん張りが弱いわけで、
右トモがより前に踏み込む前に、
左トモが力尽きてしまい、右トモが地面についてしまいます。
結果的に深く踏み込めないわけです。
ではこういった馬は、速く進もうとするとどうするか。
トモが緩くて深く踏み込めないので、
身体をひねって、トモをより前に出そう(踏み込もう)とします。
例えば右トモをより前に出すには、
トモの振り幅にくわえて、
左トモよりも右トモが前にでるように、
トモ全体をひねるわけです。
背骨を左右に曲げながら歩く感じですね。
だから、トモが緩い馬は、
歩く姿を後ろから見ると、
トモを左右にひねって歩いているように見えます。
しかし、こういう馬は、
身体をひねってでも、トモが踏み込めているので、
トモが緩くても、そんなに悪くない、と僕は思います。
身体をひねっても踏み込めているということは、
トモの関節や、背骨が柔らかいと考えられるからです。
なので、トモが緩いからといっても、
身体をやわらかく使えている馬は、
一概に悲観的になる必要はないのです。

ではトモが緩くて、かつそれが良くない方向に出るのは、
どういった場合でしょうか?
一言で言うと、硬い馬です。
トモの関節や背骨が硬いと、脚の振り幅が小さくなる上に、
身体もあまりひねることができないので、
あまり踏み込む事ができません。
踏み込めないと、一完歩が小さくなる、跳びが小さくなるので、
速く走るのには良い事ではありません。
トモに力がない上に、関節の硬い馬は、
一歩ごとに後肢全体が上下しているように見えます。
というのも、関節が硬く、トモの振り幅が小さいと、
脚をあまり曲げないので、胴体の位置が高くなって、
どうしても重心の位置が高くなってしまいます。
さらに、トモの力がなく、身体全体を前に進めることができないので、
トモの力が前方ではなく、上方に逃げてしまうのです。
上方に逃げるというのを、イメージで言うと、
例えば冷蔵庫のようなものを、
地面に擦ったままでいいから押して進めるとします。
真ん中よりも下の方に力をかけると、
倒れずに押し進める事ができますが、
あまり上の方に力をかけると、
前に進まずに、斜め上方に力が逃げて、倒してしまいます。
重心が高く、踏み込めないで下から力をかけることができないと、
このような感じで、力が斜め上方に逃げてしまうので、
トモが上下しているように見えるのです。
こういった馬は厄介で、
トモの推進力を上手く前に伝える事ができないので、
力のロスも多く、速く走ることが難しくなります。
こういった馬は、常歩で乗っていても、
とても乗り心地が悪く、すぐにわかります。

話をまとめると、
トモが緩くても、背中や関節の柔らかい馬は、
そんなに悲観するほどの事はなく、
逆に鍛えてトモがパンとしてくれば、
十分走ることができるようになります。
ところが、トモが緩い上に背中や関節の硬い馬は、
ただでさえ推進力が弱いのに、
その弱い推進力でさえ、上手く前に伝える事ができないので、
あまり速く走る事ができるとは考えられません。
ですから、もしあなたがクラブの一口馬主として、
新たに出資する馬を決めるときなどは、
牧場などで馬の常歩を見る機会があるならば、
トモが緩いかどうかを気にするよりも、
緩くてもやわらかく歩く事ができている馬を選ぶ方がいいですね。
もしも、踏み込みが浅く、関節が硬く、
トモが上下しながら歩いているような馬であれば、
ちょっと敬遠した方がいいかもしれません。
あくまで僕の意見ですが。

前回の話の後に、読んでくれた方から質問がありました。
背中の良さというのは、調教などで身につけることができるか?
ということなんですが、
僕は背中や関節の柔らかさやバネというのは、
大半がその馬の素質だと思っています。
馬の良い背中を悪くするのは簡単ですが、
良い背中を作るというのは、とても難しいと考えています。
常歩や速歩、ハッキングなどで、
ハミを受けさせて、トモを入れて、背中を使わせて、
背中を鍛えたり、背中を使えるようにする、というのもありますが、
それでどんな馬でも良い背中にすることができるかというと、
僕はそんなに良くはできないと思います。
僕らにできることは、その馬の持って生まれた背中の良さを、
できる限り悪くしない事、だと考えています。
そういった意味でも、1歳馬の時点で出資を判断する際は、
背中や関節の柔らかさを第一に選ぶのが良いのではないか、
と僕は思います。
身体の柔らかい馬は、身体がしっかりしてくれば、
怪我や筋肉痛などのリスクも、
硬い馬に比べて低くなりますので、
そういった点でも良いと思います。

まぁこのような話は、僕が改めてするまでもなく、
今までに出資した事のある方ならば、
そのあたりも踏まえて選んでいることでしょう。
あとは常歩の見た目でどれくらい判断できるようになるか、ですが、
今度馬を見るときがあれば、今日の話を参考にしながら、、
トモの踏み込みや、左右のひねりなども注意して見てもらうと、
より馬による違いがわかるかもしれません。


今日も長々とお話してきましたが、
いつも言っている通り、
あくまで僕の「浅い」経験と、
「理屈っぽい」僕の頭の中で考えた話ですので、
これが正しい、絶対、というものではありません。
「大西はああ言ってた。」程度に受け止めてもらえれば幸いです。

次回ももう少し馬の身体について話しようかと考えています。
感想、質問等あればお気軽に書き込んでください。
今日も最後まで読んでいただいてありがとうございました。
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コメント

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1 ■無題

勉強になりました。
素質もあるんですね。
トモを見てもまだ、緩いかどうか分からないと思いますが、注目してみたいと思います。
僕は膝が曲がっているや内向してると言われてる仔にも出資しているんですが…
そんなに大きく影響するものなのでしょうか?
個人的には人間のX脚やO脚みたいなもので個性じゃないのかと思ってしまいますが…

2 ■お疲れさまです。

競走馬も人間のアスリートと同じで関節や筋肉が柔らかい方が疲労回復や故障しにくいんですね。

馬の首の太さや長さ。脚の繋ぎの部分の見方。大型馬・小型馬・理想的な馬体重。馬体による距離、ダート・芝の適性。などの見解を教えてほしいです。

いつも勉強になります。ありがとうございます。

3 ■すごく為になりました

トモが緩いとか、パンとしている、って
どう見れば分かるのか全然分かりませんでした。
だから、イメージで詳しく解説していただいて
本当に分かりやすかったです~。
素質と歩様との関係も頭にあった上で
パドックを見てみたいと思います~。

今週のローズノーブルちゃん、楽しみにしてます。
調子が良さそうで、本当に嬉しいです。
どうか、内田騎手が勝利に導いてくれますように。

4 ■参考にします

今まで出資馬を選ぶのに馬体を見てもよくわからない(笑)ので顔と入厩予定厩舎だけで選んでました。今年からはトモにも注目してみます。

5 ■質問です。

分かりやすい説明ありがとうございます。
とても勉強になります。
関係ないのですが僕は厩務員を目指してます。

現在の美浦、栗東の待機生の人数が分かれば教えていただきたいです。
また、待機の期間がどれくらいか教えてください。

6 ■無題

勉強になりました。

本当にありがとうございました。

7 ■Re:質問です。

>deepさん

すいませんが、わかりませんので、
競馬学校か調教師会に問い合わせてみてください。

8 ■Re:お疲れさまです。

>ヒデさん

基本的に全て全体のバランスです。
各部分で理想はこう、というよりも、
全体でどうか。
それによって走るフォームが変わり、
距離やコースの適正が変わります。
馬体重にしてもそうです。
でかければ良い物でもないし、
小さくても走る馬はいます。
それに馬体以外にも、
気性や心肺機能も能力ですから、
一概には言えず、とても難しいです。

これからの更新の中で、
少しずつわかっていただけたらと思います。

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